レイキャビク西街ひとり日誌 (Blog from Iceland)

北の小さな島国アイスランドはレイキャビクの西街からの、男独りブログです。

ワクチン接種 優先? 特権? 「ずる」?

2021-05-16 00:00:00 | 日記
こんにちは/こんばんは。前回、こちらで起こった山火事、正確には「原野火事」について書きましたが、ニュースによると五月始めからの十日間で二十もの山火事・原野火事が報告されたそうです。

それほど大事に至らずに消火されたものがほとんどのようですが、いくつかはかなり大きな面積 - それでも山火事としてはミニミニサイズ- の延焼となりました。あるサマーハウスの近所でも枯れ草に火が付き、家屋が危なかったらしいのですが、幸い家の前の「道」のおかげで火は止まったとのこと。




本文とは無関係 拙宅からの夕日


レイキャビク近郊では、もう一ヶ月近くも雨らしい雨が降っていません。原野にはまだ青くなっていない枯れ草で覆われている場所が無数にあります。当局は「山火事注意報」みたいなものを出して、「オープンスペースでの一切の火の使用を禁止する」としています。

今月は次の日曜日と月曜日がペンテコステ、聖霊降臨日と呼ばれるキリスト教の祭日で連休。多くの人がサマーハウス等へと出向く時期です。となると、外でBQとかの向きも多くなります。「オープンスペース」にサマーハウスの庭が含まれるのかどうか定かではありませんが、脈絡から考えて含まれるでしょうね。

今週中に、ある程度まとまった雨が降って欲しいものです。って、ここで雨乞いをするなんていうのは、まさに「異常」です。

さて、先週のNスタを見ていて思ったことがあります。コロナのワクチン接種に関して、割り込みというか、正規の順番待ちや仕方ではなしに、先に接種を受けようとする事例 、つまり「ずる」 が指摘されているとかのニュースがあったのです。

それに関連して、世界各地でのコロナワクチン接種においての「優先接種」についてミニ特集みたいなコーナーがありました。

だいたい世界共通で、医療関係者、コロナ感染で生命の危険度が増すような持病を持っている人、介護施設に入っている人とそのスタッフ等が優先的に接種を受け、同時に一般人の高齢の人から順に接種を受けるシステムを取っているように見受けられます。

Nスタで扱っていたのは、そういうようなシステムの中で、じゃあ、国のVIPであるような要人はどうしているか?ということでした。




接種を受けるグビューズニ大統領 順番は私より後
Mynin er ur Visir.is/VILHELM


例えばアメリカのバイデン大統領や、ロシアのプーチン大統領は率先していの一番に接種を受けていましたね。あれはVIP特権というよりは、ワクチンの安全性をアピールして、国民に接種を呼びかけるという政治的ジェスチャーだったと思います。

それに対して、いくつかの国ではそんなに高貴な目的のない、単なる自分勝手で優先接種を受けた事例もあったようです。ニュースではペルーの当時の大統領や、保健相、外相、さらに周囲の公務員ら八十七人が「ずる接種」を受けていたことを報じていました。

これは「順番ずる」というよりは、一般接種が始まる以前に「試薬」の段階でのずるだったようです。それでも、ずるはずる。ふたりの大臣は辞任したそうで。

似た話しですが、スペインでは軍の参謀総長が割り込み接種を受けていたことが発覚し、これも辞任に追い込まれたそうです。

一方、そういう醜い俗世からは超越している(はずの)英国王室。エリザベス女王は九十五歳というご高齢にもかかわらず、「優先接種」を返上して、普通の年齢順による接種を選ばれたそうです。貴族の誇り、というものでしょうか?まあ、いずれにしても九十五歳では一番初めの順番でしょうが。

ロイヤル・ファミリーの他の面々がどのように対応したのかまでは紹介されていませんでしたが、トップの女王がそのように範を示したからには、それを無視するのは難しいのでは、と想像します。

さて、アイスランドです。この「優先接種」の件に関して、他の北欧諸国のVIPがどのように振る舞ったのかは、良く把握できていません。ただ、他の事柄から推察して、多分、王室を除いては、VIP優先とかはないのではないかと考えます。

ちなみに、北欧諸国の中で、スウェーデン、ノルウェー、デンマークには王室があります。フィンランドは1918年のわずかな期間だけ「王国」が誕生しましたが、翌19年には共和制に移行しています。

アイスランドにも王室はありません。北欧文化のメンタリティというのは、とても「水平思考」の色合いが濃く、一般人のレベルでは、無意味な特権意識というものが極力排除されているように思われます。

北欧的政治スタイル




カトリーン首相の接種は、やっと先週の月曜日
Myndin er ur Frettabladid/Anton_Brink


もちろん全然ないということはないと思います。ただ、もし特権があるとしたら、それは政治家よりは、むしろ財のありなしの方に関係しているのではないかと考えます。

金持ちが裏で何をしているのかは白日の下には明らかになりませんが、政治家のような公人の場合は、有形無形のさまざまな倫理コードが社会システムの中にも、人々の意識の中にも埋め込まれています。

こちらでは、グビューズニ大統領が接種を受けたのが5月6日。ワタシが受けたのが4月29日。勝った。いやいや、そうじゃないですが、大統領の接種は私よりあとだったのです。

私が受けた前日には、こちらの感染症のお医者さんで、連日コロナ対策の陣頭指揮を取っているソウローブルという方が接種を受けていました。彼も医療従事者としての優先接種を辞退し、一般接種を選んでいたのです。

当日、たまたまその時居合わせた市民の人たちが彼に気が付き、拍手を送っている様子がニュースに流れていました。

カトリーン首相が接種を受けたのも一般接種で、これは先週の月曜日になってから。もっとも彼女はずっと若いですから、多少繰り上げしていたのかもしれません。

このように、こちらでは社会のVIPでも、普通に順番を待って接種を受けています。別にそれが奇特なことではなくて、みんな「それがフツーだ」と考えています。




本文とは無関係 まだまだ続くマグマ・ショー
Myndin er ur Visir.is/VILHELM


この、変な特権意識が少ないことは、私がアイスランドや北欧の社会(特に政治の世界)で気に入っている点です。繰り返しますが、お金持ちの特権構造については除外しておきます。そもそも「お金持ち」を良く知らないもので... 

こういう書き方をすると、「結局、アイスランドの自慢話しか」と思われるかもしれませんので、付け加えておきますが、これは特に「政治」関連での「特権」についての社会の「意識」についてのことです。

いつでも、みんなが無私に他者を尊重して .... ということではありません。例えば、スーパーの真ん前に、駐車禁止ゾーンを無視して駐車したり、三台分の駐車スペースに横付けして車を止めるような輩もいます。

まあ、そういう輩は独自の「特権意識」を持っているのかもしれませんね。やってることは、ただ単に野蛮で自分勝手ということに過ぎませんが。

それに、政治家の中にも特権意識をしっかり抱え込んでいる人もいますから。ただ、政治家自身を含んで社会の多数派は「そういうのはよろしくない」という常識を持っているということです。

アイスランドにもあったんだ 「上級市民」


最後にまた付け足しですが、こちらではここにきて接種を年齢順に行う、という方式を改めるみたいです。五十歳前半から若い世代にかけての摂取は、年齢に囚われずにアットランダムに順番を分配するということです。

「若い世代こそ、先に摂取すべきでは?」という声が以前からあったのですが、接種を終えた割合が増加する中で、方針を転換するようです。

日本では摂取予約の段階で混乱が生じていると聞いていますが、なんとか良い方法が考案され、スムースに接種が進むことを願います。


*これは個人のプライベート・ブログであり、公的なアイスランド社会の広報、観光案内、あるいはアイスランド国民教会のサイトではありません。記載内容に誤りや不十分な情報が含まれることもありますし、述べられている意見はあくまで個人のものですので、ご承知おきください。

藤間/Tomaへのコンタクトは:nishimachihitori @gmail.com

Home Page: www.toma.is
Facebook: Toma Toshiki
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