4日(月)。昨日、酷暑の中、またしてもコンサートに出かけました 幸い会場が池袋なのでバスで10数分です。という訳で、東京芸術劇場で東京都交響楽団の「作曲家の肖像シリーズ=ビゼー」公演を聴きました
プログラムはビゼーの①交響曲「ローマ」、②「アルルの女」組曲第1番、③同第2番で、指揮はマルク・ミンコフスキです
自席は2階L38番、右ブロック左から3つ目の席です。会場は文字通り満席 ミンコフスキ人気のためでしょう。彼は1962年パリ生まれ。1982年、19歳のときに「レ・ミュジシャン・デュ・ルーヴル・グルノーブル」を創設し指揮活動を続けてきました
昨年だったか、主兵オケを率いての来日公演は大きな話題を呼びました
コンマスの矢部達哉の合図でチューニングが行われ、指揮者を待ちます。ステージに表れたミンコフスキは白髪で大柄の巨人でした 1曲目の交響曲”ローマ”は、1860年から68年にかけて作曲され、1871年に改訂された曲です
われわれに馴染みの深い曲は1855年に書かれた交響曲ハ長調の方で、まさにビゼーの”青春の交響曲”というのに相応しい清々しい曲です
ミンコフスキのタクトで第1楽章がホルンの四重奏によって開始されます ビゼー独特の洗練された音楽が展開します。第2楽章のスケルツォ、第3楽章のアンダンテ、第4楽章のアレグロと進みますが、全体を通して、ミンコフスキの曲作りの特徴は、小気味の良いリズムと軽快なテンポです
ミンコフスキの指揮ぶりを見ていると大きなシロクマが大きな動作でオケを指揮しているようで微笑ましくなってきます
曲が終わり、会場一杯の拍手 とブラボーを受け、ミンコフスキはスコア・ブックを高々と掲げ「ビゼーの交響曲”ローマ”に拍手を
」という表情を見せます
よほど自国の作曲家ビゼーの隠れた名曲を日本の聴衆に紹介したかったのでしょう
休憩後は「アルルの女」組曲第1番と第2番が続けて演奏されます。第1番の「前奏曲」は「三人の王の行列」が力強く演奏され、途中、サクソフォンの美しい調べが流れます ビゼーはサクソフォンがかなり気に入っていたようです。次いで「メヌエット」「アダジェット」「カリヨン」と続きますが、ミンコフスキは交響曲”ローマ”の時と同様、小気味の良いテンポで音楽を進めます
続けて演奏された組曲第2番でもその姿勢は変わりません。第3曲「メヌエット」は、ビゼーの死後、親友ギローがビゼーのオペラ「美しいパースの娘」の第3幕から転用した曲です。ハープの調べに乗せてフルートが美しい旋律を奏でます 私もその昔フルートを1年ほど習っていたので分かりますが、こういう曲こそ人前で演奏できたら最高に幸せだろうな、と思います
ロマンティシズムの極致のような音楽です。そして最後は「ファランドール」です。前奏曲に現われた「三人の王の行列」のテーマとプロヴァンス地方独特のファランドール舞曲の組み合わせによる速いテンポの音楽が、聴衆を興奮の渦に巻き込みます
会場一杯のブラボーと拍手 がミンコフスキとオーケストラに押し寄せます。気を良くしたミンコフスキはアンコールにビゼーのオペラ「カルメン」から「前奏曲」を”元気溌剌”に演奏し、またまた聴衆を興奮の渦に巻き込みます
ミンコフスキは再度指揮台に立ってオケの方に振り返ります。コンマスの矢部達哉が「えっ?」という戸惑いの表情を見せています ミンコフスキが指揮台から降りて矢部に何やら話かけています。そのシーンを再現してみましょう
ミンコフスキ:これだけ受けたんだから、もう1曲アンコールやろうよ、シルヴプレ
矢部達哉: (頭を抱えながら)えー、ぼく聞いてないし~ 打ち合わせにないしー
ミンコフスキ:いいじゃん、今やったファランドールをもう1回やるだけだから、すぐできるよね
矢部達哉: そんなのアルルの~ 今度やるときはあらかじめ言っておいてよね、白くまくん
ミンコフスキ:ダコー(ああ、いいよ) またの機会があればね
そんじゃ、いくよ、せーの
・・・・・と、こんな会話があったのか、なかったのか。それにしても、コンマスのちょっとした合図で他のメンバーが演奏すべき曲を察知して、すぐに演奏に移れるのですから、都響って素晴らしいオケですよね。本当に感心します とにかく、またしても会場は興奮の坩堝でした
「暑い夏には熱い演奏が一番」と、クールな楽団員が打ち上げの生ビールを飲みながら言ってたとか