昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空・第二部~ (七十) 深入りしてみるかな

2013-11-06 20:53:16 | 小説
(三)

よどみなく話すぬい。旅館の女将と聞いて、得心する武蔵だ。
“女将自らの客引きとは…。すたれかけの旅館か? 
それとも俺に興味を持っての、お誘いか? 
何にしても、取りあえず案内させるか。
気に入らなきゃ、やめればいいだけのことだ”

「旅館の女将さんですか? そりゃ助かる。
初めての地なんで、宿はさっぱりです。
ま、食堂かどこかで紹介してもらおうと考えてはいたのですが。いやいや、助かります。
しかし何ですね、得体の知れぬこんな男に声をかけられるとは、女将も豪気ですね」
と、探りを入れてみた。

「何をおっしゃいますか、得体の知れぬ男だなどとは。
その身なりを拝見させていただければ、しっかりとした会社の方…。
ひょっとしまして、間違っておりましたらごめんなさい。
社長さまだとお見受けいたしますが?」

これには武蔵も驚いた、世辞での社長呼ばわりではない。
確信を持っての言葉のようだ。
“この女、案外かもしれんな。これは面白い。深入りしてみるかな、ひとつ”



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