人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

8月の公演チケットを買ったぞ!~読響「3大交響曲」,アジアユースオーケストラ

2012年06月20日 06時56分00秒 | 日記

20日(水)。昨夕,台風接近のため飲み会を断って6時半ごろ家に帰ると,息子が「これから,大学にレポートを提出に行く」と言うのです.「これから台風が来るんだよ」と言うと「実験レポート.出さなくても済むものじゃないんだよ」と答えます.結局,7時ごろ傘を持って出ていきました.巣鴨から千葉県野田の校舎までは往復するだけで3時間はかかります.息子の通う大学は理科系の中でも一,二を争う厳しい大学と言われています.そのことは本人はもちろん,親の私も身に染みて感じています それにしても台風に向かって学校に行かなければならないとは・・・・・・結局,息子は10時20分にびしょ濡れになって帰ってきて遅い夕食を取りました その後,横殴りの雨が窓ガラスを打つ音が長い間続いていました 一転,今朝は台風一過の青空 強風が吹いています.頭上に気を付けましょう

”台風一過”といえば,小学生のころ”台風一家”と思いこんでいた時期がありました.嵐のようにやってきて,嵐のように去って行く凄まじい家族がいるのかな,と・・・今に続く恥ずかしき人生の一コマです

 

  閑話休題  

 

昨日の日経朝刊「文化欄」に前日本記者クラブ専務理事の岩崎玄道さんが、41年にわたる記者クラブ事務局の思い出を書かれています 岩崎さんは41年の間に海外から1000人以上のゲストの記者会見に立ち会ったとのことです

思い出に残る記者会見としてマーガレット・サッチャー、小平、ゴルバチョフの3人を挙げています

サッチャーは4回記者会見したそうですが、首相として2回目の会見(89年9月21日)の時が最も印象に残っているとして,次のように紹介しています。

「サッチャーは予定通り当ビルに到着したものの、会見は20分も遅れた その理由は、彼女は応接室からクラブ関係者を締め出し、冒頭スピーチの原稿に手を入れていただけでなく、会見用に着替えをしていたのだった 会見が始まったが、圧巻は世界情勢の分析だった。中国の天安門事件を非難し、ペレストロイカを進めるゴルバチョフを”かつてのソ連の指導者と異なり、どんな問題でも議論ができ、物事の根幹をとらえる能力が抜群の人”と称賛した。信念と実行の人の面目躍如だった

ゴルバチョフの会見は91年のことで、次のように回想しています

「公式日程に”記者会見は4月18日午後4時15分から5時30分まで”と決まっていたのに、実際には8時間後の深夜0時35分に会見が始まり、1時50分に終わった 当日、海部首相との間で、北方領土問題等をめぐる首脳会談が休憩をはさんで6~8回も続き、そのあおりを受けて会見が8時間も延びたのだ ゴルバチョフがライサ夫人とともに当ビルに到着した時には、疲れて放心状態だった 国賓の未明の会見などというのは、後にも先にもこれだけだ

世界をリードする政治家もタフですが、それを受け入れる側の事務方も大変なご苦労がありますね どこの世界でも同じです 岩崎さんには,仕事上はもちろんのこと,若かりし頃はテニスをご一緒させていただいたり,公私ともにお世話になりました これからの人生は回顧録の執筆に専念されるのでしょうか?はたまた,家庭菜園に汗を流すことに生きがいを感じる道を選ばれるのでしょうか?いずれにしても,今後のご健康とご多幸をお祈りいたします

 

  も一度,閑話休題  

 

8月のコンサート・チケットを3枚買いました 1枚は読売日本交響楽団のサマーフェスティバル「3大交響曲」コンサートです.8月16日(木)午後6時半からサントリーホールです.プログラムは①シューベルト「交響曲第7番”未完成”」,ベートーヴェン「交響曲第5番”運命”」,ドヴォルザーク「交響曲第9番”新世界から”」の3曲で,指揮は小林研一郎です この3曲を一度のコンサートで聴く機会はなかなかありません.読響による夏休み恒例の「3大協奏曲」のチケットはとっくの昔に売り切れていました

 

          

 

残り2枚は「アジアユースオーケストラ東京公演2012」です 会場はいずれも東京オペラシティコンサートホールで,開演は午後7時です このオーケストラは未知数ですが,若い演奏家の熱演を期待したいと思います

うち1枚は8月28日(火).曲目はマーラーの「交響曲第9番」1曲で,指揮はジェームズ・ジャッドです

もう1枚は8月29日(水).曲目は①ベルリオーズ「序曲:海賊」,②ドビュッシー「交響詩:海」,ベルリオーズ「幻想交響曲」の3曲で,指揮はリチャード・パンチャスです

これで8月は5回のコンサートに行くことになりますが,昨年の10回の半分に過ぎません.昨年は,3.11大震災の影響で3月~5月の公演が8月にずれ込んだ(?)せいで8月に開かれるコンサートが多かったように思いますが,今年は,例年に戻った感じがします

 

          

 

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アウンサンスーチー感動の物語~試写会「The Lady  引き裂かれた愛」を観る

2012年06月19日 07時00分19秒 | 日記

19日(火)。昨日、朝出勤すると卓上に1枚のハガキが置かれていました 新日本フィル特製の絵ハガキで、宛名は当ビルの住所で当社の”音楽部 Mr.tora”となっています。”音楽部 Mr.tora”でハガキが届くなんて、私も有名になったものです 裏を見ると、文末に差出人として”禿”の文字がありました

 

          

 

ペンネーム禿さんは、新日本フィル「室内楽シリーズ」の定期会員で、toraのブログに時々コメントを寄せて下さっている方です ハガキの文面には、14日の室内楽コンサートを、私と同じ8列の席で聴いたと書かれていました。私が1番で禿さんが13番でした 禿さんとは何度かブログ上でやり取りしていますが、まだ直接お目にかかって話をしたことがありません 文末に「10月24日にまたご一緒しましょう~!」とあったので、禿さんも次の室内楽シリーズ定期会員を継続することが分かりました。私も継続します。いつかお目にかかる時があるでしょう

このたびの絵ハガキは嬉しい”サプライズ”でしたが、それにしても、なぜ、今回はブログにコメントではなくて、絵ハガキだったんでしょうか・・・・・・日光の手前(イマイチ)よく分かりませんのです         

 

  閑話休題  

 

17日の朝日朝刊に「スーチー氏 21年後のノーベル平和賞演説」の見出しによる記事が載りました記事によると,

「ミュンマーの民主化運動指導者アウンサンスーチー氏(66)が16日,ノルウェーの首都オスロの市庁舎で,1991年に授与されたノーベル平和賞の受賞演説に立った ”完全な世界平和の実現は到達できない目標だ.でも,私たちは救いの星に導かれる砂漠の旅人のように,平和を目指して旅を続けなければならない”と訴えた スーチー氏の受賞は,軍事政権が民衆弾圧をしていた当時,非暴力で民主化と人権のために戦っていたことが評価された 軍事政権に自宅軟禁されていたため,授賞式には,英国人チベット研究者の夫マイケル・アリスさんと息子2人が代理で出席した.約21年後の今回は次男のキム・アリスさんが姿を見せた

長期間にわたる自宅軟禁や圧力にもめげず、不屈の信念を貫き通してきたスーチーさんには頭が上がりません 一日も早く、ミャンマーに民主主義が根差し本当の意味での平和な社会が実現することを願ってやみません

 

  閑話休題  

 

そんなタイミングの昨夕、記者クラブの試写会で「The Lady 引き裂かれた愛」を観ました リュック・ベッソン監督、ミシェル・ヨ―主演の、アウンサンス―チ―の半生の物語です

1988年ビルマ(現ミャンマー).イギリスのオックスフォードで夫マイケル・アリス,息子のアレクサンダー,キム兄弟と幸せな家庭生活を送っていたアウンサンスーチー(ミシェル・ヨー)は,母親の看病のために久しぶりに祖国に帰ります そこでは,軍事政権が学生による民主主義運動を武力で制圧しようとしていました そんな中,「ビルマ建国の父」と死後も多くの国民から敬愛されるアウンサン将軍の娘スーチーの帰国を知った民主主義運動家たちがスーチーの元に集まり,リーダーになってほしいと懇願します ここから軍事独裁政権との長い戦いが始まります

普通の主婦だったスーチーがシェダゴン・パゴダ前広場で数十万人ものラングーン市民の前で演説するシーンは感動的です.アウンサンスーチーを演じるハリウッド女優ミシェル・ヨーは,役作りのために200時間にもおよぶスーチーの映像を入手して,容姿だけでなくスーチーの話す英語,ビルマ語を完ぺきにマスターしたといいます 映画を観れば分かりますが,彼女は本物のスーチーにそっくりです

私は不勉強で知りませんでしたが,アウンサンスーチーは1985年~86年に京都大学東南アジア研究センター客員研究員として来日しています.われわれ日本人にも身近な存在なのですね

彼女は軍事政権によって1989年からラングーンの自宅で監禁状態になります 1991年には夫マイケルの影の尽力によってノーベル平和賞が授与されます しかし,スーチーは授賞式に出席することは許されず,代わりに夫と息子たちが出席し,長男アレクサンダーが母親に代わって受賞のスピーチをします.そのシーンは感動的です

その後もスーチーは1995年から6年間自宅監禁されます.1999年3月に夫マイケルがイギリスでガンで死去しますが,スーチーは,自分がイギリスに帰国することは2度とビルマに戻れないことに等しいとして,涙を呑んで戻りません

その後もスーチーは2000年から02年まで,03年から10年まで監禁されることになります.そして遂に2010年11月13日に長い監禁から解かれ,2012年4月の議会補選に圧倒的な支持を得て当選,国会へ進出します スーチーの戦いは現在進行形なのです

 

          

 

さて,私が映画を観るときにいつも気にかけているのは,どんなクラシック音楽が使われているかということです この映画で使われているのは2曲だけです

最初に,オックスフォードの自宅で家族と平和に暮らしている中,夫マイケルがLPレコードに針を落とすシーンがあります.そこから流れてきたのはモーツアルトの「ピアノ協奏曲第23番イ長調K.488」の第2楽章”アダージョ”です 世の中にこんなに哀しい音楽があるのか,と思うほど,どこまでも美しく,どこまでも哀しい音楽です

次に登場するのはラングーンの自宅に戻ったスーチーがピアノに向かって弾くパッヘルベルの「カノン」です 穏やかな心休まる曲です.

そして次に登場するのは,夫マイケルがホスピスに入院して死の間際にある中で流れる美しくも哀しい音楽・・・・そう,再びモーツアルトのピアノ協奏曲第23番の”アダージョ”です つまり,この曲は夫マイケルの”哀しみのテーマ”として扱われているのです

最後に登場する音楽は,ノーベル賞の受賞式で息子アレクサンダーの挨拶が終わって,会場に控えていた弦楽オーケストラが奏でるパッヘルベルの「カノン」です ラングーンの自宅でラジオから聴こえる息子のスピーチを聴きながら,スーチーがピアノで同じメロディーを弾くシーンが映し出されます.つまり,この曲はスーチーの”喜びのテーマ”として扱われているのです

たったの2曲が2回ずつ登場するだけですが,その扱いは最大の効果を上げています

 

          

 

原題は「The Lady」,2011年・フランス映画,2時間13分.7月21日(土)から角川シネマ有楽町,ヒューマントラストシネマ渋谷でロードショー公開されます.収益の一部は,マイケル・アリス記念基金とプロスペクトビルマに寄付されるとのことです

試写会にはこれまでにない多くの人が出席していて,時折ハンカチで目頭を押さえていました 私が最近観た映画の中で最も感動した映画です この映画を一人でも多くの人に観てほしいと心から思います

 

          

 

          

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ブラームス,メンデルスゾーン~「サントリーホール・チェンバーミュージック・ガーデン」フィナーレを聴く

2012年06月18日 06時54分14秒 | 日記

18日(月)。昨日、サントリーホール「ブルーローズ」(小ホール)で「サントリーホール・チェンバーミュージック・ガーデン」フィナ―レを聴きました 曲目はベートーヴェン「ヴァイオリン・ソナタ第5番ヘ長調”春”」,②モーツアルト「ピアノ協奏曲第14番変ホ長調K.449」,②ブラームス「弦楽六重奏曲第1番変ロ長調」,③メンデルスゾーン「弦楽八重奏曲変ホ長調」の4曲で,演奏はチェロ=堤剛,ピアノ=若林顕,弦楽四重奏=ヘンシェル・クァルテット,クァルテット・エクセルシオほかです.

自席はLb4列1番で舞台の左サイド後方です.会場は前日に続いて満席

 

          

 

1曲目のベートーヴェン「スプリング・ソナタ」は,それまでの4曲が3楽章で構成されていたのに対し4つの楽章から成ります 「スプリング・ソナタ」という愛称は,明るく爽やかな曲想から,後世の人が名づけました.ヴァイオリンの小林朋子が青緑の,ピアノの今井彩子がブロンズ色のドレスで登場します 軽やかなメロディーが会場を満たします.ベートーヴェンは交響曲も,弦楽四重奏曲もいいけれど,こういう穏やかな曲も心が休まっていいものです

2曲目のモーツアルト「ピアノ協奏曲第14番」のために,ピアノがセンターに移動し,蓋が外されます.そして,まず,バックを務める「チェンバーミュージック・ガーデン・アンサンブル」のメンバーが登場します メンバーリストを見ると桐朋学園大学卒の人が多いようです.それもそうでしょう.このコンサートの主催者はサントリーホールで,その館長が桐朋学園大学長の堤剛氏なのですから 今回のメンバーにはクァルテット・エクセルシオの4人(西野ゆか=Vn,山田百子=Vn,吉田有紀子=Va,大友肇=Vc)も加わっています.女性が多く,ドレスもブルー,イエロー,パープル,オレンジ・・・・とカラフルです

ピアニストの若林顕が登場し,客席に背を向けて指揮をしながらピアノを弾きます 20人弱の弦楽合奏は立ったまま演奏します.自席からはピアニストの左の横顔,ヴァイオリンセクションの背中を見ながら聴くという感じです

モーツアルト「ピアノ協奏曲第14番」は,彼がピアノを教えていたバルバラ・フォン・プロイヤー嬢のために作曲されました 長調の性格から曲想は明るいのですが,第3楽章などは時折,影が射してモーツアルトらしさが垣間見られます あまり有名な曲ではないためナマで接する機会が少ないので,今回は絶好のチャンスでした 演奏も軽快なテンポでよかったと思います

 

          

 

後半の最初はブラームス「弦楽六重奏曲第1番」です.私は,ブラームスの作品の中で,交響曲以外で好きなのは「ピアノ三重奏曲第1番」ですが,次に好きなのがこの曲です ブラームスが26~27歳の時の作品ですが,全体的に明るく”前進”を感じさせる前向きな曲です

演奏はヘンシェル・クァルテットの4人とクァルテット・エクセルシオのヴィオラ・吉田有紀子,そしてチェロの堤剛というメンバーです 舞台左からダニエル・ベル(Vn),クリストフ・ヘンシェル(Vn),堤剛(Vc),マティアス・バイヤー=カルツホイ(Vc),吉田有紀子(Va),モニカ・ヘンシェル(Va)という並びです.吉田は青緑の,モニカは白のドレスに身を包まれています

第1楽章のアレグロ・マ・ノン・トロッポは堤のチェロと吉田のヴィオラで始まりますが,悠然としたテンポで進められます.これぞ,理想的なテンポ ヴァイオリン,チェロが加わって渋みのある分厚い音楽が流れます ペースメーカーを務めるのはチェロの堤剛です.ヴィオラの吉田有紀子は堤を見ながら,時に右隣のモニカと目を合わせ,時に左隣のカルツホイと目で合図してニッコリ笑みを見せながら,表情豊かにメロディーを奏でていきます

第2楽章は吉田有紀子のヴィオラ・ソロで始まりますが,その哀しみを湛えた演奏を聴いて,感動で背筋が寒くなりました この人は何と素晴らしい音楽を語ることができるのか こんなに素晴らしいブラームスは滅多に聴けません

6人のソリストはそれぞれが目と目でコミュニケーションを取りながら,ある意味,楽しみながら演奏を展開していました 曲自体が素晴らしいのに加え,演奏も最上の出来でした

最後のメンデルスゾーン「弦楽八重奏曲」の準備のために椅子がセッティングし直しされます.照明が落ちて,拍手の中,チェロのカルツホイと大友肇が登場します・・・・が,後にだれも続いてきません 2人は不思議そうに入り口の方を見ていましたが,2人で優雅な音楽を演奏し始めました すると照明がまた明るくなり,同じメロディーが会場の後部の方から聴こえてきました.よく見ると,他の6人のメンバーが楽器を弾きながらゆっくりと舞台に近づいてくるのが見えました.心憎い演出です 彼らは演奏が終わると舞台に上がりスタンバイしました

演奏はヘンシェル・クァルテットとクァルテット・エクセルシオの8人ですが,舞台左から,ダニエル・ベル,西野ゆか,クリストフ・ヘンシェル,山田百子,モニカ・ヘンシェル,吉田有紀子,マティアス・バイヤー=カルツホイ,大友肇という配置を取ります

メンデルスゾーンは「弦楽八重奏曲」を何と16歳の時に作曲したと言われています.とても信じられません モーツアルトに次ぐ早熟の天才と言われる所以です 全体は4つの楽章から成りますが,全体的に明るく”疾走する喜び”とでも表現すべきスピード感のある溌剌とした曲です ソリストたちの顔を見ても,演奏するのが楽しくて仕方ないといった表情に溢れています メンデルスゾーンは,自身も演奏できたので,演奏する側に立って作曲したという側面もあると思います

この日は朝から疲れが残っていて,身体が重かったのですが,このコンサートが聴き終わってからは気分も明るく,身体も軽くなったような気がします 「良い音楽,良い演奏」は市販の薬よりもよく効く(聴く?)特効薬です

 

          

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ヘンシェル・クァルテットでベートーベン「弦楽四重奏曲第3番,7番,14番」を聴く

2012年06月17日 07時43分12秒 | 日記

17日(日)。今月に入ってから16日までに12回のコンサート,2本の映画,2回の飲み会を連日こなしてきて,身体が休まっていないという自覚があります それでもコンサートのチケットは数か月前に買ってあるので結局,疲れを押して聴きに行くことになります.まあ,好きなことをやっているわけですから自業自得ですけどね

昨夕、金曜日に続いてサントリーホール・小ホール「ブルーローズ」でヘンシェル・クァルテットによるベートーヴェン「弦楽四重奏曲」を聴きました 曲目は①弦楽四重奏曲第3番ニ長調,②同第7番ヘ長調”ラズモフスキー第1番”,③同第14番嬰ハ短調の3曲です 自席はC8列2番.センターブロックの最後列.会場は前日と同様満席です

照明が落ちてヘンシェル・クァルテットの登場です.前日と違うのは紅一点のモニカ・ヘンシェルが鮮やかなブルーのドレスで登場したことです

 

          

 

第1曲目の第3番は,作品18の6曲の中では最も規模が小さいのですが,どうしてどうして堂々たるベートーヴェンです 特に第3楽章「スケルツォ」には”運命の動機”が顔を出して驚かせたりします

前日のブログで書いたように,第1ヴァイオリンのクリストフ・ヘンシェルの”攻撃的”とでもいうべき気迫に満ちた演奏に他の3人が引っ張られていくといった感じです

2曲目の第7番は「ラズモフスキー第1番」と呼ばれていますが,ロシアのラズモフスキー伯爵から作曲を依頼されたことに由来します.弦楽四重奏曲の”英雄”版とでもいうようなスケールが大きな曲です

私の3つ前の席にチェリストでサントリーホール館長のT氏が座っていて,曲に合わせて頭を前後左右に動かしていました すぐ後ろの人はちょっぴり迷惑だったかもしりません.それでも黙っていたのは彼の正体を知っていたからかも そういえば昨年のパシフィカ・クァルテットを聴いたときも,T氏が私の前の席に座っていて,同じように頭を動かしていました 別に私はいいんですよ,私は・・・・・・

最後の第14番は7つの楽章から成りますが,すべての楽章が続けて演奏されます.ヘンシェル・クァルテットはクリストフのリードで集中力を持続させて最後まで弾き切ります

鳴り止まない拍手に,第2ヴァイオリンのダニエル・ベルが,しっかりした日本語で「本日はベートーヴェンの弦楽四重奏をお聴きいただき,ありがとうございました アンコールにバッハのコラールを演奏します」とあいさつして演奏に入りました.これが,また素晴らしい演奏で,拍手喝さいを浴びました.

このクァルテットは一人一人の演奏レヴェルが高く素晴らしいのですが,私個人の趣味から言えば昨年のパシフィカ・クァルテットの方が好きです これは比較の問題ですが,ヘンシェルの方はちょっと神経質なところがあるような気がします その点,パシフィカの方は,集中力がある一方で,自由度が高いという感じがします

今日は,午前中に身体を休めて,午後「サントリーホール チェンバーミュージック・ガーデン フィナーレ」を聴きに行きます.3日連続で「ブルーローズ」通いです

       

          

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ヘンシェル・クァルテットでベートーヴェン「弦楽四重奏曲第6番,10番,15番」を聴く

2012年06月16日 07時43分06秒 | 日記

16日(土)。昨夕、サントリーホール「ブルーローズ」(小ホール)でヘンシェル・クァルテットによる「ベートーヴェン・サイクルⅣ」を聴きました このシリーズは毎年ベートーヴェンの弦楽四重奏曲全曲を演奏するのですが,昨年,パシフィカ・クァルテットのベートーヴェンを聴いてすごく良かったので,今年も聴いてみようと思いました.曲目は①弦楽四重奏曲第6番変ロ長調,②同第10番変ホ長調”ハープ”」,③同第15番イ短調の3曲です  前期,中期,後期からそれぞれ1曲ずつを選んだ構成です.

ヘンシェル・クァルテットは,アマデウス四重奏団,アルバン・ベルク四重奏団,ラサール四重奏団等に師事,オールドバラ・フェスティバル,タングルウッド音楽祭のクァルテット・イン・レジデンスを務めました創設メンバーのクリストフ(Vn)とモニカ(Va)・ヘンシェル姉弟と,94年から加わったマティアス・バイヤー=カルツホイ(Vc)と,今年新たに加わった元ベルリン・フィル団員のダニエル・ベル(Vn)の4人がメンバーです

サントリーホールの小ホールは「ブルーローズ」という名前ですが,これはサントリーが世界で初めて交配に成功した「青いバラ」に因んで名付けたものです かつて「青いバラ」は”不可能”の代名詞として用いられていましたが,今では”奇跡”の意味を持つようになったというのがサントリーの説明です.奇跡のように新たな感動や発見の愉しみが生まれる場所として小ホールを「ブルーローズ」と名付けたとのことです

昨年のパシフィカ・カルテットのコンサート以来,久しぶりに「ブルーローズ」に入って,舞台が変わっていることにました.1年前は舞台と客席が向い合わせになっていましたが,今回は,舞台が前と左右の3方の客席に囲まれています 自席はLb2-11で,やや左サイドの前から2列目の席です

例によって「地震の際には,係員の指示に従って落ち着いて行動してください」というアナウンスが入ります それを聞きながら,多くの人が天井から吊り下げられた計16個の見事なシャンデリアを見上げ,「あれが頭上に落ちてきたら,おれの命はないな・・・・・係員の指示の前に”シャンデリア直下型地震”から逃げなくては・・・・・・」と思ったはずです

シャンデリアが,ではなくて,照明が落ちて4人の登場です.紅一点のヴィオラ,モニカ・ヘンシェルは黒のドレスに赤いショールのような軽い上着を羽織っています.男性陣は黒のスーツに赤地に白の模様の入ったネクタイを着用しています.見事に黒と赤の衣装で統一されています

 

          

 

第1ヴァイオリンのクリストフ・ヘンシェルは,他の3人よりも椅子を高く調整して中腰に近い姿勢で臨みます

最初の第6番の演奏に入りますが,最初からベートーヴェンの弦楽四重奏曲に掛けるクリストフの”気迫”を感じます 彼の気迫が他の3人に影響して演奏全体が引き締まって展開します 特に第3楽章「スケルツォ」はその典型でした.これは次の第10番の演奏でも同様で,とくに第3楽章「プレスト」は気迫溢れる演奏でした

休憩時間にロビーに出ると,大ホールでもコンサートが開かれているようで,モニターからブルックナーの交響曲の「スケルツォ」が流れていました.サントリーホールでは大ホール,小ホール同時開催ということも少なくありません

休憩後の第15番の聴きどころは,同じ第3楽章でも”病癒えた者への聖なる感謝の歌,リディア施法で~新しい力を感じて”というアダージョ楽章です この楽章は本当に素晴らしく,ベートーヴェンの神への感謝の気持ちが現われています ヘンシェル・クァルテットはそんなベートーヴェンの心情を切々と奏でていました

弦楽四重奏団は第1ヴァイオリンの,作品へのアプローチ方法によってカラーが違うような気がします今回のヘンシェル・クァルテットはクリストフ・ヘンシェルの神経質なくらいのベートーヴェンに対する畏敬の念を背景とした気迫に満ちたアプローチが特徴だと思います

今夜は彼らの演奏でベートーヴェンの弦楽四重奏曲第3番,第7番”ラズモフスキー第1番”,第14番の3曲を聴きます

 

          

 

〔追伸〕

コンサート帰りのことです.都営三田線の西巣鴨駅で降りて,家に向かって歩いている途中,片道3車線の白山通りの横断歩道を小動物が横断しているのを見ました 最初は猫かな?と思ったのですが,それにしては体が大きく顔がとんがっていて走り方も猫らしくありません そうかといって犬のようでもありません.横断歩道を渡り切ったその動物をよーく見ると,何と,タヌキのようなのです この大都会の真ん中になぜ?どこかで飼っていたのが逃げ出したのかも知れません それにしても青信号で横断歩道を渡っていた律義さには感心しました.タヌキとは言え,交通事故には気を付けて欲しいと思います

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ブラームス「クラリネット五重奏曲」を聴く~新日本フィル室内楽シリーズ「音楽家たちの饗宴」

2012年06月15日 06時58分27秒 | 日記

15日(金)。昨日の朝日朝刊第2東京面に「選挙アンプもPCも自作、与謝野馨さんと歩く電気街」という記事が載りました。記事によると、衆議院議員の与謝野馨さんは四半世紀以上にわたって秋葉原に通い、趣味でアンプやパソコンを手作りしてきたとのことです

あの与謝野さんが秋葉原通いをしてアンプを手作り・・・・・以外な感じがして、同時に親近感を覚えました 私も昔,アンプはともかく小さなスピーカーを手作りしたことがありますので

 

  閑話休題  

 

昨夕、すみだトリフォニーホール(小)で新日本フィル室内楽シリーズ「音楽家たちの饗宴・第8回」を聴きました 曲目は①ドホナ―ニ「弦楽三重奏のためのセレナード ハ長調」、②ブラームス「クラリネット五重奏曲ロ短調」の2曲です

新日本フィル第2バイオリン奏者・篠原英和さんによる「プレトーク」もこの日が今シーズン最後です 昨年の9月から「ブラームスの愛した人,もの,土地」のテーマで軽妙洒脱なトークを展開し,われわれ聴衆を楽しませてくれました 私など,半分は篠原さんのプレトークが聴きたいがためにシリーズ会員になっているようなものです.この日も絶好調のトークで聴衆の心を掴んでいました

 

          

 

さて,1曲目のドホナー二「弦楽三重奏のためのセレナード」を演奏するのは,砂畑佳江(ヴァイオリン),木村恵子(ヴィオラ),矢野晶子(チェロ)の面々です 砂畑は淡いパープル,木村はグリーン,矢野は淡いグリーンのドレスで登場します ドホナー二はハンガリー出身とのことですが,あまり馴染みがなく,この曲も初めて聴きました 同じハンガリーのバルトークほど”あく”が強くなく比較的聴きやすいのですが,それだけに強烈な特徴がないのでメロディーをすぐに忘れてしまいます

休憩時間にコーヒーを飲んでいると,私服に着替えた篠原さんがワイン片手に立っていらっしゃるので,意を決して話しかけてみました

tora「篠原さん,こんばんは.私はtoraのブログを書いているSと申します.いつもプレトーク楽しみにしております

篠原「初めまして.ありがとうございます.ブログを拝見しています.時々コメントを寄せさせていただいています.思ったよりお若いですね」

tora「毎回,豊富な知識を披瀝しておられて,よくもあれ程まで詳細に調べてお話されていると感服しております

篠原「いやいや,毎回にわか勉強ですよ.でも,ブラームスについていろいろ調べていると,知られざるブラームスを発見できたりして面白いですね

tora「とても,にわか勉強とは思えません.篠原さんはブラームスがお好きなのでしょうね」

篠原「もう,大好きです

tora「これからもよろしくお願いします

篠原「こちらこそ,よろしくお願いします

ということで,生まれて初めてオーケストラのプロの演奏家とお話しして感激したレポートでした

さて,2曲目のブラームス「クラリネット五重奏曲ロ短調」を演奏するのは,澤村康江(クラリネット),澤田和慶,深谷まり(ヴァイオリン),高橋正人(ヴィオラ),多田麗王(チェロ)です.澤村は黒のドレス,深谷はカキ色のドレスで登場します

澤村はプログラムに「この曲は学生の頃憧れだった」と書いています.クラリネット特有の深い音色と弦楽四重奏による”渋い”曲です

この曲の聴きどころは,篠原さんがお話されていたとおり第2楽章「アダージョ」です.クラリネットの曲で素晴らしいのはモーツアルトのクラリネット協奏曲とクラリネット五重奏曲ですが,ブラームスの五重奏曲はそれに匹敵する深みのある曲です 弦楽のバックに支えられて澤村は深い演奏を展開していました

ところで,私の席は8列1番で,左端なのですが,舞台上の5人の奏者で一番右に座る澤村と私の席を結ぶ対角線上に,座高の高い男性が座っていて,彼女の姿が見えないのです せっかく良い席をとってもこういう人が前にいると,曇天下のスカイツリー状態になって,視界ゼロの残念賞になってしまいます.こういうことは座席を指定する時には分からないので不運としか言いようがないですね

何はともあれ,今回今シーズン最後の演奏会でしたが,新日本フィルの篠原さんと初めてお話が出来,思い出深い演奏会になりました

次のシーズンの前半は10月24日(水),12月4日(火),2013年1月29日(火),3月7日(木)という日程で午後7時15分開演になっています 一般発売は6月30日(土)からで,1回券=3,000円,前半4回連続券=10,800円です.毎回,篠原英和さんによる楽しいプレトークが午後7時からあります.是非お薦めします

 

          

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ザ・シンフォニカ,ベルリン芸術大学,新日本フィル~7月のコンサート・チケットを買ったぞ!

2012年06月14日 06時59分08秒 | 日記

14日(木)。昨日、わがビル内の会議室で某社の株主総会があり、その社向けのアピールのため業種を横断した労組の人たちが街宣活動に来ました 何の目的か分からないので歩道で配布しているビラをもらいに行きました。すると、その中の一人が私を見て「どこかで見たことがある。私はNといいますが、高校はどちらでした?私はK高でしたが」と訊くので「T高です。でも、Nという名前は覚えています」と答えると、「じゃあ、中学は?私はS東中ですが」と訊くので「S西中です」と答えました。「じゃあ、小学校だ」、「I小学校ですね」、「そうです」ということで、どうやらわれわれは小学校時代の同級生であることが判明しました 49年ぶりで再会したことになります 驚くのは、49年もの年月が経っているのにもかかわらず、私の顔に小学校時代の面影を認めて声をかけてくれたことです 私の方も、I小学校にいたN君の名前は覚えており、当時の彼の顔を思い浮かべることが出来たのですが、目の前のN君が元の原形を留めない「別人28号」になっていたので、教えてもらわなければ気がつきませんでした もし,いま逃走中のオウム真理教・T容疑者が同級生で,N君に再会したらたちどころに発見されて通報されていたでしょうね

O.ヘンリの短編小説に「20年後」という傑作があり、男二人が20年後にある場所で再会しようと約束し、全く反対の立場となって再会する話ですが、高校の時に英語の授業で習ったのを覚えています われわれの場合も、N君が労組の街宣活動、私がビルの管理ということで、全く反対の立場での再会ですが、こちらは「49年後」です。長いこと生きていると、こういうこともあるものですね

 

  閑話休題  

 

昨夕は、急きょ、テナント0の開業10周年記念パーティーの打ち合わせが入り、地下の焼き鳥0で飲みました テナント0が8時まで営業している関係で、当社側のS監査役、E部長と私は一足先にお店に行き飲んで時間をつぶしました 約2時間のギャップでわれわれサイドは出来あがってしまいました その後,N医師,W薬局ご夫妻,0店長を交えてパーティーの日程調整などをしましたが,肝心のテナント0の0医師は顔を出しませんでした 間接的な話によると今度の日曜日に講演を控えているので準備で大わらわとのことでした.主人公不在のままわれわれは10時過ぎまで3時間半も飲んでいたことになります.なんてこったい

 

 も一つ閑話休題  

 

7月にあるコンサートのチケットを買いました 1枚は7月15日(日)午後2時から文京シビックホールで開かれるザ・シンフォニカ第52回定期演奏会です 指揮は大山平一郎.プログラムは①ブリテン「青少年のための管弦楽入門」,②R・シュトラウス「交響詩:ドン・ファン」,③ブラームス「交響曲第4番ホ短調」の3曲です.これは前回の定期演奏会を聴いて良かったので,とくにブラームスを聴きたくて買ったものです 全自由席2,500円.

 

          

 

次は7月26日(木)午後7時から東京芸大奏楽堂で開かれる東京芸大交流演奏会”世界の芸術大学~ベルリン芸術大学とともに~”です プログラムは①モーツアルト「オーボエ四重奏曲」,②ベートーヴェン「ピアノ三重奏曲第4番」,③シュポーア「大九重奏曲」ほかです.これはモーツアルトを聴くのが第一目的ですが,案外シュポーアが面白そうです 全自由席2,000円.

 

          

 

3枚目は7月29日(日)午後2時からすみだトりフォニーホールで開かれる新日本フィルのサマー・コンサート「世界をめぐる音楽の夏旅」です 指揮は小松長生.曲目は①ベートーヴェン「第6交響曲」から第1楽章,②スメタナ「わが祖国」より「モルダウ」,③グローフェ「グランド・キャニオン」より「山道を行く」,④ファリャ「恋は魔術師」より「火祭りの踊り」ほかです.これは1回のコンサートで世界中の音楽が楽しめます 料金はS:5,000円,A:4,000円,B:3,00円,学生1,000円.なお,墨田区に在住・在勤の人はS席4,000円です

 

          

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天吾と青豆の行方は?~村上春樹著「1Q84 BOOK3前編・後編」を読む

2012年06月13日 06時55分25秒 | 日記

13日(水)。昨日の新聞各紙に「ドコモ、タワーレコードを子会社化」の記事が載りました 記事を総合すると、

「NTTドコモは7月中旬にタワーレコード(東京・渋谷)に追加出資して子会社化すると発表した。ドコモはスマートフォン向けの自社サイトで、タワーレコードのDVDやCDを販売する。取得額は数十億円とみられ、これにより50.3%の株を握る筆頭株主となる」

業態を超えた業務提携は今後も増えていくと思います ドコモ生き残りをかけた競争をしているわけですから、それはそれでいいのですが、渋谷と新宿にあるタワーレコードのCDショップは何としても残してほしいと思います 私は現物を見て買う主義なので

 

  閑話休題  

 

村上春樹著「1Q84 BOOK3前編」「同・後編」(新潮文庫)を読み終わりました

BOOK2までは青豆,天吾が交互に主人公になって登場するパターンでしたが,この回から牛河が加わり,牛河,青豆,天吾の順で物語が展開していきます まずは前編の話.

牛河は,宗教団体「さきがけ」のリーダーを殺害した青豆の行方を追求する2人の男から,青豆を探し出すよう依頼されます.そして彼は青豆と天吾が小学校時代に同級生だったことを突き止め,ついに天吾の住むアパートの監視を始めます

青豆は殺人の依頼者である老婦人の計らいで隠れ家に潜んで暮らしています.そしていつしか青豆は小さな命を宿します.一方,天吾は意識不明になっている父親を”猫の町”に見舞いに行き,本を読み聞かせをします.さて,二人の出会いはあるのか・・・・・

いつものように,私が興味があるのは,この小説の中に現われるクラシック音楽です

最初に登場するのは「青豆」の物語,ヤナーチェックの「シンフォニエッタ」です.この曲はBOOK1の物語の冒頭,青豆がタクシーに乗っているときにラジオから流れてきた曲です.このBOOK3前編では63ページから64ページにかけて出てきます

「ヤナーチェックの”シンフォニエッタ”の入ったカセットテープを手に入れなくてはと青豆は思う.運動するときに必要だ.あの音楽は私をどこかにー特定はできないどこかの場所にー結びつけている.何かへの導入の役目を果たしている」

次に登場するのも「青豆」の物語で,老婦人から青豆に届けられた荷物の中に入っていたカセットテープの話です(115ページ).

「音楽も聴いた.老婦人はクラシック音楽のカセットテープを段ボール箱に詰めて届けてくれた.マーラーの交響曲,ハイドンの室内楽,バッハの鍵盤音楽,様々な種類と形式の音楽が入っていた.彼女が頼んだヤナーチェックの”シンフォニエッタ”もあった.一日に一度”シンフォニエッタ”を聴き,それに合わせて激しい無音の運動をした」      

次に出てくるのもヤナーチェックです.「牛河」の物語で,牛河が天吾の通っていた小学校の当時の担任教師から彼の話を聞き出すシーンです(260ページ).

「ヤナーチェックの”シンフォニエッタ”.簡単な曲ではありません.天吾くんはその数週間前までその楽器に手を触れたこともなかったんです.しかし即興のティンパ二奏者として舞台に立ち,見事に役を果たしました.奇跡としか思えません

最後に出てくるのは,やはり「牛河」の物語です(327~328ページ).

「良い考えが浮かばないとき,牛河はいつもぬるめの長風呂に入ることにしていた・・・・・・ラジオでシベリウスのヴァイオリン協奏曲を聴いた・・・・ラモーのコンセールが流れていればそれを文句を言わずに聴いただろうし,シューマンの”謝肉祭”が流れていればそれを文句を言わずに聴いただろう そのときたまたまFM放送局はシベリウスのヴァイオリン協奏曲を流していた.それだけのことだ・・・・・・ダヴィッド・オイストラフの演奏するシベリウスの音楽は,まさにその空っぽの領域を通り過ぎていった・・・・・シベリウスの協奏曲はおよそ30分で終了した ちょうど良い長さだ.次の曲はヤナーチェックの”シンフォニエッタ”ですとアナウンサーは告げた.ヤナーチェックの”シンフォニエッタ”という曲名にはどこかで聞き覚えがあった.しかしどこでだったかは思い出せない

著者が書いているように作曲者のシベリウスも,演奏者のオイストラフもその当時は鬼籍に入っていましたが,著者があえてオイストラフを持ち出したことに興味があります.アイザック・スターンでも良かったろうし,ヤッシャ・ハイフェッツでも良かったはずです

 

          

 

さて,ここからが「後編」の話です.

牛河は天吾の見張りを続けますが,老婦人のボディガードであるタマルによって”知りすぎていた”ことから消されます 天吾と青豆はついに公演の滑り台の上で出会い,いっしょに,月が2つ出ている1Q84年の世界から脱出を図ります さて2人の運命は・・・・・

「後編」の中に出てくるクラシック音楽は1か所しかありません.天吾の物語で,天吾の父親が霊柩車で運ばれるシーンです(237ページ).

「そこにはおごそかな要素はまったくなかった.”神々の黄昏”の音楽も聞こえてこなかった」

たったこれだけです.「前篇」との落差が大きすぎて実に寂しい思いです 次のBOOK4に期待したいと思います

 

          

 

          

 

 

 

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明日のオペラ界を担うソプラノ歌手~モイツァ・エルトマンのソプラノリサイタルを聴く

2012年06月12日 06時58分36秒 | 日記

12日(火).昨夕,元の職場のOB会総会の開催通知を発送するため”残業”しました.その後,OB会幹事のS監査役,元職場OBのM氏と地下のRでご苦労さん会をやりました.ビールを飲んで,ウーロンハイを飲んでいると,2階のテナントS社のF氏が,なぜかS急便の女性とともにやってきて,われわれのテーブルの近くで飲み始めました M氏とF氏の丁々発止のやり取り(別の言葉でいうとケンカ腰)を聞いていて,付き合っていられなくなったので9時半ごろF氏とS急便女史を置いて先に失礼しました.それにしても,巨体F氏の靴を見てました.私のは26センチですが,確実に30センチ以上ありましたその後,われわれ3人は隣のHKビル地下のSで飲み見直しました S監査役とM氏は今日休みだからいいけど,こちとら仕事だぜぃ,朝から”頭が頭痛”だ・・・・・・だから酒は嫌いだってんだ

 

  閑話休題  

 

一昨日の日曜日,初台のオペラシティ・コンサートホールでモイツァ・エルトマンのソプラノ・リサイタルを聴きました

この日は午前10時からマンションの管理組合の定期総会がありました.議案が9つもあり,これまでの実績を勘案すると2時間では終わらないと懸念したのですが,年に1回の総会なので出席しました 案の定,お金が絡む問題で議論百出し議案の審議が終わったのは12時半を過ぎていました.さらに議案にはない話が出されたので,途中で退席して,急いで初台のオペラシティ・コンサートホールに向かいました.何とか午後2時の開演に間に合い,一安心しました

 

          

 

リサイタルは2部構成で,第1部はメンデルスゾーンとモーツアルトの歌曲,第2部はオペラのアリアとなっています 会場は8~9割が埋まっています.自席は1階6列12番で,かなり前の席です.エルトマンの姿をできるだけ近くで見て聴きたいからです

モイツァ・エルトマンはドイツのハンブルク生まれ.ハンブルク国立歌劇場の児童合唱団で歌い,ケルン音楽大学に進みます.大学では声楽のほかにヴァイオリンも学びました.最近ではバイエルン国立歌劇場で「こうもり」のアデーレ役で出演するなど活躍しています

時計の針が2時を回り,果たしてエルトマンはどんな姿で登場するのか,と期待が高まります 舞台左手の扉が開かれ,エルトマンが鮮やかなブルーのノースリーブのロングドレスで登場します.ピアノはゲロルト・フーバーです

ピアノの導入によってメンデルスゾーンの歌曲が始まります.「初すみれ」「花束」「ふたつの心が離れる時」「ズライカ」「あいさつ」「歌の翼に」「新しい恋」の7曲を続けて歌います 私は「歌の翼に」しか知りませんが,彼女の声を聴いた第一印象は”透明な声”です メンデルスゾーンが歌い終わったところで一区切りです.初めて聴衆は拍手で彼女を称えます

続いてモーツアルトの歌曲に移ります.「ルイーゼが不実な恋人の手紙を焼いた時」「すみれ」「昨夜の想い」「静けさがほほえみながら」「寂しい森の中で」「魔法使い」の6曲を続けて歌います こちらの方は,何度かCDで聴いたことがあるのでお馴染みの曲です.とくに「すみれ」と「ゆうべの想い」が心に沁みました

 

          

 

休憩後は,オペラのアリアです.最初はモーツアルト「イドメネオ」より「私の悲惨なこの運命はいつ終わるのだろう?」です.このアリアは第1幕でイリヤが歌うアリアですが,彼女はイリヤになりきって感情を込めて歌い上げます

2曲目はモーツアルト「ツァイーデ」より「虎よ!爪を研げ」です.この曲はエルトマンの最新CDに入っているので予習してあります エルトマンはピアノのフーバーからコップを受け取り,水を3分の1ほど飲み干して,この難曲に臨みます ここでも彼女はヒロインのツァイーデになりきって皇帝に立ち向かうアリアを歌い上げます

ここで,圧倒的なブラボーと拍手が会場を満たし,エルトマンはフーバーと共に一旦舞台袖に引き上げます.そして,再度登場してプッチーニの「ラ・ボエーム」より「ムゼッタのワルツ”私が街を歩くと”」を歌います この曲を聴くまで,エルトマンはモーツアルトが最も得意で,彼女に向いている,と思っていたのですが,考えが変わりました これほどまでにプッチーニを見事に歌うことができるとは思ってもいなかったのです.とにかく魅力に溢れた歌唱力です

次いで,ベッリーニの「カプレーティとモンテッキ」より「こうして私は晴れの衣装を着せられ~ああ幾たびか」です.これも,切ないメロディーを感情を込めて歌い上げました

ここでまた,コップの水を飲んで最後の曲に臨みます.ドニゼッティ「ドン・パスクワーレ」より「あの目に騎士は~わたしも魔の力を知る」です.ピアニストからリボンにくるまれた手紙を受け取り,歌いながらそれを広げます.リサイタルの小道具ですね レチタティーヴォが終わってその手紙を手で破り捨て,アリアに移ります.このアリアものびやかな無理のない美声で気持ち良く歌い上げます

歌の実力よりも,その美しい容姿で人気があるエルトマンですが,実際にナマで聴くまでは彼女の実力は判断しないことにしていました 今回,実際に彼女の歌声を身近で聴き,彼女は「本物」だということを認識しました 評価の高いモーツアルトに限らず,プッチーニ,ベッリーニ,ドニゼッティといったイタリアのベルカント・オペラも,役になりきって素晴らしい歌声を聴かせてくれました

このリサイタルで忘れてはならないのはピアノ伴奏を務めたゲロルト・フーバーです エルトマンの歌によく伴奏を付け,出すぎることなく,かといって何の不足もなく,しっかりと役割を果たしていました

会場一杯の拍手とブラボーに,アンコールを結局3曲歌ってくれました.最初はプッチーニ「ジャン二・スキッキ」から「私のお父さん」,次にヨハン・シュトラウスⅡ「こうもり」から「公爵様,あなたのようなお方は」,最後にレハール「ジュディッタ」から「私の唇は熱いキスをする」です このアンコールも熱唱で,拍手が鳴りやみませんでした

生まれつきの美貌と天性のリリック・ソプラノ,彼女は明日のオペラ界を担うソプラノ歌手の有力候補であることに間違いありません 

サイン会があると予想して,以前買って持っていた彼女のCD「モーストリー・モーツアルト」を持参して,サイン会の列に並びました.すでに40メートル位の列が出来ていましたが,後ろを振り返るとさらに50メートル以上の列がつながっていました今度は是非オペラで歌う彼女を見たいと思います

 

          

          美人を前にしてつい手が震えて・・・・・ではなくて,シャッターの

          遅いケータイ・カメラではボケの状態にしか映せませんでした

          

          

          

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コチシュの弾き振りでモーツアルト「ピアノ協奏曲第17番」を聴く~東響サントリーシリーズ定期演奏会を聴く

2012年06月11日 06時46分00秒 | 日記

11日(月).昨夕のNHK・Eテレの「ららら♪ クラシック」を途中から観たら,ドイツの指揮者・ギュンター・ヴァントがN響を振ってベートーヴェンの第5交響曲を演奏するシーンが映し出されていました ヴァント+N響と言えば忘れられない演奏があります

もう20年以上前のことです.N響定期演奏会でヴァントの指揮でモーツアルトの「ポストホルン」セレナーデを演奏したのですが,しっかりした音楽作りの中にもモーツアルトらしい愉悦感が溢れていて,しばらく口をきけないほど感動したことを覚えています 猫背のおじいさんの指揮から何と素晴らしい音楽が流れてくることか・・・・・・それ以来ヴァントのファンになりました

 

  閑話休題  

 

一昨日の土曜日,午後3時からの東京フィル文京シビックシリーズ・コンサートに続いて,午後6時からサントリーホールで東京交響楽団の第601回定期演奏会を聴きました 指揮はゾルタン・コティシュで,演奏曲目は①R・シュトラウス「マクベス」,②モーツアルト「ピアノ協奏曲第17番ト長調K.453」(ピアノと指揮:コチシュ),③バルトーク「管弦楽のための協奏曲」の3曲です

オーケストラは通常の東響とは違いヴィオラとチェロが入れ替わり,向かって左から第1ヴァイオリン,第2ヴァイオリン,ヴィオラ,チェロ,その後ろにコントラバスという編成をとります.これは指揮者コチシュの指示によるものです

最初のリヒャルト・シュトラウスの「交響詩:マクベス」は,彼の7作ある交響詩のうち最初に着手された作品です.シェイクスピアの書いた悲劇的な戯曲を,R.シュトラウスは色彩感豊かな壮大な曲に仕上げました

高木和弘コンサートマスターの元,フル・オーケストラがスタンバイして,指揮者コチシュの登場です.描いていたイメージとはまったくかけ離れていてびっくりです.痩せて精悍な顔つきのスリムな男性をイメージしていたのですが,目の前に現われたのは,白髪で赤ら顔の長身の中高年太りの男性でした

何でもかんでも音楽にしてしまうのがR・シュトラウスの特徴ですが,コチチュの指揮する「マクベス」の音楽を聴く限り,絵画的な,あるいは映画音楽のような曲想です.R・シュトラウスの意気込みを感じます

次のモーツアルト「ピアノ協奏曲第17番K.453」の演奏のために舞台左サイドに控えていたピアノがセンターに移動します.コチシュがピアノを弾きながら指揮をするため,ピアノが縦にセッティングされます.つまり指揮者は聴衆に背中を見せて座ることになります.オーケストラは,規模を縮小し弦楽器,管楽器合わせて27人編成となります

このK.453はウィーン時代,モーツアルトが教えていたピアノの生徒バルバラ・フォン・プロイヤーのために書かれました.彼女の父親はザルツブルク宮廷のウィーン駐在員で,自らオーケストラを雇うほど音楽好きだったようです

コチシュの合図で第1楽章「アレグロ」が快調なテンポで始まります.コチシュのカデンツァは聴きものでした 第2楽章は,最初のうちはピアノの出番がないので,コチシュは立って指揮をし,ピアノの出番になると座って演奏します.第3楽章「アレグレット」はまるで魔笛のパパゲーノが出てきて歌い出しそうな楽しい曲想ですが,コチシュはそんなモーツアルトを楽しんで演奏しているようでした

曲が終わると会場一杯の拍手とブラボーが寄せられました.コチチュはオーケストラを立たせようと合図しましたが,コンマスの高木が立たず指揮者兼ピアニストに拍手を送るので楽員も従います.コチシュは何度もお辞儀をして,やっと高木を立たせ,オケの面々も立って賞賛の嵐に応えました

休憩後のバルトーク「管弦楽のための協奏曲」は,バルトークがアメリカに亡命したあと,指揮者クーセヴィツキーが,自身の生誕70年と,ボストン交響楽団の指揮者就任20周年を祝うために作曲を依頼したことから書かれました

私はバルトークの作品の中ではこの曲が最も好きで,ジョージ・セルによるCDでよく聴きました コチシュは他の2曲と同様,暗譜で指揮をします.第1楽章「序章」,第2楽章「対の遊び」,第3楽章「悲歌」,第4楽章「中断された間奏曲」,第5楽章「終曲」からなりますが,コチシュは緩急自在,色彩感豊かにバルトークの世界を表出させていました.第5楽章のフィナーレの高揚感は何度聴いても興奮します

拍手とブラボーが鳴りやまなかったのは当然です.何回も舞台に呼び戻されたコチシュはコンマスの高木に「これで解散」と伝えたようですが,聴衆が帰ろうとしないので,オーケストラは立ったまま指揮者を待ちました.コチシュは満面の笑みで応えていました

というわけで,私の頭の中で「白髪で赤ら顔の中高年太り」というイメージは打ち消され,「シルバーグレイのナイス・ガイ」というイメージが打ち立てられました

ところで,最後の最後に残念なことがありました.終演後,拍手が続いている時のことです.私の席の3列前のセンター席に座っていた若い女性がケータイ・カメラで舞台を撮影していたのです すぐにホール係りの女性が飛んできて注意を促しましたが,彼女が引き上げるとまた撮影を始めたのです また,係りの女性が飛んできて注意をして,やっと諦めました

私の推測はこうです・・・・あの席は多分招待席で,招待された人が急に来られなくなって,家族か知人に譲った.普段コンサートに行ったことがない彼女は物珍しさに思わずケータイを取り出して撮影した.あとで友達に”ねえねえ,わたしさあ,サントリーホールに行ったんだよ.ほら,オーケストラ映っているでしょ”と自慢する・・・・さしずめこんなところでしょう

「会場内ではケータイの電源は切ること,写真撮影は認められないこと」はどのホールでも事前にアナウンスしています こういうのは人に迷惑がかかるとかいう以前の問題です.マナーが守れない常識外れの人にはコンサート会場に来てほしくないと思います さらに会場のサントリーホールには,もっと厳しく対処してほしいと思います.撮影したホール内の映像は消去させるなど,2度と同じ過ちを犯さないように思い知らせるべきです

 

          

            プログラム6月号の表紙はクリムトの「婦人の肖像」

          

 

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