カメハメハーン・ストームのシリーズがやっと静まってくれ、一息つくことのできた先週のレイキャビクでした。気温はグッと下がり氷点下になりましたが、風はなく静かで陽の降り注ぐ日が幾日か続いてくれました。ありがたや。
癒しの山 エイシャのはずが...
前々回、西部フィヨルドのフラーテリでの雪崩のことを書きましたが、先週はレイキャブビクの郊外のEsjaエイシャという山でも雪崩がありました。ハイキングをしていたのか、三人の人が巻き込まれてしまいました。
うちひとりが雪に飲まれ、駆けつけたレスキューに二時間後に救出されたのですが、搬送された病院で残念ながら亡くなってしまいました。若い青年でまだ二十三歳だったといいます。
エイシャというのは、東京で言うと高尾山的な気楽なハイキングコースです。私にとっては「癒しの風景」でもあり、眺めるのが大好きな山なんです。そんなところで雪崩に巻き込まれ、命を落としてしまうとは、なんともいえない悲しさと「なんで?」感を覚えてしまいます。「ご冥福を祈ります」としか言葉がないですね。
前回取り上げたYoutubeのカメラ関係のビデオについての紹介は、ちょっと先送りにして、今回はアイスランドのもうひとつの自然の力について書かなくてはなりません。
アイスランドの国旗をご存知でしょうか?青地に白の十字架が横たわり、その白地の上にさらの赤の十字架がかぶさっています。
説明によると、青は空と海を象徴し、白は氷河を表しています。残るは赤ですが、これは….?そうです。火山の火を示すのだそうです。実は赤は「雪」「氷」をも表すらしいのですが、私は「理屈」に破綻しました。なんで?(^-^;
今回は雪崩の「白」ではなく、火の「赤」の話しです。
ストームと雪崩に悩まされている新年のアイスランドですが、先週新しい「怪物」が出現してしまいました。いや、まだ出てきてはいないか?それは「火山活動」です。
先週の日曜日だか月曜日だったの思うのですが、気象局がレイキャネス地方に「火山活動に関してのOvissustigurオウビッススティーグル」という警報を発令しました。
レイキャネス地方 今回のニュースより
Myndin er ur Ruv.is
Ovissustigurというのは文字通りにはUncertain stageとか「不確定の段階」という意味なのですが、この脈絡で使われる時は「非常な用心を必要とする段階」という意味になります。
説明によると、レイキャネス地方の観測点において、地震活動が継続して記録されていること、地表の隆起が一日につき3-4ミリと平均よりかなり高く、短い期間で2センチに達していること、等から警報の発令に至ったとのこと。
これらの地下活動の中心にあるのが、Thorbjornソウルビョルンという山のようです。この山自体は火山ではないのですが、マグマ活動のベルト地帯の上にあるのだそうです。
この地帯での火山活動は、今から780年くらい前に収束していたそうです。逆に言うと「そろそろ来てもおかしくは…」という頃合いなのだとか。専門外のことですので「だそうだ」「ということらしい」という言葉が多くなりますが、ご容赦。
で、このレイキャネス地方。どこにあるのか?と尋ねられる方もあるかと思います。これが最北の山の果てではないのです。ケフラビク国際空港があるところから、ほんの数キロのあたりにこのThorbjonの山が存在します。
空港のあるあたり一帯の半島が「レイキャネス半島」と呼ばれる地域なのです。アイスランドにいらしたことのある方ならば、空港からレイキャビクへ至る国道沿いの、あの殺伐とした溶岩地帯の光景を思い出していただけるかもしれません。
溶岩原野の風景 この山はThorbjornではなくKeilir
Myndin er ur Ruv.is
あの溶岩を噴出したのと同じ火山地帯が活発化しているらしいのです。
さて、ケフラビク国際空港よりも、さらにソウルビョルン山の最寄りにあるのがグリンダビクという町です。レイキャビクから来たとして、あの観光名所のブルーラグーンへ行く道に入り、さらに奥に進んで海岸線に出るあたりまで行き着いたところのある町です。
人口は3300人ほど。漁業と水産業が中心の町だったと思います。以前、日本人の男性の方が住んでいらしたのですが、数年前に病気で亡くなってしまいました。
そのグリンダビクでは、この警報の発令を受けて町をひっくり返したような騒ぎになったようです。月曜日には町の体育館で住民への説明と対策のためのタウン・ミーティングが持たれました。
ニュースや新聞で見た限りでは、「ゴジラが町へ向かっている」かのような雰囲気だったですね。実際に車に避難用の荷物を積み込んで、いつでも脱出できるようにしている人も少なくないようです。
無理はないです。自分の町に、通りに溶岩が流れ込んでくる、というのはアイスランドでは決して「想像上のこと」ではないのです。
今から三十七年前の1973年1月23日の真夜中、ヴェストマン諸島の中のヘイマエイという島では火山の噴火と溶岩の町への流出の故に、5000人余りの島民のほとんどが、「その夜のうちに」ボートで「内地」へと逃れることになったのです。
奇跡的にこの一大事で命を落とした方はゼロ。「危機に強いアイスランド人」のイメージを作りましたし、この歴史の一幕は、語り継がれる伝説となりました。
1973年ヴェストマン諸島ヘイマエイ島での噴火
当時の様子を伝えるYoutubeビデオ 長いですから始めだけでも
私なんぞは、それでもまだ溶岩の手中からは遠いところにいますので、のんびりできていますが、山の麓でこの緊張の中に過ごすのはさぞかしの負担であろうと想像します。雪崩とかと違って、さらに「目の届かない」ところの現象であるのが怖いところです。
万が一、この地帯からマグマが吹き出た場合には、アイスランド全土がパニック化することでしょう。たとえば火山灰の具合によっては、国際空港が使用不可になります。
今回の警報を受けてのグリンダビク・タウンミーティング
Myndin er ur Mbl.is/KristinnMagnusson
マグマの流れ具合によっては、国道が遮断され、空港を含むケフラビクの町までもが孤立する可能性もあります。二三日のことなら、他の空港でまかなえるでしょうが、国際線全線を他の空港が処理できるとは思えません。
そうなれば、「観光客激減」―「経済停滞」―「国民総窮乏」となるのは目に見えています。ヤバイです、これは。カメハメハーンどころの騒ぎではない。まさしくゴジラ級の危機かもしれません。
目を外界(がいかい)に転じると、武漢発の新型ウイルスでニュースは持ちきりです。よくまあ次から次へと出てきますね。いよいよ世の末、ハルマゲドンの始まりか?とデマを吹く輩も出てきそうな気がします。
今、これを書いているのは2月1日の土曜日の正午ですが、昨日夜、つまり金曜の晩から今日の未明にかけて、この地域で三百回以上の地震が観測されたそうです。
地球は生きていますので、火山活動の観測がそのまま噴火につながるものではないことは確かですし、それは日本など他の火山国でも経験的に実証されていることでしょう。
なんとかこのまま「起きないで」眠り続けて欲しいと願います、地中のマグマゴジラ。いい子だから、眠ってて。
藤間/Tomaへのコンタクトは:nishimachihitori @gmail.com
Home Page: www.toma.is
癒しの山 エイシャのはずが...
前々回、西部フィヨルドのフラーテリでの雪崩のことを書きましたが、先週はレイキャブビクの郊外のEsjaエイシャという山でも雪崩がありました。ハイキングをしていたのか、三人の人が巻き込まれてしまいました。
うちひとりが雪に飲まれ、駆けつけたレスキューに二時間後に救出されたのですが、搬送された病院で残念ながら亡くなってしまいました。若い青年でまだ二十三歳だったといいます。
エイシャというのは、東京で言うと高尾山的な気楽なハイキングコースです。私にとっては「癒しの風景」でもあり、眺めるのが大好きな山なんです。そんなところで雪崩に巻き込まれ、命を落としてしまうとは、なんともいえない悲しさと「なんで?」感を覚えてしまいます。「ご冥福を祈ります」としか言葉がないですね。
前回取り上げたYoutubeのカメラ関係のビデオについての紹介は、ちょっと先送りにして、今回はアイスランドのもうひとつの自然の力について書かなくてはなりません。
アイスランドの国旗をご存知でしょうか?青地に白の十字架が横たわり、その白地の上にさらの赤の十字架がかぶさっています。
説明によると、青は空と海を象徴し、白は氷河を表しています。残るは赤ですが、これは….?そうです。火山の火を示すのだそうです。実は赤は「雪」「氷」をも表すらしいのですが、私は「理屈」に破綻しました。なんで?(^-^;
今回は雪崩の「白」ではなく、火の「赤」の話しです。
ストームと雪崩に悩まされている新年のアイスランドですが、先週新しい「怪物」が出現してしまいました。いや、まだ出てきてはいないか?それは「火山活動」です。
先週の日曜日だか月曜日だったの思うのですが、気象局がレイキャネス地方に「火山活動に関してのOvissustigurオウビッススティーグル」という警報を発令しました。
レイキャネス地方 今回のニュースより
Myndin er ur Ruv.is
Ovissustigurというのは文字通りにはUncertain stageとか「不確定の段階」という意味なのですが、この脈絡で使われる時は「非常な用心を必要とする段階」という意味になります。
説明によると、レイキャネス地方の観測点において、地震活動が継続して記録されていること、地表の隆起が一日につき3-4ミリと平均よりかなり高く、短い期間で2センチに達していること、等から警報の発令に至ったとのこと。
これらの地下活動の中心にあるのが、Thorbjornソウルビョルンという山のようです。この山自体は火山ではないのですが、マグマ活動のベルト地帯の上にあるのだそうです。
この地帯での火山活動は、今から780年くらい前に収束していたそうです。逆に言うと「そろそろ来てもおかしくは…」という頃合いなのだとか。専門外のことですので「だそうだ」「ということらしい」という言葉が多くなりますが、ご容赦。
で、このレイキャネス地方。どこにあるのか?と尋ねられる方もあるかと思います。これが最北の山の果てではないのです。ケフラビク国際空港があるところから、ほんの数キロのあたりにこのThorbjonの山が存在します。
空港のあるあたり一帯の半島が「レイキャネス半島」と呼ばれる地域なのです。アイスランドにいらしたことのある方ならば、空港からレイキャビクへ至る国道沿いの、あの殺伐とした溶岩地帯の光景を思い出していただけるかもしれません。
溶岩原野の風景 この山はThorbjornではなくKeilir
Myndin er ur Ruv.is
あの溶岩を噴出したのと同じ火山地帯が活発化しているらしいのです。
さて、ケフラビク国際空港よりも、さらにソウルビョルン山の最寄りにあるのがグリンダビクという町です。レイキャビクから来たとして、あの観光名所のブルーラグーンへ行く道に入り、さらに奥に進んで海岸線に出るあたりまで行き着いたところのある町です。
人口は3300人ほど。漁業と水産業が中心の町だったと思います。以前、日本人の男性の方が住んでいらしたのですが、数年前に病気で亡くなってしまいました。
そのグリンダビクでは、この警報の発令を受けて町をひっくり返したような騒ぎになったようです。月曜日には町の体育館で住民への説明と対策のためのタウン・ミーティングが持たれました。
ニュースや新聞で見た限りでは、「ゴジラが町へ向かっている」かのような雰囲気だったですね。実際に車に避難用の荷物を積み込んで、いつでも脱出できるようにしている人も少なくないようです。
無理はないです。自分の町に、通りに溶岩が流れ込んでくる、というのはアイスランドでは決して「想像上のこと」ではないのです。
今から三十七年前の1973年1月23日の真夜中、ヴェストマン諸島の中のヘイマエイという島では火山の噴火と溶岩の町への流出の故に、5000人余りの島民のほとんどが、「その夜のうちに」ボートで「内地」へと逃れることになったのです。
奇跡的にこの一大事で命を落とした方はゼロ。「危機に強いアイスランド人」のイメージを作りましたし、この歴史の一幕は、語り継がれる伝説となりました。
1973年ヴェストマン諸島ヘイマエイ島での噴火
当時の様子を伝えるYoutubeビデオ 長いですから始めだけでも
私なんぞは、それでもまだ溶岩の手中からは遠いところにいますので、のんびりできていますが、山の麓でこの緊張の中に過ごすのはさぞかしの負担であろうと想像します。雪崩とかと違って、さらに「目の届かない」ところの現象であるのが怖いところです。
万が一、この地帯からマグマが吹き出た場合には、アイスランド全土がパニック化することでしょう。たとえば火山灰の具合によっては、国際空港が使用不可になります。
今回の警報を受けてのグリンダビク・タウンミーティング
Myndin er ur Mbl.is/KristinnMagnusson
マグマの流れ具合によっては、国道が遮断され、空港を含むケフラビクの町までもが孤立する可能性もあります。二三日のことなら、他の空港でまかなえるでしょうが、国際線全線を他の空港が処理できるとは思えません。
そうなれば、「観光客激減」―「経済停滞」―「国民総窮乏」となるのは目に見えています。ヤバイです、これは。カメハメハーンどころの騒ぎではない。まさしくゴジラ級の危機かもしれません。
目を外界(がいかい)に転じると、武漢発の新型ウイルスでニュースは持ちきりです。よくまあ次から次へと出てきますね。いよいよ世の末、ハルマゲドンの始まりか?とデマを吹く輩も出てきそうな気がします。
今、これを書いているのは2月1日の土曜日の正午ですが、昨日夜、つまり金曜の晩から今日の未明にかけて、この地域で三百回以上の地震が観測されたそうです。
地球は生きていますので、火山活動の観測がそのまま噴火につながるものではないことは確かですし、それは日本など他の火山国でも経験的に実証されていることでしょう。
なんとかこのまま「起きないで」眠り続けて欲しいと願います、地中のマグマゴジラ。いい子だから、眠ってて。
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