昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

原木 【Take it fast !】(十一)公園に行こう!

2024-08-01 08:00:16 | 物語り

「よし、この具体的方法については、それぞれ今夜ひと晩かんがえようゃ。じゃ、バイバイ!」
 行動派は、そう言うなり家の玄関に消えた。あいかわらずのマイペースだった。
なんの話だったか、わたしは忘れてしまった。
横道にそれたという意識はあるのだが……、思いだした。
風紀もんだいだった。先生と女子生徒がうんぬん、だった。

 ヒネクレ派は、もくもくと歩いた。真面目派もまた、だまって歩いた。しばらくの沈黙のあと、
「公園に行こう!」と、ヒネクレ派が言いだした。
真面目派も、なぜか別れがたい気分になっていたので、
「そうだネ」と、応じた。
「なあ、おい。人間というのは、おもしろいナ」
 とつぜんのヒネクレ派のことばに、真面目派は驚きつつも
「どうして?」と、聞き返した。

「うん、俺な…」と、遠くを見るような目つきでつづけた。
「ある女の子が好きになってな。その子のことを考えると、なんとなく嬉しくなる。
そのくせ、胸がキューッ!と、痛くなるんだ。
ああ、あいつじゃないんだ。悪いとは思うんだが、どうしようもない」
 口をはさもうとする真面目派を制すると、ヒネクレ派はつづけた。

「そいつ、俺みたいなひねくれた奴はキライなんだ。
どっちかというと、行動派タイプがいいんだナ。
といって、俺を遠ざけるわけでもない。話は良くしてる。
キライなはずなのに、だ」
「なんとなくわかるような気がする。
けっきょく、若いというか、幼いというか、そんな所だろうナ。
たぶん、ぼくらが母親に対していだいてる感情に近いんだろう。
母親には、女という意識を持たないよナ。
それがわかるのは、もっと大人になってからだろう。
まあ、ぼくの場合は…」

「そうか。おまえのお母さん、駆け落ちしたんだったナ。
ということは、無理矢理に女であることを、意識させられたんだ。
中二だったっけ?」
「うん、中二の冬さ。でも、その前から雰囲気はあったよ、なんとなく。
父親との間もギクシャクしてたみたいだし。
やっぱ、化粧も派手目になってたような気もするし。
だから女ですぬ っていうタイプはだめなんだ。
どっちかというと、男っぽい方がいいかな?」



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