日々の記憶
建築家 筒井紀博のブログ
KIHAKU's blog



ピアニストのための音楽室のある戸塚Tハウス、無事に地鎮祭を迎えることができました。

駅から近い住宅街の中に位置する戸塚Tハウスの敷地。
周囲が住宅街なだけに当然防音に対しては気を使わなければなりません。

木造でありながらもD−50の遮音性能を持つ空間として計画されています。
D−50とは簡単に言うと50dB分の遮音性能を意味します。

ただ遮音するだけではなく、当然演奏する人にとって心地よく広がる音も目指す・・・
これがなかなか難しいんです。
演奏する人によって好みが分かれるところ・・・一般的な教科書通りの仕様から、どのように演奏者の好きな音響空間へとアレンジするか、これは本人でなければわからない領域でもあります。

設計段階では、この最終的なアレンジをしやすい空間を試みています。
自分流にカスタマイズしやすい空間、この作業をクライアント自らが行うことによって、より愛おしい空間へと変わり、自分の空間という意識も高まるのではないでしょうか。

戸塚Tハウスの現場もいよいよこれから。

クライアントはじめ、現場の皆さんとも協力しながら理想の空間を目指したいと思います。

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ヨーロッパ出張の際、ほんの少し足を伸ばして念願だったアスプルンドのスクーグスチルコゴーデン(森の墓地)を訪れました。

アスプルンドは「北欧モダンの父」とも呼ばれるスウェーデンの建築家。
彼の作品の中でもとりわけ魅力を感じていたのが、このユネスコの世界遺産にも登録されたスクーグスチルコゴーデンです。

この地を訪れてまず最初に感じたのは、自然に対して敬意を表しつつ、建築を見事に融合させているランドスケープデザイン。
硬質なモノだけはない表現。
自然に対して逆らうことなく、空を意識させ、人の心にその場での事象を浸透させます。


(森の墓地の敷地内に最初に完成した「森の礼拝堂」1920年)

アスプルンドが生涯かけて作り上げてきた空間。
ダイナミックな演出に目を奪われがちですが、そこには粘り強く緻密に設計された無数のディテールも存在します。


(開き扉の使いやすさを考慮し、引く側と押す側の高さを変えている)

この膨大なディテールの熱意・・・その場にいると押しつぶされるような錯覚に陥ります。

施設の建設は実に25年にも及びます。
最後に竣工したのは「森の火葬場」。


(森の火葬場内の礼拝堂)

集大成とも呼べる「森の火葬場」の竣工後すぐ、アスプルンドは55歳という若さでこの世を去ります。


(森の火葬場横にあるアスプルンドの墓)

その引き金は・・・
ものづくりとして、様々な要因を想像せざるを得ないほどに、アスプルンドの膨大な痕跡が残された空間でした。

人の限界、死生観・・・おもわず考えこんでしまうほどの経験。
建築はいったいどこまで人の心に影響を及ぼすことができるのか?

味わうほどに深くなる建築。

このことを改めて考えさせられる経験となりました。

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