日々の記憶
建築家 筒井紀博のブログ
KIHAKU's blog



ヨーロッパ出張の際、ほんの少し足を伸ばして念願だったアスプルンドのスクーグスチルコゴーデン(森の墓地)を訪れました。

アスプルンドは「北欧モダンの父」とも呼ばれるスウェーデンの建築家。
彼の作品の中でもとりわけ魅力を感じていたのが、このユネスコの世界遺産にも登録されたスクーグスチルコゴーデンです。

この地を訪れてまず最初に感じたのは、自然に対して敬意を表しつつ、建築を見事に融合させているランドスケープデザイン。
硬質なモノだけはない表現。
自然に対して逆らうことなく、空を意識させ、人の心にその場での事象を浸透させます。


(森の墓地の敷地内に最初に完成した「森の礼拝堂」1920年)

アスプルンドが生涯かけて作り上げてきた空間。
ダイナミックな演出に目を奪われがちですが、そこには粘り強く緻密に設計された無数のディテールも存在します。


(開き扉の使いやすさを考慮し、引く側と押す側の高さを変えている)

この膨大なディテールの熱意・・・その場にいると押しつぶされるような錯覚に陥ります。

施設の建設は実に25年にも及びます。
最後に竣工したのは「森の火葬場」。


(森の火葬場内の礼拝堂)

集大成とも呼べる「森の火葬場」の竣工後すぐ、アスプルンドは55歳という若さでこの世を去ります。


(森の火葬場横にあるアスプルンドの墓)

その引き金は・・・
ものづくりとして、様々な要因を想像せざるを得ないほどに、アスプルンドの膨大な痕跡が残された空間でした。

人の限界、死生観・・・おもわず考えこんでしまうほどの経験。
建築はいったいどこまで人の心に影響を及ぼすことができるのか?

味わうほどに深くなる建築。

このことを改めて考えさせられる経験となりました。

建築家のブログランキングもよろしければお願いします

コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )




夏季休暇中、一泊二日のスケジュールで新潟と山形を訪れました。

日本海沿岸を走る時間が多く、そこには東京ではなかなか感じることのできない空がありました。
都会の切り取られた空ではなく、低く広大な空。
地球の球体が感じられるほどの広がり。

自らの存在がとても小さなスケールとして感じられ、霧散してしまいそうな。。。

それはそれで心地良さそうですが、現代社会において責任ある立場にいると、そうも言っていられません(笑)
ここに人としてのスケール感をきちんと感じることができる空間、建築があると、自らの存在意義も明確になるように思えます。
空のもつ心地よさと人としてのスケール感。
これを表現する建築はどのようなものなのか。

またひとつ、面白いテーマを見つけてしまいました。

建築家のブログランキングへ

コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )




先日、出張で青森県を訪れました。
レンタカーを借りて、下北半島をひた走り・・・

ちょうど陸奥湾沿岸を走っていた時、夕陽が湾に沈む光景を見ることができました。
クルマを停め、静かに夕陽を眺める。
幻想的で、でもどこか懐かしい光景。

ものの10分ほどの時間だったと思うのですが、なんとも贅沢な時です。

夕陽が落ちるのをノンビリと眺めたのなんて、何年ぶりだろう・・・いや、何十年ぶりだろう。
深い感動と共に心が洗われるような不思議な感覚です。

建築では表現できない自然の偉大さ。
その偉大さに気づき、意識できるような空間を創ること・・・
建築そのものではなく、その空間での経験が感動を招く・・・
ここに目指すべき建築があると再認識した瞬間でした。

建築家のブログランキングもどうぞ

コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )




今年のゴールデンウィークは八ヶ岳でのんびりと過ごしました。

標高1000mを超える高原。
空気が薄いのか、少し運動しただけで息切れしてしまいましたが(運動不足も多分に影響してますが)心地よい気候です。

都心からわずか2時間弱で日常を忘れることのできるリゾート。
マルチハビテーションの地としては理想的ですね。

※マルチハビテーション
「都会と田舎」のように2つ以上の生活拠点を持つこと

私自身がこのマルチハビテーションライフに興味があり、思うところも多いため、当事務所ではセカンドハウス(別荘)の設計なども積極的に受けております。
ご興味のある方、ぜひご相談くださいませ。

建築家のブログランキングもどうぞ

コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )




週末、風雨の強い天候の中、午後から晴れるという天気予報を信じて箱根の彫刻の森美術館を訪れました。
実は初めて訪れます。

美術館に到着した時はまだ小雨。
霧も強く、屋外展示の多い美術館としてはちょっと辛い状況でしたが、徐々に天気も回復し、午後からは青空も見えるほどに回復しました。

午前の天気の影響もあってか来場者も少なく、のんびりと鑑賞。

中でも企画展である「笹口悦民写真展 無言の恍惚」は刺激を受けました。
(最終日だったので現在は催されておりません)

独特の世界観を持つ写真、それらは笹口さんの個性から出るフィルターを介しつつも、被写体のあるべき姿を理解された上で写真におさめているように見て取れました。

建築もかくあるべき。

建築家の恣意に陥ることなく、人や環境をきちんと理解した上で空間を誕生させること。
笹口さんの写真に触れ、改めて自分の目指すべき建築を再認識できる瞬間でした。

「物言わぬ光という言語との対話に、観る者の体温は少し上がる」

展覧会の説明文にはこのように書かれていました。
そう、決して熱いものに触れる表面上の熱さではなく、体内から発する温度なんですよね。
不思議な感覚です。

今後も笹口さんの写真展があれば、ぜひ訪れたいですね。

建築家のブログランキングへ

コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )



« 前ページ