28日(日).昨日の朝日朝刊「生活欄」に「レコードのカビ落とし方法」の記事が出ていました 記事によると,
レコードにカビが生えたら,手っ取り早いのは市販のレコード用アルコール系クリーニング液を使って拭き取る方法とのこと
長期にわたるひどい汚れは,①まず水道水で表面についた汚れを洗い流す.②水をよく拭き取る,③10倍に薄めた中性洗剤を布(ベッチンが最良)にしみこませ固く絞る,④音溝に沿って,中の汚れを外に出していくイメージで軽く拭く,⑤拭き終えたら,再び水道水で洗剤が盤面に残らないようにすすぐ,⑥新しい布に純水を含ませ拭いていく,⑦乾いた布で水分が残らないように拭く.
どうです.すごく面倒くさいですね 私の場合,現在約1,500枚のLPレコードを所有していますが,1枚もカビは生えていません なぜかと言えば,レコードを聴くたびにアルコールで盤面を消毒した上で内袋に入れてジャケットに収め,垂直に立てて保存しているからです 要は普段から大切に扱うことが最良の方法だということです
閑話休題
昨日、すみだトリフォニーホールで新日本フィルの第500回トリフォニーシリーズ定期公演を聴きましたプログラムは①ワグナー「楽劇:トリスタンとイゾルデ」より”前奏曲と愛の死”」、②ベートーヴェン「交響曲第3番”英雄”」の2曲です
数日前,新日本フィルから「指揮者変更のお知らせ」のハガキが届きました.この日指揮する予定だったハウシルトが急病により来日中止となり,ドミンゴ・インドヤンが代わりにタクトを取るという内容です インドヤンは今クラシック音楽界で注目を集めているベネズエラの「エル・システマ」でヴァイオリンを学び,ジュネーヴ音楽院で指揮を学んだ,これからを嘱望される若手指揮者です
オーケストラを見ると,コンサートマスター席に豊嶋泰嗣,その隣に西江辰郎というダブル・コンマス・シフト(こんな言葉ないけど)を取ります これはハウシルトが振ることに対する万全のシフトといえるでしょう.残念ながらハウシルトは急きょ出演できなくなりましたが,急にシフトを変えることも出来ないのでしょう.というわけで,新日本フィルの第500回を記念する定期演奏会にベネズエラの新進指揮者インドヤンがデビューすることにあいなりました
指揮台に上がったインドヤンは背丈が高くガッチリした体格の青年です そのインドヤンのタクトで1曲目のワーグナー「トリスタンとイゾルデ」前奏曲と愛の死が始まります 「愛の成就は現世にはなく,二人の死によってしかもたらされない」という「トリスタンとイゾルデ」のテーマに相応しい,ある意味妖しげな,そして官能的な音楽が流れます この1週間の疲れがどっと出たのか,緩やかに流れる音楽に身を委ねているうちに居眠りをしていたようで,ガクン,と肘かけから肘が外れてズッコケそうになりました.イカン,イカンと目をパッチリ開けて耳を傾けました
休憩後のベートーヴェン「交響曲第3番変ホ長調”英雄”」は,今年7月にインドヤンが英国のフィルハーモニア管弦楽団を指揮したということです.そういう実績も踏まえて新日本フィルはハウシルトの代演者としてインドヤンに白羽の矢を立てたのかも知れません
インドヤンは指揮台に登って一礼し,振り向きざまにタクトを振り下ろしました.古くは,かのカルロス・クライバーの指揮スタイルを思い出します 若々しく”前進あるのみ”という気持ちの良い演奏でした とくに第2楽章の「葬送行進曲」における古部賢一のオーボエ,白尾彰のフルートは目を見張るべきものがありました
ベネズエラの音楽教育システム「エル・システマ」に戻ります.ここの出身の指揮者グスターボ・ドゥダメルはベルリン・フィルを振ったりして話題を呼びましたが,現在はロサンゼルス・フィルの音楽監督にまで登りつめています かつて「東洋人に西洋音楽が理解できるのか?」と言われていた時期に,小澤征爾がボストン交響楽団の音楽監督を経てウィーン国立歌劇場の音楽監督に就任したとき,いったい誰がこのような快挙を予想できたでしょうか そういう意味でも,何年かあと,世界のクラシック音楽地図はベネズエラ出身の音楽家によって大きく塗り替えられているかも知れません
”英雄”のフィナーレで,インドヤンのタクトが空中に突き上げられると,満場の拍手とブラボーの嵐が会場を満たしました.さて,後でこの演奏を振り返ったとき,彼のデビューはどういう位置づけに置かれるのでしょうか