「贖罪の気持ちがあるのじゃない。
キチンと見送れなかったことが、おばあさんに申し訳ないという思いが、心の中に残っているんじゃないの。
だから、どんなことにも『逃げちゃだめ!』と思っているでしょ。
入居者さまからの要望には、すべて応えなくちゃという気持ちが強すぎるのよ」
「でも、あたし…。どう断ればいいのか、わからないんです」
上目遣いで、小さい声を出した。
「嫌われることを怖がっちゃだめ。
にあんちゃんを見なさい。なにか頼まれても、必ず、まず『自分でやれよ』と言ってるでしょ。
それでも頼まれたら『仕方ねえな』でしょ。
大丈夫、笹本さんなら」
とんとんと軽く手を叩きながら、何度も「大丈夫」を繰り返した。
「ほのか、終ったか? 一緒に帰ろうや」
ドアから顔だけを出して、次男が声をかけてきた。
「にあんちゃん、ご苦労さま。笹本さん、もういいわ。よく考えてね」
次男と連れ立ってのほのかだが、暗い表情を見せている。
「どうした、ほのか。叱られたのか。
ドンマイ、ドンマイだ。ドンマイって、わかるか?
田中のじいさんに教えてもらったけど、英語でDon,t mindって言うらしいんだ。
心配するな、気にするなってことらしいぞ。
気楽にいこうや、なあ」
「うん、そうだね。ドンマイか、良い言葉だね。
でさ、にあんちゃんは、入居者さまのこと、どう思っているの?
家族だって思ってるかなあ」
「俺か、俺は…。そうだな。近所のじいちゃんばあちゃんだ。
ほのかは、家族だって思ってるのか、すごいな。
けどさ、家族に『さま』を付けるのか。
変だぞ、それは。他人ぎょうぎじゃないか、それじや」
ほのかの顔をのぞき込みながら、心配げな顔を次男が見せた。
キチンと見送れなかったことが、おばあさんに申し訳ないという思いが、心の中に残っているんじゃないの。
だから、どんなことにも『逃げちゃだめ!』と思っているでしょ。
入居者さまからの要望には、すべて応えなくちゃという気持ちが強すぎるのよ」
「でも、あたし…。どう断ればいいのか、わからないんです」
上目遣いで、小さい声を出した。
「嫌われることを怖がっちゃだめ。
にあんちゃんを見なさい。なにか頼まれても、必ず、まず『自分でやれよ』と言ってるでしょ。
それでも頼まれたら『仕方ねえな』でしょ。
大丈夫、笹本さんなら」
とんとんと軽く手を叩きながら、何度も「大丈夫」を繰り返した。
「ほのか、終ったか? 一緒に帰ろうや」
ドアから顔だけを出して、次男が声をかけてきた。
「にあんちゃん、ご苦労さま。笹本さん、もういいわ。よく考えてね」
次男と連れ立ってのほのかだが、暗い表情を見せている。
「どうした、ほのか。叱られたのか。
ドンマイ、ドンマイだ。ドンマイって、わかるか?
田中のじいさんに教えてもらったけど、英語でDon,t mindって言うらしいんだ。
心配するな、気にするなってことらしいぞ。
気楽にいこうや、なあ」
「うん、そうだね。ドンマイか、良い言葉だね。
でさ、にあんちゃんは、入居者さまのこと、どう思っているの?
家族だって思ってるかなあ」
「俺か、俺は…。そうだな。近所のじいちゃんばあちゃんだ。
ほのかは、家族だって思ってるのか、すごいな。
けどさ、家族に『さま』を付けるのか。
変だぞ、それは。他人ぎょうぎじゃないか、それじや」
ほのかの顔をのぞき込みながら、心配げな顔を次男が見せた。
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