こんにちは/こんばんは。
気がつけばすでに三月中旬を通り越して下旬に入りつつあります。ということは、日本では春休み?っていうか、卒業式とかの季節ですか?毎年、春にはいささかの季節感の「ズレ」を感じます。
このところ仕事が忙しくなり、あまり周囲を見回している時間がなくなっています。忙しくなっている理由は非常に単純で、「ウクライナ難民」です。
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キーウ(キエフ)のペチェールスク大修道院
Myndin er eftir Ganna_Aibetova@unsplash.com
私はアイスランド国民教会の牧師ですが、教区牧師ではない特別職の移民担当牧師です。最近十年くらいは、実際上の「難民担当牧師」になっています。「担当」というのは、あまり良い言葉ではないですね。「難民ケア牧師」と言った方が良いでしょうか?
ですが、「難民」といっても、実際には個々人で難民申請をする「庇護申請者」Asylum seekersのケアがメインで、国連関係を通して集団でやってくる「クオータ難民」にはあまり関知していません。
クオータ難民は、政府が受け入れを決定して迎えるのですが、国際条約上の取り決めがあり、住居、仕事、ヘルスケア、教育等において一定の水準を満たした状況で受け入れることになっています。
そういう関係で、別にとりわけ教会がしゃしゃりでなくとも?新しい生活を始めることができることが多いのです。
ところが、今回のロシアによるウクライナ侵略では、非常に短期のうちに三百万人の難民を生み出しました。これらの難民となったウクライナ人の人たちは、ヨーロッパ各国はもとより、日本等にまで逃れていっています。
これらの難民の多くは、国連を経由するところまでいかないで、そのまま国境に押しかけています。なんというか、火事から飛び出してきた住民のような状態なわけです。
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Myndin er ur Island.is
ヨーロッパとはいえ、地続きではないアイスランドにもそのようなウクライナ難民の人たちが到着し始めました。三月上旬のこちらへきた難民の人たちは百人弱でしたが、これらの人たちのほとんどは、家族や親戚がこちらで暮らしており、そういう「つて」があってやってきた人たちでした。
しかしその後、特にアイスランドには繋がりがない人たちもやってくるようになり、今現在は170人ほどの人たちがレイキャビク市内のホテルに滞在しています。ちなみにこのホテルは、政府が難民の人たちのために借り上げているものです。
政府関係の担当者の筋によると、四月には300人程度の難民の到着が予想され、さらに夏までには1500ー2000人に到達するだろう、とのこと。
そういう状況の中で、アイスランド国内ではウクライナ難民受け入れの機運が高まっています。これは官民を問わず、というか、ウクライナ人の家族を持つ人たちとかの、プライベートなモチベーションを持つ人たちが先に立ち、政府が後から付いていくような感があります。
加えて、もちろん赤十字やその他の民間の団体やグループ、個人も救済・支援活動に参集しています。
教会も早い段階から救済・支援活動を始めることを決めており、どのように行うかを検討していました。というか、支援することは決まっていたのですが、その後の具体案となると顔を見合わせてしまうようなところがありました。
で、私と同僚のアニー牧師は、移民ケア牧師ですので、立場上からも声を上げる義務を感じ、いくつかの提案を教会上部にしたわけです。そして案の定、私らが教会としての救済・支援活動の責任者とされてしまいました。
いや、別に嫌ではないですし、喜んで受けさせてもらいます。ただ単純に仕事量は「ダブル」になったと言っても過言ではないです。通常の職務はそのままあるわけですから。ついでに、なんの手当も付きません。
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美しいキーウの夜景
Myndin er eftir Eugene@unsplash.com
仕事始めに、すでに積極的な活動を展開しているIceland for Ukraineという、民間団体の集まりに参加してみました。とある広告代理店が、社員食堂とホールを、平日の午後六時以降、グループの集まりのために開放してくれていて、そこに難民の人たちと支援者が集まってきます。
私が行った時には、80人くらいがすし詰めに近い状態で群れていました。そこでは、食事もできるし、冬用のアノラックとかの不足している衣類の配布を受けたり、子供たちはゲームをしたりすることもできます。
ですが、一番大切な要は、互いに会い、情報交換をしたり、相談事をしたりすることのようでした。とにかく、言葉がわからないと難しいことが多いですからね。実際に「会う」というのは大切なことです。
このグループの中心にいるのは、スヴェインさんという男性ですが、職業的にはお医者さんだそうです。奥さんがウクライナの人ということで、スヴェインさん自身、ロシア語ができます。
ちなみにウクライナ人の多くがロシア語も話せますが、皆ではないそうです。ロシア語とウクライナ語は親戚言語ですが、ノルウェー語とスウェーデン語のように勝手に互いが話しても通じる、というところまでは近くないようです。
このスヴェインさんは、ある意味で天才的な能力を持っているように見受けました。この団体、単にアイスランドのウクライナ難民の救済だけではなく、今、まだウクライナにいる人たちと連絡を取り、フライトチケット代をサポートしたり、必要なヴィザを取得を助けたりすらしてるとのこと。
さらに、二百人に達するボランティアを、きちんと仕事別にグループ分けしたり、ローテーションを組んだりしていて、まあ驚く限りです。冗談ではなく、教会の若者たちをここに一ヶ月ほど参加させたら、非常に多くの知識、ノウハウや体験を得ることができるだろうと考えましたし、それを後で提案しました。
このようなグループの集会を訪問してみることは、私たちにとっても意味があります。一番感じるのは「熱気」です。ここには「やるんだ」という気概を持った人たちが集まっています。当然のことですが、やる気とエネルギーに満ち満ちているわけです。
正直言って、あまり教会では感じることのない雰囲気です。残念ながら。
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Myndin er ur Unicef.or.jp
この訪問では、他にもいくつか稀有な体験をしたり、気がつかされたことがありました。それは、また追々ご紹介していきたいと思います。
この後しばらくは、ブログの更新が不定期になったり、あるいは短い内容のものを細かく更新することになるかもしれません。このような事情でかなり手一杯になっていますので、ご理解をいただきたく思います。
日本でも、ウクライナ難民の人たちが支障なく受け入れられることを願っています。
そしてなにより、戦火が一刻も早く鎮まりますよう。
*これは個人のプライベート・ブログであり、公的なアイスランド社会の広報、観光案内、あるいはアイスランド国民教会のサイトではありません。記載内容に誤りや不十分な情報が含まれることもありますし、述べられている意見はあくまで個人のものですので、ご承知おきください。
藤間/Tomaへのコンタクトは:nishimachihitori @gmail.com
Church home page: Breidholtskirkja/ International Congregation
Facebook: Toma Toshiki
気がつけばすでに三月中旬を通り越して下旬に入りつつあります。ということは、日本では春休み?っていうか、卒業式とかの季節ですか?毎年、春にはいささかの季節感の「ズレ」を感じます。
このところ仕事が忙しくなり、あまり周囲を見回している時間がなくなっています。忙しくなっている理由は非常に単純で、「ウクライナ難民」です。
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キーウ(キエフ)のペチェールスク大修道院
Myndin er eftir Ganna_Aibetova@unsplash.com
私はアイスランド国民教会の牧師ですが、教区牧師ではない特別職の移民担当牧師です。最近十年くらいは、実際上の「難民担当牧師」になっています。「担当」というのは、あまり良い言葉ではないですね。「難民ケア牧師」と言った方が良いでしょうか?
ですが、「難民」といっても、実際には個々人で難民申請をする「庇護申請者」Asylum seekersのケアがメインで、国連関係を通して集団でやってくる「クオータ難民」にはあまり関知していません。
クオータ難民は、政府が受け入れを決定して迎えるのですが、国際条約上の取り決めがあり、住居、仕事、ヘルスケア、教育等において一定の水準を満たした状況で受け入れることになっています。
そういう関係で、別にとりわけ教会がしゃしゃりでなくとも?新しい生活を始めることができることが多いのです。
ところが、今回のロシアによるウクライナ侵略では、非常に短期のうちに三百万人の難民を生み出しました。これらの難民となったウクライナ人の人たちは、ヨーロッパ各国はもとより、日本等にまで逃れていっています。
これらの難民の多くは、国連を経由するところまでいかないで、そのまま国境に押しかけています。なんというか、火事から飛び出してきた住民のような状態なわけです。
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Myndin er ur Island.is
ヨーロッパとはいえ、地続きではないアイスランドにもそのようなウクライナ難民の人たちが到着し始めました。三月上旬のこちらへきた難民の人たちは百人弱でしたが、これらの人たちのほとんどは、家族や親戚がこちらで暮らしており、そういう「つて」があってやってきた人たちでした。
しかしその後、特にアイスランドには繋がりがない人たちもやってくるようになり、今現在は170人ほどの人たちがレイキャビク市内のホテルに滞在しています。ちなみにこのホテルは、政府が難民の人たちのために借り上げているものです。
政府関係の担当者の筋によると、四月には300人程度の難民の到着が予想され、さらに夏までには1500ー2000人に到達するだろう、とのこと。
そういう状況の中で、アイスランド国内ではウクライナ難民受け入れの機運が高まっています。これは官民を問わず、というか、ウクライナ人の家族を持つ人たちとかの、プライベートなモチベーションを持つ人たちが先に立ち、政府が後から付いていくような感があります。
加えて、もちろん赤十字やその他の民間の団体やグループ、個人も救済・支援活動に参集しています。
教会も早い段階から救済・支援活動を始めることを決めており、どのように行うかを検討していました。というか、支援することは決まっていたのですが、その後の具体案となると顔を見合わせてしまうようなところがありました。
で、私と同僚のアニー牧師は、移民ケア牧師ですので、立場上からも声を上げる義務を感じ、いくつかの提案を教会上部にしたわけです。そして案の定、私らが教会としての救済・支援活動の責任者とされてしまいました。
いや、別に嫌ではないですし、喜んで受けさせてもらいます。ただ単純に仕事量は「ダブル」になったと言っても過言ではないです。通常の職務はそのままあるわけですから。ついでに、なんの手当も付きません。
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美しいキーウの夜景
Myndin er eftir Eugene@unsplash.com
仕事始めに、すでに積極的な活動を展開しているIceland for Ukraineという、民間団体の集まりに参加してみました。とある広告代理店が、社員食堂とホールを、平日の午後六時以降、グループの集まりのために開放してくれていて、そこに難民の人たちと支援者が集まってきます。
私が行った時には、80人くらいがすし詰めに近い状態で群れていました。そこでは、食事もできるし、冬用のアノラックとかの不足している衣類の配布を受けたり、子供たちはゲームをしたりすることもできます。
ですが、一番大切な要は、互いに会い、情報交換をしたり、相談事をしたりすることのようでした。とにかく、言葉がわからないと難しいことが多いですからね。実際に「会う」というのは大切なことです。
このグループの中心にいるのは、スヴェインさんという男性ですが、職業的にはお医者さんだそうです。奥さんがウクライナの人ということで、スヴェインさん自身、ロシア語ができます。
ちなみにウクライナ人の多くがロシア語も話せますが、皆ではないそうです。ロシア語とウクライナ語は親戚言語ですが、ノルウェー語とスウェーデン語のように勝手に互いが話しても通じる、というところまでは近くないようです。
このスヴェインさんは、ある意味で天才的な能力を持っているように見受けました。この団体、単にアイスランドのウクライナ難民の救済だけではなく、今、まだウクライナにいる人たちと連絡を取り、フライトチケット代をサポートしたり、必要なヴィザを取得を助けたりすらしてるとのこと。
さらに、二百人に達するボランティアを、きちんと仕事別にグループ分けしたり、ローテーションを組んだりしていて、まあ驚く限りです。冗談ではなく、教会の若者たちをここに一ヶ月ほど参加させたら、非常に多くの知識、ノウハウや体験を得ることができるだろうと考えましたし、それを後で提案しました。
このようなグループの集会を訪問してみることは、私たちにとっても意味があります。一番感じるのは「熱気」です。ここには「やるんだ」という気概を持った人たちが集まっています。当然のことですが、やる気とエネルギーに満ち満ちているわけです。
正直言って、あまり教会では感じることのない雰囲気です。残念ながら。
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Myndin er ur Unicef.or.jp
この訪問では、他にもいくつか稀有な体験をしたり、気がつかされたことがありました。それは、また追々ご紹介していきたいと思います。
この後しばらくは、ブログの更新が不定期になったり、あるいは短い内容のものを細かく更新することになるかもしれません。このような事情でかなり手一杯になっていますので、ご理解をいただきたく思います。
日本でも、ウクライナ難民の人たちが支障なく受け入れられることを願っています。
そしてなにより、戦火が一刻も早く鎮まりますよう。
*これは個人のプライベート・ブログであり、公的なアイスランド社会の広報、観光案内、あるいはアイスランド国民教会のサイトではありません。記載内容に誤りや不十分な情報が含まれることもありますし、述べられている意見はあくまで個人のものですので、ご承知おきください。
藤間/Tomaへのコンタクトは:nishimachihitori @gmail.com
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