四季おりおり

自然散策そして音楽のことなど・・・ 
2010年秋より里山・谷戸歩きで見た風景や蝶・花の紹介が増えてきました。

棲み分けについて

2009-09-28 14:55:00 | 秋の虫
クツワムシは、本州、四国、九州、壱岐、対馬、韓国、中国などに分布します。その仲間にタイワンクツワムシというのがいることを知りました。静岡以南の太平洋側(西伊豆、天竜川河口付近、愛知県、広島県の一部など)、四国南部、九州、八丈島、南西諸島、台湾、アジア熱帯域などに生息しています。

愛媛県での調査によると、タイワンクツワムシの分布は県の南西部の海岸沿いに局限されており、クツワムシの分布域とは明確な境界線で区切られています。その様子は、四国全体のクツワムシに押されギリギリ海岸線で踏みとどまっているようにも見受けられます。しかし、クツワムシが飛べないのに対してタイワンクツワムシは飛翔能力に長けていて、八幡浜市ではクツワムシが減りタイワンクツワムシの分布が拡大しているという研究報告もあるそうです。
両者の共存域がほとんど認められないことから、その鳴き声がお互いを敬遠しているのではないかと勝手に想像するのですが、なぜ分布が重ならないかの解明は今後のテーマのようです。

蝶の世界では、ギフチョウとヒメギフチョウが棲み分ける分布の境界線が有名で、リュードルフィア・ラインと呼ばれています。
ギフチョウは、コシノカンアオイを食草(幼虫が主に食べる植物の種類)とし、静岡及び山形より西の地方に分布するのに対して、ヒメギフチョウはウスバサイシンを食草とし、神奈川県、長野県、福島県、山形県より東側・北側に分布しています。この両種もほとんど共存域がなく、姫川流域など一部が知られるに過ぎません。

クツワムシとタイワンクツワムシ、ギフチョウとヒメギフチョウは近縁種のため雑種が生まれると種の保存上不利になり共存しないのだと思います。
それに対して、クマゼミとミンミンゼミとはさほど近縁種とは思われませんがほとんど共存していません。この両者の声の質が類似するから共存できないのだとの説があります。
また、アブラゼミとクマゼミは、場所的に棲み分けることなく同じ場所に生息していますが、小田原での観察では早朝にクマゼミ、10時半以降にアブラゼミという風に時間による「棲み分け」がなされます。
場所により棲み分けるほどではないが、「あいつらとは一緒に鳴きたくない」のでしょうか。
似たもの同士の平和共存は、種の保存においては難しい問題のようで、様々な方法で棲み分けを行っていて興味深いものがあります。



ヒガンバナの季節も終わり、近くではセミの声も聞かれなくなりました。
コメント (2)

クツワムシの観察

2009-09-17 13:46:00 | 秋の虫
クツワムシは日没後にかなり暗くなってから鳴き始めます。9月7日の19時半頃、木もれびの森(相模原市)の遊歩道の橙色灯近くで観察したところ、2匹鳴いており、近くには雌を含めて合計4,5匹見付けました。かなりの密度で集っているので驚きました。クツワムシは遺伝により緑色型、褐色型が現れると言われていますが、そのどれもが褐色型でした。
2005年に別の場所で緑色型を見ているので、9月10日に真っ暗闇のその場所辺りに懐中電灯を持って行ったところ、褐色型と緑色型を見付けました。その日に見た4匹のうち3匹が褐色型でした。


クツワムシ(褐色型、9月10日)


クツワムシ(緑色型、9月10日)

小林正明著、「秋になく虫」、信濃毎日新聞社(1990)によると、クツワムシの体色には3種類あり、静岡では緑色30、赤褐色50、灰褐色20の割合だったと書かれていますが、今回の観察では褐色型の割合が大きいという印象でした。ただし、鳴いているのに見付けられなかったのが2匹いたので、それが緑色だった可能性もあります。
クツワムシは、懐中電灯で照そうとも近づいてフラッシュ撮影しようとも、音を立てて驚かせることさえしなければ逃げもせずにそのまま鳴き続けます。一旦鳴き止んでもしばらくすれば再び鳴き始めます。葉の上で歩きながら鳴くのでとても見付けやすく撮影しやすい種類で、毎度のことながらその大らかさには関心させられます。
コメント (4)

虫たちの合唱(2)

2006-08-16 14:37:00 | 秋の虫
近くの自然保存林「木もれびの森」にいくと、雑木林の下草の上にクツワムシ(ガシャガシャと鳴く)がいます。懐中電灯を照らされても気にしないくらいおおらかな性格で、鳴きながら葉の上を歩く習性があります。
クツワムシはある程度の面積を持った、昔からの自然が受け継がれた場所でないと見られないようです。

それぞれの虫は、好む環境が異なります。いそうな場所に行き、秋の虫に耳を傾ける日暮れ後の散歩もいいものです。

<最近聞かれなくなった秋の虫>
30年くらい前に、酒匂川のススキの土手や伊勢原の草木の生えた斜面にはマツムシ(チンチロリンと実に音楽的な声でなく)がいましたが、相模大野では聞くことができません。
昔、練馬区の住宅地でも普通に見られたウマオイ(スイッチョ、スイッチョと鳴く)は、最近どういうわけかお目にかかりません。
少年時代には、手で捕まえて虫かごで飼って鳴き声鑑賞をしたものです。懐かしい限りです。
マツムシやウマオイの鳴いている場所があったら教えてほしいものです。



コメント (2)

虫たちの合唱(1)

2006-08-15 20:33:00 | 秋の虫
いよいよ秋の虫たちが合唱する季節がやってまいりました。僕が一番好きな季節、と言っていいくらいです。

相模原の住宅地では、ツズレサセコオロギとエンマコオロギがいちはやく先週から鳴きはじめました。
ツズレサセコオロギは、庭の枯れ草の間や建物の隠れたところなどの薄暗い場所を好み、低い声でリー・リー・リーと晩秋まで鳴いています。
エンマコオロギは、畑地や草を刈った土手、広い庭の一角など、明るくやや乾いた場所を好み、鈴を転がすようにリリリリ・・と鳴きます。

もうまもなくアオマツムシが鳴き始めます。
アオマツムシは、大正時代に中国大陸から入り込んだコオロギ科の昆虫で、駅前の樹木やにぎやかな街路樹でもかまうことなく、日本に古来からいた秋の虫たちをはるかにしのぐ大きな、高い声でリーンリーンと連続して鳴きます。
雑木林にいくと、林中が響き渡るような大合唱が繰り広げられます。大きな木を好みます。
そのほか、住宅地では、静かにチン・チン・チン・・・と鳴くカネタタキを耳にすることができます。カネタタキは、庭の植え込みのやや高いところを好むようです。

虫たちの声はこちらで聞くことができます。
虫の音WORLD

コメント (4)