昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

[舟のない港] (四十一)

2016-04-22 08:32:38 | 小説
不思議に痛みを感じなかった。 男が手加減をしたわけでもない。 何も考えられないのだ。 己の身に起きたことではない、と思っていた。 もう一人の麗子が頬を打たれて、それを冷ややかに見つめる麗子がいた。 ふらふらと夢遊病者のように、麗子が立ち上がった。 「帰らなきゃ」 麗子の前には、バツの悪そうな表情の男がいる。 頬を手にした右手をじっと見つめる男がいる。 男は、黙って麗子を送り出した。 やり過ぎたか . . . 本文を読む

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