(二)老婆
この老婆、実は帰る家を失くしています。あの大地震の折に、老婆だけでなく大半の家々が全半壊しています。しかしめげることなく、村人総出で互いの家の修復を行いました。そして老婆の家の修復に入ることになりました。その折でございます。
「お婆さん一人では暮らしが成り立つまい。 わしの所で面倒を見ようじゃないか」 村の世話役が、申し出ました。世話役と申しますのは、もめ事の仲裁役でした。といっ . . . 本文を読む
「何てこと言うのよ、勝利は。お母さん。笑ってないで、何とか言ってよ。小夜子さん、あなたもよ」
「さあさ、もうその辺にしなさい。勝子、支度なさい。
ちょっと失礼して、体をふきましょ。銭湯にはまだ入れないからね」 . . . 本文を読む
「なんてこというんだ、姉さん。ぼくは姉さんがいてくれるから、変ないい方だけど、姉さんが病気だから、こんなにがんばれるんだ。
なまけ者のぼくがこんなにがんばれるのは、姉さんのおかげなのに。 . . . 本文を読む
(序)
このお話は、先日のこと、ある女性から聞いたものです。お年は、そう八十を越えられているはずです。ときおり認知症かと疑われるような言動がありますが、平生はしっかりと生活を営まれています、とのことでした。 正直なところ、このお話の真偽のほどはわかりません。しかしながら、さもありなんと思えたので、みなさんにもお知らせしようと考えました。
山あいのふるびた田舎に、一人の老婆がおりました。身寄 . . . 本文を読む