こんにちは/こんばんは。
またしても二週間ぶりの更新となってしまいました。秋めいた陽光に包まれていたレイキャビクですが、一時期マイナスにまで気温が落ち込み、雪も降りました。ひどくはありませんでしたが、「舞ってる」以上のもので道路が白くなるくらい。
慌ててスパイクタイヤへの交換にラッシュした人も多いようです。私はそれ以前から交換の予約を入れてあったので、14日の月曜日にスパイクタイヤ・レディー。スパイクタイヤは粉塵公害に加えて、道路を傷めるという副作用があるため、禁止を求める声もあります。ただワタシは道路よりも自分の生命の方が愛おしいので、遠慮なくスパイクを履きます。
清涼感アップ用ピック1
Myndin er eftir Koushik_Chowda@unsplash_com
ああ、それからアイスランドでも選挙です。11月30日投開票。独立党、進歩党(という名前の保守党)、それに緑の党による三党連立政権は任期約半年を残して崩壊しました。それでも七年間も続いたんですけどね、ウソみたいに。
ポリシーに相当の開きがあるこの三党を繋げていたカトリーン前首相が、大統領選出馬のために政権を去ったことで、いよいよ「接着剤」がなくなってしまったようです。
ちなみに現段階での緑の党は2,3%の支持しかなく、おそらくこの選挙で国会から姿を消します。こちらでは5%条項というものがあり、得票総数が5%に満たない党(正式には比例代表名簿のようなリストですが)は、アウト! となります。
私はいまだに名前だけは緑の党のメンバーですが、まあ、仕方ないですね。やり直すためには、一度そういう時期を経験すべきかも。
さて、今回はアイスランド語についてです。ちょっとマニアックな話しになりますがご容赦。今日(19日)のモルグンブラウズィズ紙に面白い記事が出ていたのでそれを元にして書いてみます。記事はバルドゥルさんというアイスランド語の教授によるもの。
実はこのバルドゥルさん、私の一家(まだ妻帯中の頃)が、レイキャビクに移った際に同じ家の上下というお隣さん。バルドゥルさんの小学生の娘さん二人が、うちの子供たちのお守りをよくしてくれたものです。
そのお嬢さん方も、今は成人して自身の家庭を築いています。いつの間に?という感じもしますが、そりゃそうだよな。お守りしてもらってたうちの娘に子供がいるんだから。(歳を実感する時 (^-^; )
清涼感アップ用ピック2
Myndin er eftir Anton_B@unsplash_com
Baldurさんは定期的にアイスランド語に関しての記事を投稿しています。モルグンブラウズィズ紙は保守系で、アイスランド文化や言語の保護にも当然積極的。バルドゥルさんもこの点では同様。
アイスランド語には単語の「性」というものがあります。男性、女性、中性の「ジェンダー」です。ドイツ語やフランス語にもありますよね。スェーデン語やデンマーク語では、進歩し簡略化されて「両性」(男女性)と中性のふたつだったと記憶しています。
アイスランド語で、普通に「人たち」の意味で使う言葉はfolkフォルクなのですが(ドイツ車のVolksvagenのVolkと同じルーツ)、これは意味的には複数なのですが、名詞としては中性単数となります。したがって、folkを代名詞で受ける際には中性単数のthadを使います。
ところが、最近のアイスランド語の風潮に、folkといった後にそれを複数代名詞で受けるものがあります。バルドゥルさんが記事の中であげている例は「いろいろな階層のfolkが集まり、thauソイは現状について苦言を呈した」このthauは中性複数の代名詞なのですが、文法的にはthadが正解。
このような風潮の裏には、文法の正確さよりも描写している事柄の実態により重きを置くような考え方があると思います。実際に集まっているのは複数の「人々」であるわけですから。でも、それならfolkそのものを複数名詞にしたら?ということもできますが... へへ。
この風潮の伏線には「男女同権」へのプレッシャーがあります。どういうことかというと、例えば議長を意味する言葉はformadurフォルマーズルなのですが、このマーズルは「男」を意味する男性名詞。
そこで、男女同権の考えを持つ人々が「なぜ議長は『男性』なのか?formanneskjaフォルマンネスキャ(manneskjaは『人物』を意味する女性名詞)の方が公正では?」
バルドゥルさんは、確か以前の記事でこの点を論じていて、「madurという名詞は、単に『男』だけではなく、性にとらわれない『人』をも意味する」と。
バルドゥルさんの投稿記事
Myndin er ur Mbl.is
これはひとつの例ですが、他にも似たような言葉は山ほどあるわけですよ。大統領forsetiは男性名詞ですが、現大統領は女性です。ですから、大統領と言った後にはhannハン(男性単数)で受けるのが文法的には正解なのですが、みんな実際は女性だと知っているので、hunフン(女性単数)で受けることも多く見受けます。
もっともバルドゥルさんの意見では、これは文法的にも許されている例外であり、forsetiは女性形で受けてもいいのだそうです。
アイスランド語の文法を守ろうとする人々は、まあ基本的に保守的になりますが、別に変化を否定しきっているわけではなく、なし崩しに文法が無視されることを警戒しているようです。
生徒たちを意味するのはnemendurネーメンドゥル(nemandi男性単数の複数形)です。当然これを受ける代名詞はtheirセイル(男性複数)なのですが、「実態」を見る風潮から、これをthau(中性複数)で受ける人も多いようです。生徒たちは男女共にいますから。
バルドゥルさんは、このような言葉の置き換えは気に入らないようです。「代名詞の性について、実際のジェンダーと結びつけて考えることは間違っている。代名詞の性は実際には『性なし』なのだ」としています。
わかるような、わからないような。
清涼感アップ用ピック3
Myndin er eftir Vincent_Guth@unsplash_com
例えば慣例句でallir velkomin アットゥリール・ヴェルコーミン「皆さん歓迎」と言いますが、このallir は形容詞allur(英語のallの男性複数形)なのですが、意味はジェンダーに縛られずに普遍的な意味での「皆さん」を意味しています。
ところが文法的には、修飾語のvelkomin(英語のwellcome)は中性複数の語尾変化をしています。つまり、allirは男性複数なのに、velkominの方は中性複数なのです。これも「実態」を意識してのことなのか?
ちなみにここでのallirは代名詞ではなく形容詞なのですが、おそらく文法的には「形容詞の代名詞的用法」とかいうのだろうと思います。間違ってたらごめんなさい。Akakuraさん、教えて!
アイスランド語、学ぶ身としては「これが正しい」というものを示して欲しいのですが、年がら年中「例外」そして「これは『非』例外」に直面するのが実際です。文法はきちんと学びたいものですが、あまり突き詰めて「正解」を追求しようとすると墓穴を掘ります。
こういうのを「奥が深い」というのだろうか?ちょっと違う気がする。「ダブルスタンダード」?「トリプル」?「その場その場主義」?あるいは「カオス」?アイスランドの皆さん、移民に「しっかりアイスランド語を勉強しろ」と言うなら、もう少ししっかりしてくれ〜〜!
*これは個人のプライベート・ブログであり、公的なアイスランド社会の広報、観光案内、あるいはアイスランド国民教会のサイトではありません。記載内容に誤りや不十分な情報が含まれることもありますし、述べられている意見はあくまで個人のものですので、ご承知おきください。
藤間/Tomaへのコンタクトは:nishimachihitori @gmail.com
Church home page: Breidholtskirkja/ International Congregation
Facebook: Toma Toshiki
またしても二週間ぶりの更新となってしまいました。秋めいた陽光に包まれていたレイキャビクですが、一時期マイナスにまで気温が落ち込み、雪も降りました。ひどくはありませんでしたが、「舞ってる」以上のもので道路が白くなるくらい。
慌ててスパイクタイヤへの交換にラッシュした人も多いようです。私はそれ以前から交換の予約を入れてあったので、14日の月曜日にスパイクタイヤ・レディー。スパイクタイヤは粉塵公害に加えて、道路を傷めるという副作用があるため、禁止を求める声もあります。ただワタシは道路よりも自分の生命の方が愛おしいので、遠慮なくスパイクを履きます。
清涼感アップ用ピック1
Myndin er eftir Koushik_Chowda@unsplash_com
ああ、それからアイスランドでも選挙です。11月30日投開票。独立党、進歩党(という名前の保守党)、それに緑の党による三党連立政権は任期約半年を残して崩壊しました。それでも七年間も続いたんですけどね、ウソみたいに。
ポリシーに相当の開きがあるこの三党を繋げていたカトリーン前首相が、大統領選出馬のために政権を去ったことで、いよいよ「接着剤」がなくなってしまったようです。
ちなみに現段階での緑の党は2,3%の支持しかなく、おそらくこの選挙で国会から姿を消します。こちらでは5%条項というものがあり、得票総数が5%に満たない党(正式には比例代表名簿のようなリストですが)は、アウト! となります。
私はいまだに名前だけは緑の党のメンバーですが、まあ、仕方ないですね。やり直すためには、一度そういう時期を経験すべきかも。
さて、今回はアイスランド語についてです。ちょっとマニアックな話しになりますがご容赦。今日(19日)のモルグンブラウズィズ紙に面白い記事が出ていたのでそれを元にして書いてみます。記事はバルドゥルさんというアイスランド語の教授によるもの。
実はこのバルドゥルさん、私の一家(まだ妻帯中の頃)が、レイキャビクに移った際に同じ家の上下というお隣さん。バルドゥルさんの小学生の娘さん二人が、うちの子供たちのお守りをよくしてくれたものです。
そのお嬢さん方も、今は成人して自身の家庭を築いています。いつの間に?という感じもしますが、そりゃそうだよな。お守りしてもらってたうちの娘に子供がいるんだから。(歳を実感する時 (^-^; )
清涼感アップ用ピック2
Myndin er eftir Anton_B@unsplash_com
Baldurさんは定期的にアイスランド語に関しての記事を投稿しています。モルグンブラウズィズ紙は保守系で、アイスランド文化や言語の保護にも当然積極的。バルドゥルさんもこの点では同様。
アイスランド語には単語の「性」というものがあります。男性、女性、中性の「ジェンダー」です。ドイツ語やフランス語にもありますよね。スェーデン語やデンマーク語では、進歩し簡略化されて「両性」(男女性)と中性のふたつだったと記憶しています。
アイスランド語で、普通に「人たち」の意味で使う言葉はfolkフォルクなのですが(ドイツ車のVolksvagenのVolkと同じルーツ)、これは意味的には複数なのですが、名詞としては中性単数となります。したがって、folkを代名詞で受ける際には中性単数のthadを使います。
ところが、最近のアイスランド語の風潮に、folkといった後にそれを複数代名詞で受けるものがあります。バルドゥルさんが記事の中であげている例は「いろいろな階層のfolkが集まり、thauソイは現状について苦言を呈した」このthauは中性複数の代名詞なのですが、文法的にはthadが正解。
このような風潮の裏には、文法の正確さよりも描写している事柄の実態により重きを置くような考え方があると思います。実際に集まっているのは複数の「人々」であるわけですから。でも、それならfolkそのものを複数名詞にしたら?ということもできますが... へへ。
この風潮の伏線には「男女同権」へのプレッシャーがあります。どういうことかというと、例えば議長を意味する言葉はformadurフォルマーズルなのですが、このマーズルは「男」を意味する男性名詞。
そこで、男女同権の考えを持つ人々が「なぜ議長は『男性』なのか?formanneskjaフォルマンネスキャ(manneskjaは『人物』を意味する女性名詞)の方が公正では?」
バルドゥルさんは、確か以前の記事でこの点を論じていて、「madurという名詞は、単に『男』だけではなく、性にとらわれない『人』をも意味する」と。
バルドゥルさんの投稿記事
Myndin er ur Mbl.is
これはひとつの例ですが、他にも似たような言葉は山ほどあるわけですよ。大統領forsetiは男性名詞ですが、現大統領は女性です。ですから、大統領と言った後にはhannハン(男性単数)で受けるのが文法的には正解なのですが、みんな実際は女性だと知っているので、hunフン(女性単数)で受けることも多く見受けます。
もっともバルドゥルさんの意見では、これは文法的にも許されている例外であり、forsetiは女性形で受けてもいいのだそうです。
アイスランド語の文法を守ろうとする人々は、まあ基本的に保守的になりますが、別に変化を否定しきっているわけではなく、なし崩しに文法が無視されることを警戒しているようです。
生徒たちを意味するのはnemendurネーメンドゥル(nemandi男性単数の複数形)です。当然これを受ける代名詞はtheirセイル(男性複数)なのですが、「実態」を見る風潮から、これをthau(中性複数)で受ける人も多いようです。生徒たちは男女共にいますから。
バルドゥルさんは、このような言葉の置き換えは気に入らないようです。「代名詞の性について、実際のジェンダーと結びつけて考えることは間違っている。代名詞の性は実際には『性なし』なのだ」としています。
わかるような、わからないような。
清涼感アップ用ピック3
Myndin er eftir Vincent_Guth@unsplash_com
例えば慣例句でallir velkomin アットゥリール・ヴェルコーミン「皆さん歓迎」と言いますが、このallir は形容詞allur(英語のallの男性複数形)なのですが、意味はジェンダーに縛られずに普遍的な意味での「皆さん」を意味しています。
ところが文法的には、修飾語のvelkomin(英語のwellcome)は中性複数の語尾変化をしています。つまり、allirは男性複数なのに、velkominの方は中性複数なのです。これも「実態」を意識してのことなのか?
ちなみにここでのallirは代名詞ではなく形容詞なのですが、おそらく文法的には「形容詞の代名詞的用法」とかいうのだろうと思います。間違ってたらごめんなさい。Akakuraさん、教えて!
アイスランド語、学ぶ身としては「これが正しい」というものを示して欲しいのですが、年がら年中「例外」そして「これは『非』例外」に直面するのが実際です。文法はきちんと学びたいものですが、あまり突き詰めて「正解」を追求しようとすると墓穴を掘ります。
こういうのを「奥が深い」というのだろうか?ちょっと違う気がする。「ダブルスタンダード」?「トリプル」?「その場その場主義」?あるいは「カオス」?アイスランドの皆さん、移民に「しっかりアイスランド語を勉強しろ」と言うなら、もう少ししっかりしてくれ〜〜!
*これは個人のプライベート・ブログであり、公的なアイスランド社会の広報、観光案内、あるいはアイスランド国民教会のサイトではありません。記載内容に誤りや不十分な情報が含まれることもありますし、述べられている意見はあくまで個人のものですので、ご承知おきください。
藤間/Tomaへのコンタクトは:nishimachihitori @gmail.com
Church home page: Breidholtskirkja/ International Congregation
Facebook: Toma Toshiki