21日(木)。昨夕、サントリーホールで読売日本交響楽団の「サマーフェスティバル~三大協奏曲」コンサートを聴きました プログラムは①メンデルスゾーン「ヴァイオリン協奏曲ホ短調」(Vn:弓新)、②ドヴォルザーク「チェロ協奏曲ロ短調」(Vc:辻本玲)、③チャイコフスキー「ピアノ協奏曲変ロ短調」(P:ニコライ・ホジャイノフ)で、指揮は円光寺雅彦です
自席は1階21列15番、4日前の「読響:三大交響曲」の時と同じ席です。会場はほぼ満席 ソリストの弓新(ゆみ・あらた)が、「お父さんにしたい指揮者No.1」と自ら主張している円光寺雅彦とともに登場します
初めて弓を見ましたが、一見して後藤龍を思い起こしました。顔つきというよりも体つきがよく似ているように思います。1992年生まれなので弱冠22歳の若者ですが、内外のコンクールに入賞しています
円高寺のタクトでメンデルスゾーンの「ヴァイオリン協奏曲ト短調」の第1楽章が始まります すぐにヴァイオリンが入ってきますが、やや線が細いかな・・・と思いました。しかし、中間部のカデンツァに入ると彼本来の力が発揮されました
弓新という名前を体現するかのように、演奏され尽くしたこの名曲に、ヴァイオリンの弓で新たな命を吹き込むかのような”うねるような”演奏をします
こういう演奏は今まで聴いたことがありません。第2楽章「アンダンテ」では、歌舞伎役者のように”見得を切る”ような演奏姿が見られました
第3楽章は堂々たる演奏で、流れの良いフィナーレを飾りました。演奏直後は「どうだ、まいったか
」という余裕の表情を見せていました。ブラボーと拍手喝さい
がステージを包みます。プログラムのプロフィールで「現在ザハール・ブロン教授に学んでいる」という記述を見てなるほどな、と納得しました
オケのメンバーが大幅に拡大され、2曲目のドヴォルザーク「チェロ協奏曲ロ短調」に備えます。チェロの辻本玲が登場します。頭を見ると、髪の毛が鶏のトサカのように立っています 「辻本君、君はチェロ界のロックンローラーになろうというのかい
」と言いたいのをグッとこらえて拍手で迎えました。1982年生まれの32歳です。数々のロックンロール、もといコンクールに入賞しています
よいこは人を見かけだけで判断しないようにね
第1楽章は長い序奏の後、「待ってました」とばかりにチェロが力強く入ってきます。ドヴォルザークって最初から人の心を掴むのが上手いですね
チェロは申し分ないのですが、バックのオケのバランスがちょっとおかしいと思うところが何度かありました
多分金管楽器が強すぎたのだと思います。これは指揮者の責任の範囲でしょうか?ただ、第2楽章「アダージョ」に入ると、フルートとチェロの掛け合いの部分など、聴かせどころがふんだんにありました
第3楽章に至るとオケはチェロと一体となり感動的なフィナーレを迎えました
それにしてもこの曲は名曲中の名曲ですね
それに、「三大交響曲」(未完成、運命、新世界より)と「三大協奏曲」(メンコン、ドヴォコン、チャイコン)の両方にノミネートされている作曲家はドヴォルザークだけという事実を考えると、いかにドヴォルザークが人々の心を捉える曲を書いたかをあらためて認識させられます
休憩後はチャイコフスキーの「ピアノ協奏曲変ロ短調」です。ピアノのニコライ・ホジャイノフが登場します。1992年、ロシア生まれといいますから弓新と同じ22歳です。現在モスクワ音楽院に在学中とのことですが、2010年のショパン国際コンクールのファイナリストに残りました あの年のショパン・コンクールはユリアンナ・アヴデーエワが優勝した年ですが、レヴェルの高いコンクールとして知られています。必然的に期待が高まります
指揮者の合図で第1楽章「アレグロ・ノン・トロッポ」が開始されます。すぐにホジャイノフの力強いピアノ独奏が入ってきます 自席は1階席でも相当後方なのでステージ上がよく見えないのですが、目を凝らして彼の弾いているピアノのボディを見ると、アルファベットで6文字が捉えられました。最初の文字はYで最後はAと読めました。どうやらYAMAHAのピアノのようです
たしかアヴデーエワもヤマハを弾いていたように記憶しています
あの年のチャイコフスキー・コンクールのファイナリストにはヤマハがグランド・ピアノを無償で提供するというようなオファーがあったのでしょうか?関係者に聞いてみないと分かりません
ホジャイノフの演奏は同じロシアのベレゾフスキーのようなダイナミズムこそないものの、確かなテクニックと抒情性を持ち合わせています 面白かったのは第3楽章「アレグロ・コン・フッコ」です。途中でホジャイノフが急にテンポを上げて”仕掛ける”と、しっかりとオケが付けていき、フォナーレに近くなると、今度は指揮者が急にテンポを上げて”仕掛け”、ホジャイノフが負けじとテンポ・アップするという面白い駆け引きが見られました
フィナーレは圧巻でした
コンサートの最後に3人のソリストが再度登場、会場一杯の拍手 を受けていました。今回のソリストは3人とも”当たり”です