18日(木).昨日,出張から帰り朝日朝刊を見て唖然としました 「ああ真紀子節 田中文科相,山中教授へ洗濯機の寄付提案」という記事です.山中教授はノーベル医学生理学賞の受賞の一報を受けたとき,自宅で洗濯機の修理をしていたことが知られています それを知った田中大臣が16日の閣僚懇談会で「さぞ生活者としてお困りと思うので,閣僚が,一人当たり5千~1万円を出せば買える」と提案,全員が賛成したが,政治家の寄付行為は法律違反になる場合もあることが分かり,他の方法を検討することになった,とのこと
この発想のレベルの低さはどうでしょうか 文部科学大臣が考えなければならないことは他にいくらでもあるはずです ノーベル賞の副賞賞金を受ける山中教授にとっては「有難迷惑だから,ほっといてくれ」てなもんでしょう.こういうのを「小さな親切,大きなお世話」と言います.まさに田中真紀子大臣は洗濯を誤った,もとい,選択を誤ったのだと思います.名誉挽回して人気を真紀返してほしいものです
閑話休題
青森出張の飛行機の中で,辻村深月著「ツナグ」(新潮文庫)を読み終わりました 辻村深月(つじむらみずき)は1980年生まれ,千葉大学教育学部卒業.2004年に「冷たい校舎の時は止まる」でメフィスト賞を受賞してデビュー.「ツナグ」で吉川英治文学賞新人賞を,「鍵のない夢を見る」で直木賞を受賞しました 私はこの人の本を読むのはこれが初めてです
生涯に一度だけ,死んでしまった誰かに会える.それを叶えてくれる者は「使者(ツナグ)」と呼ばれる.男子高校生・渋谷歩美(アユミ)は祖母からその役割を受け継ぐ.ツナグが媒介してくれるのは,依頼者が生きている間か,死んでからか,どちらか1度しかない
この物語に登場するのは,突然死したアイドルが心の支えだった孤独なOL,年老いた母に癌告知できなかった頑固な息子,親友に抱いた嫉妬心に悩む女子高生,失踪した婚約者を待ち続ける会社員たちです ツナグは一度死んだ人と依頼人を結びつけます.アユミの両親は死んで今はいません.父親の浮気が母親に発覚し,それが元で父親が母親を絞殺し,父親は舌を噛み切って自殺した,と噂されていましたが,最後に,それが「ツナグ」の掟が原因で起きた”事件”だったことが明らかになります
朝日の読書欄の「売れている本」でライターの瀧井朝世さんがこの本の裏話を書いています それによると,編集者の木村由花さんが辻村さんに「カタルシスを得られる物語を,と依頼したところツナグの設定と第1話の構想を提案され,これはぜひに,とお願いしました」と語ったとのことです 営業部の担当者によると「書店さんからの反応がよく,配本前に増刷が決定.以降毎週増刷がかかっている状態.読者は女性が多く,年齢層は偏りなく広がっています」とのこと
この本を読み終わって思うことは,自分だったら誰と会いたいと思うか,ということです 自分が生きている間に死者に会うか,それとも自分が死んだあとに,誰かが会いたいと依頼してきたときに生者と会うか,とにかく1度しかチャンスはないのです そういうことを考えさせえる潜在力を,この本は持っています.「おぬし,出来るな!」.編集者によると,作者の辻村さんは,この作品の続編を書きたいと語っているそうです.是非,実現してほしいと思います