「よし、この具体的方法については、それぞれ今夜ひと晩かんがえようゃ。じゃ、バイバイ!」
行動派は、そう言うなり家の玄関に消えた。あいかわらずのマイペースだった。
なんの話だったか、わたしは忘れてしまった。
横道にそれたという意識はあるのだが……、思いだした。
風紀もんだいだった。先生と女子生徒がうんぬん、だった。
ヒネクレ派は、もくもくと歩いた。真面目派もまた、だまって歩いた。しばらくの沈黙のあと、
「公園に行こう!」と、ヒネクレ派が言いだした。
真面目派も、なぜか別れがたい気分になっていたので、
「そうだネ」と、応じた。
「なあ、おい。人間というのは、おもしろいナ」
とつぜんのヒネクレ派のことばに、真面目派は驚きつつも
「どうして?」と、聞き返した。
「うん、俺な…」と、遠くを見るような目つきでつづけた。
「ある女の子が好きになってな。その子のことを考えると、なんとなく嬉しくなる。
そのくせ、胸がキューッ!と、痛くなるんだ。
ああ、あいつじゃないんだ。悪いとは思うんだが、どうしようもない」
口をはさもうとする真面目派を制すると、ヒネクレ派はつづけた。
「そいつ、俺みたいなひねくれた奴はキライなんだ。
どっちかというと、行動派タイプがいいんだナ。
といって、俺を遠ざけるわけでもない。話は良くしてる。
キライなはずなのに、だ」
「なんとなくわかるような気がする。
けっきょく、若いというか、幼いというか、そんな所だろうナ。
たぶん、ぼくらが母親に対していだいてる感情に近いんだろう。
母親には、女という意識を持たないよナ。
それがわかるのは、もっと大人になってからだろう。
まあ、ぼくの場合は…」
「そうか。おまえのお母さん、駆け落ちしたんだったナ。
ということは、無理矢理に女であることを、意識させられたんだ。
中二だったっけ?」
「うん、中二の冬さ。でも、その前から雰囲気はあったよ、なんとなく。
父親との間もギクシャクしてたみたいだし。
やっぱ、化粧も派手目になってたような気もするし。
だから女ですぬ っていうタイプはだめなんだ。
どっちかというと、男っぽい方がいいかな?」
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