(二)
「いや、ちょっとね。この雨にね……」
「それは、お困りですね。
お仕事ででも、いらっしゃいましたのですか?」
やけに馴れ馴れしく、くどくどと話し掛ける女だと怪訝に思いつつも、
醸し出される鉄火肌に少しばかり心を動かされる武蔵だ。
小夜子を残しての一人住まいがまだ三日だと言うのに、
女っ気がなくなった武蔵の心にざわめくものが出てきた。
「はい、ビジネスですわ。
こちらでの名産品をね、東京で売ってみようかと考えましてね。
当てがあるわけでもないのですが、取りあえず飛び出してきました」
一々用向きまで話す必要などないのだが、女に興味を覚えた武蔵。
わざわざに、東京でなどと付け加えた。
女に対する見栄が芽生えている。
更には、当てもなくなどと誘い水まで用意して。
“さあ、どうだい? 食いついて来いよ。
♪こっちのみーずは、あーまいよ♪ってな”
「左様ですの、それはそれは。
では、今夜のお宿、まだお決めになられてないのですね。
宜しかったら、ご案内いたしますが。
まずはひと休みなされて、それからごゆっくりとお探しになられましては如何です?
申しおくれました。わたくし、この水沢で高野屋旅館の女将で、ぬいと申します」
「いや、ちょっとね。この雨にね……」
「それは、お困りですね。
お仕事ででも、いらっしゃいましたのですか?」
やけに馴れ馴れしく、くどくどと話し掛ける女だと怪訝に思いつつも、
醸し出される鉄火肌に少しばかり心を動かされる武蔵だ。
小夜子を残しての一人住まいがまだ三日だと言うのに、
女っ気がなくなった武蔵の心にざわめくものが出てきた。
「はい、ビジネスですわ。
こちらでの名産品をね、東京で売ってみようかと考えましてね。
当てがあるわけでもないのですが、取りあえず飛び出してきました」
一々用向きまで話す必要などないのだが、女に興味を覚えた武蔵。
わざわざに、東京でなどと付け加えた。
女に対する見栄が芽生えている。
更には、当てもなくなどと誘い水まで用意して。
“さあ、どうだい? 食いついて来いよ。
♪こっちのみーずは、あーまいよ♪ってな”
「左様ですの、それはそれは。
では、今夜のお宿、まだお決めになられてないのですね。
宜しかったら、ご案内いたしますが。
まずはひと休みなされて、それからごゆっくりとお探しになられましては如何です?
申しおくれました。わたくし、この水沢で高野屋旅館の女将で、ぬいと申します」
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます