29日(木)その2.よい子は「その1」も見てね。モコタロはそちらに出演しています
昨日、ミューザ川崎シンフォニーホールで「フェスタサマーミューザ」参加公演、「N響メンバーによる室内合奏団」のコンサートを聴きました 本公演のテーマは「新たな時代に蘇る世紀末ウィーンの香り」です
プログラムは①ヨハン・シュトラウスⅡ世「南国のバラ」(シェーンベルク編)、②同:喜歌劇「ジプシー男爵」から「宝石のワルツ」(ウェーベルン編)、③同:「酒・女・歌」(ベルク編)、④マーラー「交響曲第4番 ト長調」(クラウス・ジモン編:室内楽版)です
出演は 指揮とヴァイオリン独奏=篠崎史紀、ヴァイオリン=白井篤、ヴィオラ=中村翔太郎、チェロ=市寛也、コントラバス=西山真二、フルート=甲斐雅之、オーボエ=池田昭子、クラリネット=松本健司、ファゴット=水谷上総、ホルン=今井仁志、ハーモニウム=山口綾規、打楽器=植松透、同=竹島悟史、ピアノ=入江一雄、ソプラノ=盛田麻央です
会場は7割くらいの入りでしょうか。N響メンバーではあるものの、フル・オーケストラではないためか満席には出来なかったようです
宮本明氏のプログラムノートによると、「1921年5月27日に開かれた『ワルツの夕べ』は、1918年にシェーンベルクが立ち上げた『私的演奏協会』の財政強化のための特別演奏会だった ヨハン・シュトラウスの人気曲を演奏して運営資金を工面しようと試みたのだ
この日演奏される3曲に『入江のワルツ』を加えた4曲が弦楽四重奏+ハーモニウム(リード・オルガン)とピアノという六重奏曲に編成され、シェーンベルクはヴァイオリンを、ウェーベルンはチェロを、ベルクはハーモニウムを弾いて演奏に参加した
公演は大成功に終わった
」とのことです。今からちょうど100年前のこの時期は「スペイン風邪」のパンデミックの真っ最中だったそうです
新型コロナのパンデミックの真っ最中の現在、彼らの編曲によるシュトラウスのワルツはどう響くのかが聴きどころです
プログラム前半はウィンナワルツが3曲続けて演奏されます 1曲目はヨハン・シュトラウスⅡ世:ワルツ「南国のバラ」(シェーンベルク編)です
この曲はヨハン・シュトラウスⅡ世(1825-1899)が1880年に作曲、同年ウィーンで初演されました
2曲目はヨハン・シュトラウスⅡ世:喜歌劇「ジプシー男爵」から「宝石のワルツ」(ウェーベルン編)です
このオペレッタは1885年にアン・デア・ウィーン劇場で初演されました
3曲目はヨハン・シュトラウスⅡ世:ワルツ「酒・女・歌」(ベルク編)です
この曲は1869年にウィーンで初演されました
演奏は弦楽器が篠崎史紀、白井篤、中村翔太郎、市寛也、西山真二の5人、それにハーモニウムの山口綾規、ピアノの入江一雄が加わります
これは実に楽しい演奏でした 楽器が少ない分、曲の構造が浮かび上がり、一人一人の演奏が明確に聴きとれます
とくに弦楽奏者はノリノリで、ウィンナワルツ独特のアクセントを付けながら楽し気に演奏している姿が印象的でした
プログラム後半はマーラー「交響曲第4番 ト長調」(室内楽版)です この曲はグスタフ・マーラー(1860‐1911)が1892年、1899年から1901年にかけて作曲、1901年にミュンヘンで初演されました
この日の演奏は2007年にドイツの指揮者クラウス・ジモンが編曲した室内楽版によります
前出の「私的演奏会」でもこの曲が室内楽で演奏されています(エルヴィン・シュタイン編)が、ジモン編の方がホルンが入るなどオリジナルに近い形になっているとのことです
第1楽章「ゆっくりと、急がずに」、第2楽章「気楽な動きで」、第3楽章「平安に満ちて」、第4楽章「極めて和やかに」の4楽章から成ります
弦楽奏者の後ろにホルン=今井仁志、フルート=甲斐雅之、オーボエ=池田昭子、クラリネット=松本健司、ファゴット=水谷上総が並び、その後方に打楽器の植松透、竹島悟史、ピアノの入江一雄、ハーモニウムの山口綾規が並びます
篠崎マロさんの合図で演奏に入ります。木管が良く歌います ホルンの演奏を聴いていて、この曲はホルンが入らないと「クリープを入れないコーヒーなんて」状態になってしまうと思いました
ジモンの編曲版で良かったと思います
第2楽章では、マロさんによる死神のソロが聴きどころですが、ヴァイオリン2挺をとっかえひっかえ弾いていました
第3楽章がこの曲の白眉です
穏やかで美しいメロディーが低弦によって奏でられ、ヴィオラ、ヴァイオリンへと受け継がれていきますが、ここはまさに天国的な世界です
オーボエが良く歌います
楽章の終結部でクライマックスを迎えた後、ソプラノの森田麻央が舞台中央に向かい、スタンバイします
盛田麻央は国立音大卒。パリ・エコールノルマル音楽院、パリ国立高等音楽院修士課程を満場一致の最優秀で修了、二期会会員です
第4楽章に入り、森田のソプラノで「天上の生活」が歌われます
森田は美しい声で天井からの歌声を届けてくれました
指揮者なしの室内楽版交響曲の演奏でしたが、N響第1コンサートマスターの篠崎マロさんの統率力と、N響の面々のソリストとしての実力が発揮された素晴らしいコンサートでした
この後、上野東京ライン ⇒ 山手線 ⇒ 京王新線経由で初台に向かいました 東京シティ・フィルの「第343回定期演奏会」については明日のブログでご紹介します