人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

アジア・ユース・オーケストラでチャイコフスキー「第5交響曲」を聴く

2014年08月30日 07時02分55秒 | 日記

30日(土)。昨夕、池袋の東京芸術劇場でアジア・ユース・オーケストラのコンサートを聴きました プログラムは①ヴェルディ「歌劇”運命の力”序曲」、②ドビュッシー「牧神の午後への前奏曲」、③ラヴェル「ラ・ヴァルス」、④チャイコフスキー「交響曲第5番ホ短調」です 指揮は同オケの首席指揮者ジェームス・ジャッドで、現在ニュージーランド交響楽団の音楽監督を務めています

アジア・ユース・オーケストラ(AYO)は、中国、香港、台湾、日本、韓国、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナムから選出された若い演奏家で構成されています 彼らはアジア各地での厳しいオーディションを通過し、香港での3週間のリハーサル・キャンプを経て、アジア各国で3週間のコンサート・ツアーを行っています AYOは23年の歴史がありますが、私がAYOを聴くのは一昨年、昨年に続いて今年が3回目です

 

          

 

自席は1階LBD列4番。1階と言っても、実質的には中2階という位置です。会場左の入り口を入ってすぐの階段を上がって行きます。チケットの席番だけ見ていても分かりません チケットを買う時、座席表を見て通路側の席を選んだつもりだったのですが、何とどん詰まりの席 これから気をつけねばと思いました。位置的には会場左サイドの中2階からステージを見下ろす席に当たります。どん詰まりですが良い席です 会場は6割程度埋まっている感じでしょうか。昨年、東京オペラシティーコンサートホールで聴いた時はかなり埋まっていたと思ったのですが、会場の収容人数が違うので一概に言えません オペラシティが1632席に対して東京芸術劇場は1999席ですから、後者の方が370席分広いわけです。オペラシティーで開催していたら、昨年と同じ位の聴衆が集まっているな、と思ったかも知れません

開演5分前に会場に入ると、すでにオケのメンバーが席に着いて各自のパートの練習をしています プロのオケではあり得ない風景です。アジアのオケということで、誰もが日本人に見えます 逆に誰が日本人なのかさっぱり見当が付きません メンバーは男女とも上が濃いグレイ、下が黒の衣装で統一されています。男女の比率はやや男子が多い感じです。弦楽器では音程の低い楽器(コントラバス、チェロ)ほど男子の比率が高く、管楽器ではほぼ男女半々といったところです

オケは左の後方にコントラバス、左の前に第1ヴァイオリン、右にチェロ、ヴィオラ、第2ヴァイオリンという対向配置(ヴァイオリンが左右に分かれて向かい合う態勢)をとります 拍手の中、コンマスの長身・長髪の女子が登場します。女子なので正式にはコンミス(コンサートミストレス)です 顔つきがMETライブビューイングでお馴染みのソプラノのポプラフスカヤに似ています オーボエに合わせてチューニングが行われ、指揮者の登場を待ちます

ジェームズ・ジャッドの登場です。思わず「いや~、久しぶり~、ポール」と叫びそうになってしまいました。ビートルズのポール・マッカートニーによく似ているのです

 

          

 

ジャッドのタクトでヴェルディの「運命の力」序曲が始まります。感心するのはクラリネット、オーボエ、フルートがべら棒に上手いのです オペラの序曲はそのオペラのエッセンスが詰まった音楽ですが、彼らの演奏は、そのエッセンスを感動的に表出していました

管楽器のメンバーが一部入れ替わって次のドビュッシー「牧神の午後への前奏曲」の演奏に移ります 冒頭のフルートのソロはなかなか聴かせてくれました オケはヴェルディの力強い音楽から、一転してドビュッシーの柔らかい音楽の演奏に変貌を遂げています。それは見事です

そして第3曲目のラヴェル「ラ・ヴァルス」の演奏に入ります。ヴァルスとはワルツのことですが、フランスのラヴェルはウィーンのワルツに憧れを持っていたのでしょう 冒頭、低弦によって映画「ジョーズ」のような不気味な音楽が奏でられますが、すぐに軽快なワルツのメロディーに変わります オケは色彩感豊かに優雅なワルツを奏でていました

 

          

 

休憩後はこの日のメイン・プログラム、チャイコフスキーの「交響曲第5番ホ短調」です。管楽器のメンバーが一部入れ替わります。ジャッドの合図で第1楽章が開始されます。低弦とバス・クラリネットによってメイン・テーマが暗いメロディーとして演奏されます この楽章では”悲劇のテーマ”と言ってもよいでしょう(同じメロディーが最後の第4楽章ではまったく別の曲想で登場します)。バス・クラリネットが凄く良い演奏をしています

ジャッドは第1楽章から第2楽章に移る際、間を置かずに演奏させます。これは演奏者と聴衆の集中力を持続させるための方策だと思われます 第2楽章のアンダンテ・カンタービレは、第1楽章の”悲劇”を慰めるかのようなメロディーが奏でられます。冒頭のホルン独奏は素晴らしい演奏でした また、オーボエ、ファゴット、バス・クラリネットなどの演奏も冴えわたっていました 弦楽器も美しいメロディーを奏でています。中盤のピチカートで、第1ヴァイオリン約1名が「ポン」と一拍早く飛び出して目立っていましたが、プロのオケにない愛敬です。気にすることはありません

間を置かずに第3楽章のワルツに入ります。ジャッドは今回のプログラミングで前半にラヴェルの「ラ・ヴァルス」を、後半にチャイコフスキーの第5番の”ワルツ”を配置して統一性を持たせたのかも知れません。考えすぎかもしれませんが。この楽章では特に弦楽器のアンサンブルが冴えていました

そして間を置かずに最終楽章に入ります。第1楽章で”悲劇のテーマ”だったメイン・テーマのメロディーが、この楽章では悲劇を乗り越えた”勝利のテーマ”として奏でられます 同じメロディーを明暗の対照的に表出させるこうした手法はチャイコフスキーの魔術と言っても良いでしょう この楽章では管・打楽器も弦楽器も持てる力を振り絞って力強いメイン・テーマを堂々と演奏します。フィナーレは圧巻でした

拍手とブラボーが会場を飛び交います  ジャッドは管楽器奏者を立たせて聴衆に賞賛を求めます。素晴らしい演奏でした

最後にAYOの芸術監督リチャード・パンチェスがステージに登場し、英語で挨拶をしました

「このオーケストラはアジア各国の若者たちが集まって演奏旅行をしているが、東京が最終地である。このコンサート・ツアーには各国のスポンサーに多大な協力を得ている。お礼を申し上げる」

次にオケのメンバーを国別に紹介しました

「中国     26人 他のメンバーや会場から拍手   と口笛が・・・・。コンミスも中国でした

香港     16人 負けず劣らず拍手   と口笛が・・・・

韓国      1人 (日韓の政治情勢が微妙な関係な中、よく来てくれました)  

マレーシア   5人   

フィリピン    5人   

タイ      4人   

ベトナム    3人   

シンガポール  1人   

台湾     29人   

日本     20人      (ホルン、クラリネットなど素晴らしい演奏をしてくれた管楽器が中心でした)。

以上合計110人です

このオーケストラはプロではない純粋な若者たちが真摯に楽曲に対峙している姿が清々しく、毎年楽しみにしています この日の公演は今年聴いた130回目のコンサートに当たりますが、これほど感動的なコンサートも珍しいでしょう

今日は午後2時から同じ東京芸術劇場でAYO今期ツアー最後のコンサートが開かれます プログラムは①バーンスタイン「キャンディード序曲」、②リヒャルト・シュトラウス「英雄の生涯」、③ベートーヴェン「交響曲第3番変ホ長調”英雄”」です 私はもちろん聴きに行きますが、当日券はあるはず。絶対に後悔しないと確信します。是非聴きにお出かけください。S席4,000円、A席2,000円です。感動が待っています

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする