レイキャビク西街ひとり日誌 (Blog from Iceland)

北の小さな島国アイスランドはレイキャビクの西街からの、男独りブログです。

アイスランド女性牧師「闘争史」

2015-03-15 05:00:00 | 日記
アイスランドは名だたる男女同権国です。世界経済フォーラム(WEF)のランキングでは六年連続で世界一位となっています。だいたい北欧の国がトップを占めていますね、毎年。

もちろんそうなるにはそれぞれの分野で、職場で、それなりの闘争がありました。権利は勝手に歩いてきてはくれないですよね。そのアイスランド国民教会編です。

アイスランドの国民教会で最初に牧師となった女性はオイズル・エイル・ヴィルヒャウルムルドティールさんという方です。1974年のことでした。その当時のアイスランドはまだ、国民の九割以上が国民教会に属するという「モノ宗教国家」でした。当然、教会に関わる事柄の見方もそれほどバラエティがあったわけではないようです。

オイズルさんが牧師になった時のモルグンブラウジィズ紙に、「同僚?」牧師へのインタビューがあったようですが、中には「これは精神的なKynvillaだ」というものがあったそうです。

Kynvillaというのはkynが「性」villaが「間違い」「誤り」を意味し、かつてゲイの人たちのことを指して使われた蔑称です。つまり「女が男の仕事につくのはどこかいかれてんだ」というひどい意見なわけです。

同僚にして先輩でもある牧師が新聞紙へのインタビューにそういう返事をしたのですから、どのような空気であったのか想像できるでしょう。決して諸手を挙げてもらって迎えられたわけではなかったのです。

実際にそれっ!と後続が押し寄せたたわけではなく、二番目の女性牧師が誕生したのは、オイズルさんの按手(牧師となる儀式)の七年後の1981年になってからでした。

そして新たに牧師となった女性は、なんとオイズル牧師の娘さんのダトラさんだったのです。ダトラさんは北西部フィヨルド地方のビルドゥダールルという町の教会に赴任しました。

「お母さんが牧師に就任した時に比べて、何か違いはありましたか?」というモルグンブラウジィズ紙の記者の質問に、「大勢に変化はなかったと思いますが、それは時間がかかりますからね。でもいくつかの言葉遣いなどが変わりました。

以前は教会仲間の人たちのことをBraedur「兄弟」と呼んでいたのがSystkini「兄弟姉妹」に、「みんな」を表す言葉が説教などでAllir(文法的に男性の集団を示します)が使われていたのがOll(男女混合の集団を示します)に変わりましたからね。言葉は社会のものの見方を反映しますからこれは大事なことだったと思います」

それから十年ほどしてから私がアイスランドにお目見えしたのですが、その時には女性牧師は一ダース(なんてぶっ飛ばされるかも?(^-^;)くらいはいたと思います。

さらに二十年ぶっ飛んで昨年の2014年ですが、この年は最初のオイズル女性牧師が誕生してから四十周年にあたりました。そこに至るまで、1998年から2012年までの期間−この期間はK ·シーグルビョルンスソン監督の時代ですが−33人の男性牧師が誕生したのに対して、女性牧師は36人按手を受けています。逆転。さらにそれ以降の二年間では男性牧師6人に対して女性牧師7人の誕生となっています。

アイスランドでは牧師は一生牧師ですので(日本では違います)、今現在の男性牧師数と女性牧師数を比べるのは難しいです。亡くなった方や、海外へ移った人もありますから。

ですが、過去二十年間の誕生牧師数がだいたい半分半分くらいということは、少なくとも現役牧師層に限っていえば半々に近着いていると言ってよいでしょう。




アイスランド初の女性監督となるアグネス牧師(中央)
右は四十一年前、初の女性牧師となったオイズル牧師
−Myndin er ur Kirkjan.is-


さて、オイズルさんの娘のダトラさんですが、この人は(ちなみにお母さんは引退されましたが、娘さんはまだまだ現役です)1995年に女性として初めてディーンという地区の主席牧師に就任し、さらに1998年には教会カウンセルという中枢機関の委員にこれも女性として初めて選ばれています。

その前年で1997年には全国牧師教会の会長にヘルガ ·ソフィアさんが八十年の歴史で初めての女性として選ばれました。

さらにこの四年間ほどでますます女性パワーがアップします。2012年に初の女性監督(ビショップ)にアグネス ·シーグルザードティール牧師が就任。翌年にはふたりいる副監督のひとりにソルヴェイ ·ラウラ ·グビューズムンドゥルドティール牧師が就任。三人の監督のうちのふたりが女性となりました。

そして今年。首都地区にはディーン地区が三つあるのですが、そのひとつの地区のディーンに、ソウルヒルドゥル ·オーラブル牧師が二月に就任。そして三月中に、もうひとつの地区のディーンに先も登場したヘルガさんが就任することになっています。ここも三人のなかのふたりが女性化。

以前に書いたことがあるのですが、私は女性牧師大好きです!っていうと好色牧師か?と疑われそうですが、そういう意味ではなく高く評価しています。もちろん人によって違いますよ。でも総じて質が高いと思います。

さらに、これが大事なのですが、私にとって共に働きやすいのです。アイスランドの男性牧師のマッチョ志向は伝統的なものなのかもしれませんが、私のようにアジア系移民は同僚牧師として考えたくないのか、「俺の方がお前より上だぞ」という露骨な態度を示してくることがあります。

(ついでにいいますが「こっちも優秀だよ」ということを、私がどんどん証明してくると、それが余計に気に入らなくなるようです。これはローカル X 移民の宿命かも?)

それに対して女性牧師は一般にオープンで、快く迎えてくれます。どうも女性の方が変化に対して柔軟に対処でき、新しい環境や考え方を受け入れやすいように思えます。実際、前の監督の時と今のアグネス監督では私に対する目線の角度が全然...なんて言い始めると喧嘩になりますからやめておきます。

というわけで、ワタシ的には女性牧師の躍進大歓迎です。もっと来い来い!


友人が仲間とオーロラを撮影しフィルムを編集し商品化しています。もちろんプロです。サンプルを見て、気にいるようでしたらぜひ購入してあげてください。四月の始めに続編が登場するそうです。

オーロラのフィルムはこちら。


応援します、若い力。Meet Iceland


藤間/Tomaへのコンタクトは:nishimachihitori @gmail.com
Home Page: www.toma.is


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