こんにちは/こんばんは。
レイキャビクでの今年の夏は、結果的に冷夏となってしまいました。加えて「秋化」が早い気がします。九月初旬の段階で、すでに外出の際にはユニクロのウルトラライトダウンを着ていますし、部屋で物書きをする際にも、ひざ掛けのブランケットを使ったりしています。
やれやれ、どういう冬になることやら... 昨年は十二月になるまでシャツは半袖だったのを覚えていますからね。
式後の記念写真 難産の一枚
Myndin er ur Kirkjan á Facebook
さて、今回は今月の一日の日曜日に行われたbiskupsvigslaビスクプスヴィグスラについてご紹介したいと思います。biskupはビショップ(教会の監督)のことでbiskup-sで「監督の」ということです。
Vigslaは「叙任」とか「叙階」を意味し、biskupsvigslaで新監督の就任式のことになります。前ビショップのアグネスさんの叙任式は2013年でしたから、十一年ぶりの儀式になりますね。
「日本で言うならば...」と例えを考えたのですが、う〜ん、ピッタリとくるものが思いつきません。皆さんに馴染みのある(かもしれない)例を挙げると、イギリスの国王の就任(?でいいのかな)みたいな感じです。もちろん規模ははるかに小さいですが。
それでもアイスランドでの行事としては大規模で、会場のランドマーク的なハットゥルグリムス教会は満杯になります。半分は招待客。大統領を始め、閣僚や政界の要人も参列し、周辺の外国の教会の監督方も招かれています。テレビでも生中継。
八月一日のハットゥラ新大統領の就任の際には、ほとんど簡略な式しかなかったのに比べると大仕掛けです。
式の内容を先にお伝えすると、別に特別なことはありません。讃美歌を歌い、聖書を朗読し、前監督(その時点ではまだ現監督)の勧めの言葉。ついで就任の誓いと新監督の説教。聖餐式と呼ばれるパンと葡萄酒をいただく儀式、そして退場となります。
ただ、それが教会が満杯の状態で行われると、時間がかかります。合間合間にクワイアの合唱が入ったり、聖書の朗読がゲストによりグリーンランド語やスウェーデン語、はたまたパレスチナからのゲストのアラビア語まで加わったりして、つまり、そういう「念入りな」儀式なわけです。
ヒラの行進 私もここに写ってますよ
Myndin er ur Kirkjan á Facebook
私たちヒラの牧師さんたちは、実は叙任式の開始前三十分の時点で、隊列を組み入場しています。式の開始は午後2時でしたので、1時半には所定の席に着席。式から式後の記念撮影を終えて「解放」されたのは4時半くらいでしたからほぼ三時間かかりました。長いよ、いくらなんでも。
さて、元へ戻って、私たちヒラ牧師連。昼過ぎに教会に隣接するTECカレッジに参集。そこでhempaヘンパと呼ばれる、アイスランドの牧師の伝統的装束をまといます。これは厚手の黒い生地でできたドレスのような服に、白くて丸い天使の輪っか状の首カラーを付けたものです。
いまだにこれを使っているのは、アイスランドとオリジナル国のデンマークだけと理解しています。ちなみにワタシは「そんなの関係ネエ」とヘンパを持たずに過ごしてきたのですが、ここへ来て監督オフィスが一着支給してくれました。これが最初で最後の一回の着用かもしれないのに。(^-^;
で、先に述べましたように列を組んで行進して教会に入ります。これは牧師になった年の若い順に並んでいくのですが、1990年製の私、気が付けば随分と後ろの方。そういうもんか。このプロセッションは珍しい光景なので、偶然居合わせた観光客の皆さんは大喜びでスマホをかざしていました。
我々だけで130人くらいはいるはずなのですが、国外ゲストの司祭たちを含めて、全員「聖卓」と呼ばれる教会の前方の壇上部分に押し込まれます。私たちは壇上から一般の参列の方々に向き合う形で座ることになります。さて、終わるまでここにジョッとしていなくては。信心のための勤行(ごんぎょう)です。
じっと座っていると、何の合図も無しに前方から立ち始めました。なんだ?と私も立ち上がりながらいぶかっていると、それが新大統領夫妻の到着だったことがわかりました。儀礼上の起立です。どうもどうも、始めまして。
教会の鐘が鳴り始め、午後2時きっかりに奏楽のトランペットが鳴り響きました。まさしく国王的だな。いや女王か。新監督のGudrun Karls Helgadottirグビューズルン・カルス・ヘルガドティールさんは女性です。
グビューズルン新監督の説教
Myndin er ur Kirkjan á Facebook
キャンドル持ちの子供を先頭にして、入場が始まり、海外の教会の来賓らが続き、現ビショップ(その時点)のアグネスさんや新ビショップになるグビューズルンさんらで締めくくり。儀式の始まりです。
荘厳?な音楽に、来賓司祭たちのきらびやかな祭服の数々。正直言って、時代とズレてるなあ、感じました。こんな見せかけで権威をひけらかすようなのはアナクロニズムだと思うんだけど...
伝統文化というものはあるのでしょうが、この権威主義は国民教会が「国教会」であった頃の無残りだと私は思っています。私がここの牧師になったのは、まだ「国教会」であった「末期の始まり」くらいでしたが、日本の小さな教会で育った私には鼻につくものが多く、ずいぶんと反発を感じたものです。
「国民教会」となった今の時代、ただでさえ教会は世間で不人気なんだから、もう少し庶民目線になって然るべきだと思うのですがね。
まあ、とにかく三時間で「勤行」は終わり、私は「さっさ」と帰りました。夕方から別の場所でレセプションがあったのですが、それはスルー。
で、新ビショップのグビューズルンさんは、女性で確か五十五歳。私よりも十歳も若いのですが、それは気になりません。
ビショップの役割も「国教会」時代とはかなり変わってきました。以前は、何と言うか、教会内の「ミニ独裁者」みたいだったし、それ故に多くの弊害がもたらされました。
そのため、様々な改革の試みがなされ、今では財政や行政の最終的決断はkirkjuthingiキルキュシンク(kirkju「教会の」 thingi「議会」)という、教会内でのミニ国会のような機関に委ねられています。
式を終え退出する一同
Myndin er ur Kirkjan á Facebook
私の考えでは、現在のビショップの主な役割はPRだと思います。マスコミの扱いが不得手だったアグネス前監督は、PRの面では失点を重ねてきました。私にとっては良い監督だったのですけどね。
私は新監督の選挙の際から、グビューズルンさんを支持してきました。それは第一に基本的なものの見方が、候補者の中では一番私の考えに近かったこと、そしてマスコミの扱いが上手だったことによります。
まあ、人というのは、権威の座につくと変わることがあります。ネガティブな変化の例も多く見てきました。そうならないことを願います。
主がアグネス全監督にねぎらいと祝福を、そしてグビューズルン新監督に指導と支えを与えてくれることを祈ります。
今回は、おそらくは皆さんにとっては馴染みのないであろう、biskupssvigslaというアイスランドの伝統儀式についてご紹介しました。すべて「ワタシの目を通した」ということでお願いいたします。(*^^*)
*これは個人のプライベート・ブログであり、公的なアイスランド社会の広報、観光案内、あるいはアイスランド国民教会のサイトではありません。記載内容に誤りや不十分な情報が含まれることもありますし、述べられている意見はあくまで個人のものですので、ご承知おきください。
藤間/Tomaへのコンタクトは:nishimachihitori @gmail.com
Church home page: Breidholtskirkja/ International Congregation
Facebook: Toma Toshiki
レイキャビクでの今年の夏は、結果的に冷夏となってしまいました。加えて「秋化」が早い気がします。九月初旬の段階で、すでに外出の際にはユニクロのウルトラライトダウンを着ていますし、部屋で物書きをする際にも、ひざ掛けのブランケットを使ったりしています。
やれやれ、どういう冬になることやら... 昨年は十二月になるまでシャツは半袖だったのを覚えていますからね。
式後の記念写真 難産の一枚
Myndin er ur Kirkjan á Facebook
さて、今回は今月の一日の日曜日に行われたbiskupsvigslaビスクプスヴィグスラについてご紹介したいと思います。biskupはビショップ(教会の監督)のことでbiskup-sで「監督の」ということです。
Vigslaは「叙任」とか「叙階」を意味し、biskupsvigslaで新監督の就任式のことになります。前ビショップのアグネスさんの叙任式は2013年でしたから、十一年ぶりの儀式になりますね。
「日本で言うならば...」と例えを考えたのですが、う〜ん、ピッタリとくるものが思いつきません。皆さんに馴染みのある(かもしれない)例を挙げると、イギリスの国王の就任(?でいいのかな)みたいな感じです。もちろん規模ははるかに小さいですが。
それでもアイスランドでの行事としては大規模で、会場のランドマーク的なハットゥルグリムス教会は満杯になります。半分は招待客。大統領を始め、閣僚や政界の要人も参列し、周辺の外国の教会の監督方も招かれています。テレビでも生中継。
八月一日のハットゥラ新大統領の就任の際には、ほとんど簡略な式しかなかったのに比べると大仕掛けです。
式の内容を先にお伝えすると、別に特別なことはありません。讃美歌を歌い、聖書を朗読し、前監督(その時点ではまだ現監督)の勧めの言葉。ついで就任の誓いと新監督の説教。聖餐式と呼ばれるパンと葡萄酒をいただく儀式、そして退場となります。
ただ、それが教会が満杯の状態で行われると、時間がかかります。合間合間にクワイアの合唱が入ったり、聖書の朗読がゲストによりグリーンランド語やスウェーデン語、はたまたパレスチナからのゲストのアラビア語まで加わったりして、つまり、そういう「念入りな」儀式なわけです。
ヒラの行進 私もここに写ってますよ
Myndin er ur Kirkjan á Facebook
私たちヒラの牧師さんたちは、実は叙任式の開始前三十分の時点で、隊列を組み入場しています。式の開始は午後2時でしたので、1時半には所定の席に着席。式から式後の記念撮影を終えて「解放」されたのは4時半くらいでしたからほぼ三時間かかりました。長いよ、いくらなんでも。
さて、元へ戻って、私たちヒラ牧師連。昼過ぎに教会に隣接するTECカレッジに参集。そこでhempaヘンパと呼ばれる、アイスランドの牧師の伝統的装束をまといます。これは厚手の黒い生地でできたドレスのような服に、白くて丸い天使の輪っか状の首カラーを付けたものです。
いまだにこれを使っているのは、アイスランドとオリジナル国のデンマークだけと理解しています。ちなみにワタシは「そんなの関係ネエ」とヘンパを持たずに過ごしてきたのですが、ここへ来て監督オフィスが一着支給してくれました。これが最初で最後の一回の着用かもしれないのに。(^-^;
で、先に述べましたように列を組んで行進して教会に入ります。これは牧師になった年の若い順に並んでいくのですが、1990年製の私、気が付けば随分と後ろの方。そういうもんか。このプロセッションは珍しい光景なので、偶然居合わせた観光客の皆さんは大喜びでスマホをかざしていました。
我々だけで130人くらいはいるはずなのですが、国外ゲストの司祭たちを含めて、全員「聖卓」と呼ばれる教会の前方の壇上部分に押し込まれます。私たちは壇上から一般の参列の方々に向き合う形で座ることになります。さて、終わるまでここにジョッとしていなくては。信心のための勤行(ごんぎょう)です。
じっと座っていると、何の合図も無しに前方から立ち始めました。なんだ?と私も立ち上がりながらいぶかっていると、それが新大統領夫妻の到着だったことがわかりました。儀礼上の起立です。どうもどうも、始めまして。
教会の鐘が鳴り始め、午後2時きっかりに奏楽のトランペットが鳴り響きました。まさしく国王的だな。いや女王か。新監督のGudrun Karls Helgadottirグビューズルン・カルス・ヘルガドティールさんは女性です。
グビューズルン新監督の説教
Myndin er ur Kirkjan á Facebook
キャンドル持ちの子供を先頭にして、入場が始まり、海外の教会の来賓らが続き、現ビショップ(その時点)のアグネスさんや新ビショップになるグビューズルンさんらで締めくくり。儀式の始まりです。
荘厳?な音楽に、来賓司祭たちのきらびやかな祭服の数々。正直言って、時代とズレてるなあ、感じました。こんな見せかけで権威をひけらかすようなのはアナクロニズムだと思うんだけど...
伝統文化というものはあるのでしょうが、この権威主義は国民教会が「国教会」であった頃の無残りだと私は思っています。私がここの牧師になったのは、まだ「国教会」であった「末期の始まり」くらいでしたが、日本の小さな教会で育った私には鼻につくものが多く、ずいぶんと反発を感じたものです。
「国民教会」となった今の時代、ただでさえ教会は世間で不人気なんだから、もう少し庶民目線になって然るべきだと思うのですがね。
まあ、とにかく三時間で「勤行」は終わり、私は「さっさ」と帰りました。夕方から別の場所でレセプションがあったのですが、それはスルー。
で、新ビショップのグビューズルンさんは、女性で確か五十五歳。私よりも十歳も若いのですが、それは気になりません。
ビショップの役割も「国教会」時代とはかなり変わってきました。以前は、何と言うか、教会内の「ミニ独裁者」みたいだったし、それ故に多くの弊害がもたらされました。
そのため、様々な改革の試みがなされ、今では財政や行政の最終的決断はkirkjuthingiキルキュシンク(kirkju「教会の」 thingi「議会」)という、教会内でのミニ国会のような機関に委ねられています。
式を終え退出する一同
Myndin er ur Kirkjan á Facebook
私の考えでは、現在のビショップの主な役割はPRだと思います。マスコミの扱いが不得手だったアグネス前監督は、PRの面では失点を重ねてきました。私にとっては良い監督だったのですけどね。
私は新監督の選挙の際から、グビューズルンさんを支持してきました。それは第一に基本的なものの見方が、候補者の中では一番私の考えに近かったこと、そしてマスコミの扱いが上手だったことによります。
まあ、人というのは、権威の座につくと変わることがあります。ネガティブな変化の例も多く見てきました。そうならないことを願います。
主がアグネス全監督にねぎらいと祝福を、そしてグビューズルン新監督に指導と支えを与えてくれることを祈ります。
今回は、おそらくは皆さんにとっては馴染みのないであろう、biskupssvigslaというアイスランドの伝統儀式についてご紹介しました。すべて「ワタシの目を通した」ということでお願いいたします。(*^^*)
*これは個人のプライベート・ブログであり、公的なアイスランド社会の広報、観光案内、あるいはアイスランド国民教会のサイトではありません。記載内容に誤りや不十分な情報が含まれることもありますし、述べられている意見はあくまで個人のものですので、ご承知おきください。
藤間/Tomaへのコンタクトは:nishimachihitori @gmail.com
Church home page: Breidholtskirkja/ International Congregation
Facebook: Toma Toshiki
>ハットゥルグリムス教会。最上階の展望台には行きましたが。会場の音響はいいのでしょ... への返信
kuwasanさん、
コメントありがとうございます。「ゴルゴ13」ってまだ続いているんですか?ビックリ。それをkuwasanが読んでいらっしゃることにさらにビックリです。(*^^*)
あの教会の音響はどうなんでしょね?音楽には良いのかもしれませんが、説教を聞くには最悪の教会だと思っています。(^-^;