6日(水)。昨夕、またしても酷暑の中、川崎まで出かけ、ミューザ川崎でコンサートを聴きました ロビー入り口で配られるチラシに4日(月)に開かれた川瀬賢太郎+神奈川フィルのコンサートの模様が、写真入りで紹介されていました
という訳でミューザ川崎で東京フィルのコンサートを聴きました これは「フェスタサマーミューザ」の一環として開かれたものです。プログラムは①モーツアルト「ピアノ協奏曲第20番ニ短調K.466」、②マーラー「交響曲第5番嬰ハ短調」です。指揮は常任指揮者ダン・エッティンガー、①のピアノ独奏は菊池洋子です
自席は1C10列30番、センターブロック右端から一つ入った席です。会場は9割方埋まっている感じでしょうか ステージの中央には黒光りのスタインウェイが存在感を示しています。オケのメンバーが入場します。左から、奥にコントラバス、前に第1ヴァイオリン、右にチェロ、ヴィオラ、第2ヴァイオリンという対向配置をとります
変わっているのはホルンが右サイドに配置されていることです。コンマスはソロ・コンマスの荒井英治です
先日も書いたように、ソリストが女性の時は、あらかじめ何色のドレスで登場するか予想を立てます。今回のピア二スト・菊池洋子さんについてはブルー系を予想しました。イスラエル出身のダン・エッティンガーとともにステージに現われた菊池さんは、淡いブルーのドレスで登場しました またしても正解です。何も出ないですが
エッティンガーのタクトでモーツアルト「ピアノ協奏曲第20番ニ短調K.466」の第1楽章「アレグロ」がデモーニッシュに始まります この曲を生で聴くのはいつ以来だろうか・・・と思い出そうとしても、思い出せません。大好きなモーツアルトの大好きなピアノ協奏曲でも、生演奏に接する機会はそれほど多くはないことを改めて認識します
オケの序奏に次いで、菊地のピアノがそっと入ってきます。そしてオケとともにデモーニッシュな音楽に溶け込んでいきます。第2楽章「ロマンス」はいつ聴いても素晴らしいと思います。悲劇の合間の憩いのひとときのような優しさに満ちています
そして、第3楽章「アレグロ・アッサイ」は再びデモーニッシュな雰囲気の曲想が展開します 菊地は途中つまづきそうになりながらも最後まで溌剌としたピアノを聴かせてくれました
終演後、握手を求める菊池に対しエッティンガーはハグで応え、満面の笑顔を見せていました あれは指揮者の役得ですね
何回かステージに呼び戻されましたが、エッティンガーが「アンコールしないのならピアノの蓋を閉めちゃえば」とアドヴァイスすると、素直な演奏をした素直な菊地は蓋を閉めてステージを去りました
さて、休憩後はマーラー「交響曲第5番嬰ハ短調」です。譜面台の上には電話帳(今もある?)ほどの厚さのスコアが載せられています エッティンガーが登場し、指揮台に上がります。エッティンガーはタクトを使わず、第1楽章冒頭のトランペットの開始を目で合図します。タクトを使わず目で合図する方法を”アイコン・タクト”と言います
よく聴くと、このトランペットのテーマはベートーヴェンの交響曲第5番”運命”のテーマ、ジャジャジャジャーンの変形であることが分かります
第2楽章は副題どおり「嵐のように激しく、最大の激烈さをもって」演奏されます。オケはフル稼働です。第3楽章「スケルツォ」について、コンマスの荒井英治氏が総合プログラムに次のように書いています
「指揮者はオーケストラという集団心理を持った巨大な怪物(!)を相手にしなければいけません。楽員の怠慢を許さず、必死になって演奏させる。そんなある種の攻撃を、マーラーは仕掛けたのかもしれません」
さすがは東京フィルのソロ・コンマスです。鋭い分析です。弦楽器、管楽器、打楽器、すべて総動員しての闘いです
第4楽章「アダージェット」は、いつともなく始まりました。最初は控えめにメロディーが流れますが、次第に厚みを増して大河となって海に注いでいくがごとくです。まるでスメタナの「モルダウ」のようなコンセプトを感じます。ヴィスコンティの名作「ベニスに死す」でも使われた実に美しい曲です
そして第5楽章「ロンド~フィナーレ」は続けて演奏されます。演奏する側も、聴く側も、マーラーの音楽にどっぷり浸かり、興奮のフィナーレを迎えます
今回とくに素晴らしいと思ったのはホルンとコントラバスです。奇しくもステージ左右の対向する位置に配置されたセクションです その魅力が発揮されたのは、ミューザ川崎のホールとしての特性が要因だったのかも知れません。良いホールだと思います