四季おりおり

自然散策そして音楽のことなど・・・ 
2010年秋より里山・谷戸歩きで見た風景や蝶・花の紹介が増えてきました。

夕暮れの蝉時雨と虫時雨

2009-09-17 12:32:00 | セミ
相模大野から北里大学病院に行く途中にある永久保存林「木もれびの森」では、日暮れ時に何種類かのセミと秋の虫たちの同時に鳴く合唱を楽しむことができます。一昔前にお気に入りの場所を見つけ、2004、2005年には録音したり知人を案内したりしました。今年は、久しぶりに9月6日の夕方「木もれびの森」を訪問。快晴だが西の空には雲が横たわり、夕陽は隠れていました。

♪セミたちや秋の虫たちの声の移り変わり(9月6日)♪♪

森に到着すると、雑木林の高いところで賑やかなツクツクボウシにヒグラシの声も混ざりアブラゼミもところどころにいた(17:21)。
やがてアブラゼミが消えた(17:38)。
気が付くと、秋の虫、アオマツムシのリーーンという声が木の高いところ一帯に聞こえ始めた。やがてツクツクボウシ、アオマツムシ、それにヒグラシとハシブトカラスが加わる見事な混声合唱になった(18:00)。
日没(18時02分)
しばらくその状態が続いたが、やがてほの暗くなり、アオマツムシの声がどんどん増し、遠くにツクツクボウシとヒグラシが聞えるだけになる(18:12)。
雑木林のあちこちの草むらでクツワムシがガチャガチャ鳴き始めた(18:14)。
ヒグラシも完全に消えて、樹上にアオマツムシ、地上にクツワムシの2種類の真っ暗な世界になった(18:22)。


木もれびの森

この日没前後の1時間の間に徐々に鳴く虫の声の組み合わせが変わっていき、真っ暗になる寸前にセミたちと秋の虫の声が重なる時間帯が少しだけ現れ見事な合唱となります。それを聞くのが毎年の楽しみです。
真っ暗になったあとの森の中は、アオマツムシとクツワムシの鳴き声が延々と続きます。
森を出ると、畑や草地にはエンマコウロギ、住宅地の庭ではアオマツムシ、ツズレサセコウロギ、カネタタキが鳴いていました。

セミ特集(その2)関東のクマゼミ事情(2009)

2009-08-27 17:08:00 | セミ
小田原ではクマゼミを毎年聞くことができます。クマゼミは関東で分布を拡大していると言われていますが、その辺について書きます。
<小田原のクマゼミの様子>
小田原市の酒匂川近くでは7月29日にクマゼミが鳴き始めました。8月18日に数えたところ、敷地内に20本位あるソメイヨシノの並木に7匹が同時に鳴いている状況で、毎年これ位の密度で鳴いています。10時半頃に鳴き止み、アブラゼミと交代し、昼や夕方はアブラゼミ一色となります。生息数はアブラゼミ優勢です。
小田原の酒匂川付近でクマゼミを聞くようになったのは10年位のような気がします。小田原市内に住む知人と話をしていたら、「小田原市の南町(小田原城の南)でクマゼミを初めて確認したのは17年前のことだった。子供が小学校3年の時に、クマゼミの脱け殻を見つけて夏休みの宿題を作ったのでよく覚えている」と話してくれました。
<クマゼミとミンミンゼミの交代>
小田原市街地の朝は、クマゼミだけが鳴いていてミンミンゼミは聞かれません。クマゼミが進出するとミンミンゼミは不在になる傾向があり、関西では平地にクマゼミ、郊外の山地でミンミンゼミという棲み分けになっていることが知られていますが、小田原の平地ではクマゼミとアブラゼミの世界になっています。
ところが、大磯駅前のエリザベスサンダースホーム敷地内の森ではクマゼミとミンミンゼミが共存して鳴いていました(2007、2008年確認)。ここでは、まだ追い出しには至っていない状況です。
<クマゼミの生息密度>
10年ほど前のことですが、冨士市では1本の木に鈴なりに止まって鳴いており、泣き止むと飛び立つ姿がひっきりなしに観察されましたが、小田原や大磯ではクマゼミが1本の木に多数群がるほどの密度ではありません。
<クマゼミの分布拡大について>
西から分布を広げたクマゼミは大磯までは地続きで分布しているのは確実と思います。それではどこまで分布が広がっているのでしょうか。
今住んでいる相模大野の緑地帯や、自分の足でしばしば行く機会のある川崎市の向ヶ丘遊園、武蔵小杉、目黒区自由が丘、港区神谷町、品川区大崎の緑地帯ではクマゼミを聞いたことがありません。
公的な調査では、環境庁が国勢調査「身近な生き物調査」でクマゼミの分布を調べています。それによると、東京や神奈川では点々と鳴いている地区が分布しています。
http://www.nacsj.or.jp/project/ss2007/result_02.html
ウェザーニュース社は携帯サイト「ウェザーニュース」にて、全国の参加 者の協力のもと、クマゼミの生息分布を調査した結果(2008.8)から、「生息の北限 が“関東南部”と言われていたクマゼミが、温暖化などの影響により、“関東北部~北陸”に変化し、生息範囲が拡大していたことが判明した」と報じました。
http://weathernews.com/jp/c/press/2009/090805.html
この記事は多く引用されていますが、クマゼミは東京でさえ滅多に聞くことのないセミなので、北限が北関東といわれても納得できないところがあります。
そこで、セミの分布に詳しい「群馬県立ぐんま昆虫の森」の方にお尋ねしたところ、「都内の代々木公園や上野公園でクマゼミが発生したのは、10年くらい前です。代々木公園では、造成の際に四国(愛媛県)から樹木を移植し、それに伴い持ち込まれ定着したものと考えられます」とのコメントをいただきました。また、現在、北関東でクマゼミの定着が確認されている場所は、群馬県館林市と茨城県の取手市であることも教えていただきました。
相模原公園では、お互いに離れた数本の木にクマゼミが1匹ずつ鳴いていましたが(2007,2009年確認)、住宅地や広大な雑木林ではクマゼミを一度も聞いたことがありません。関東地方でのクマゼミの生息地は、局地的であり、「ところどころ」というのが現状で、北関東まで広く定着している状態ではないようです。

僕は小田原でクマゼミの声を聞くのを毎年楽しみにしているわけですが、クマゼミだけになってしまったら「殺風景だろうな」とも想像します。地球温暖化が進み、クマゼミが定着する環境は関東地方でも整い、いずれ近い将来、クマゼミが広く定着すると予想されますが、もっと豊かな生活環境を好むニイニイゼミ、ツクツクボウシ、ヒグラシなどが失われないよう自然を大切にしていきたいと思います。


キツネノカミソリ (8月14日)

写真は、相模大野の永久保存林「木もれびの森」にて撮影。近くではミンミンゼミやアブラゼミ、ヒグラシが聞かれました。

セミ特集(その1)今年のセミ事情(2009)

2009-08-27 17:06:00 | セミ
今年の関東南部では、7月14日頃に梅雨明け宣言が出されましたが、晴れたのも3日間で、24日までまたうっとうしい梅雨空に戻り気温も低めでした。入梅宣言は訂正版がきっと出る、と思っています。
<鳴き始め>
今年初めてセミを聞いたのは7月15日小田原でのニイニイゼミでした。
7月18日にはミンミンゼミ、ヒグラシを聞きました(相模大野)。
7月22日にはアブラゼミを初めて聞く(小田原)。
今年は、セミたちも夏が到来したのか半信半疑で鳴き始めたに違いありません。セミは羽化して1週間の短い命と言われています。雨が続くと何日間も鳴くこともできず、寿命を迎えることになりかねません。これは本能によるものとはいえ地上に這い出すにも決断力がいることだと思います。
小田原でのクマゼミは、夏も本格的になった7月22日から鳴き始めました。
<住宅地で生息するセミたち>
大崎の緑地帯では、朝一番でミンミンゼミが通勤者たちを迎えてくれます。これは僕にとっては嬉しい挨拶に聞えます。日中はアブラゼミが主で、ミンミンゼミ、ツクツクボウシ(8月12日に初めて確認)が混ざります。
相模大野の住宅地に囲まれた、背の大きい樹木のある公園でもアブラゼミとミンミンゼミの組み合わせが多い。最近、この近辺でもミンミンゼミが増えているような気がします。
ニイニイゼミやツクツクボウシは住宅地では聞かれず、もっと自然の色濃く残るところに行かないと出会えません。昔(昭和30年代)は雑木林も多く石神井の住宅地の庭にもよく飛んできたことを思い出します。
<雑木林のセミの様子>
相模大野の永久保存林「木もれびの森」を8月3日昼前に歩いたときには、アブラゼミが多く、ニイニイゼミが少しいましたが、何とツクツクボウシも少数鳴いていました。過去にニイニイとツクツクを同時に聞いたことはあっただろうか?今年はいつ夏が始まり秋が近づくのか分かりにくく、セミの季節感も大分狂っているのではないかと思います。
8月14日は朝雨が降り、止んだので11時頃「木もれびの森」にでかけたところ、曇りで薄暗くて夜明けだと錯覚したのか、杉の多い場所でヒグラシが多く鳴いていました。
8月27日、秋の空気を感じる晴れの日。「木もれびの森」を2度散歩しました。
8時半頃は、ミンミンとツクツクボウシ。アブラゼミはまだ鳴いていません。11時半頃は、林の外縁部はミンミンとアブラゼミが多いが、中ほどの雑木林ではツクツクボウシの多いところやヒグラシの多いところもあり、セミの多様性が保たれている様子でした。鳴いている場所がほの暗く涼しいとはいえ、ヒグラシは朝か夕方鳴くのではなかったのか?と不思議に思いました。


アメリカフヨウ (8月16日)

写真は相模大野の住宅地に植えられたアメリカフヨウで、花のサイズは20cmにもなります。初めて見かけました。淡いピンクの花もあります。

大磯の蝉たち

2007-08-31 14:17:00 | セミ
8月21日、大磯駅を下りたら、エリザベスサンダースホームの森ではクマゼミとミンミンゼミが鳴いていました。クマゼミは小田原より東の大磯でも定着して生活しています。
照ヶ崎海岸にアオバトを見た帰りに、エリザベスサンダースホームの森に隣接する愛宕神社を訪れました。すると、セミを捕虫網で5,6匹も捕まえてジージー言わせているたおじさんが階段を下りてきたので
「クマゼミですか?」と尋ねると
「そう、クマゼミはセミの王様だ」との答えが返ってきました。
愛宕神社の狭い境内には、それでもなおクマゼミが何匹も鳴いていました。よく見ると、桜の木に止まって胴体を前後させながら鳴く姿をすぐに2匹見つけました。


鳴いているクマゼミ

時刻は10時35分ころです。愛宕神社ではクマゼミだけが鳴いていました。しかし、見渡すとすぐに目に付くのはアブラゼミで、かなり密集して止まっています。


アブラゼミ

ふと近くを見ると、桜の木の下の方に、2匹のミンミンゼミが止まっていました。


ミンミンゼミ

ミンミンゼミやアブラゼミは他のセミがいなければこの時間帯には鳴くものですが、ここではクマゼミが優勢のため、他のセミは鳴りを潜めてじっと静かに待っているようです。どこかに逃げ出さずにじっと耐えて。
それにしても3種類のセミが何本かの桜の木に過密に共存しているのを見るのは初めて。その際の力関係は、クマゼミ、ミンミンゼミ、アブラゼミの順ではないでしょうか。よほどここの環境はセミたちに適しているのだと思います。
大阪など西日本では、平地にクマゼミ、丘陵にミンミンゼミという棲み分けが成立していますが、大磯で両者が混在して生息しているのは、ここミンミンゼミの世界にクマゼミが東進して入り込んでからの時間経過が少ないせいではないかと思います。
今までの小田原での観察経験からいうと、ここでもクマゼミが鳴き止んだ後、アブラゼミが延々と日暮れまで鳴くのだろうと思います。

蝉時雨(2)クマゼミ、ミンミンゼミ、ヒグラシ

2007-08-26 12:33:00 | セミ
セミについては、どのような環境・場所に棲息するのか、全国の分布はどうなっているのか、セミ同士はどのような棲み分けをしているのか、などということに特に興味を持っています。今回は、クマゼミ、ミンミンゼミ、ヒグラシです。
アブラゼミは、8月21日に掲載しました(蝉時雨(1))。

<クマゼミ>
クマゼミは南方からやってきた蝉で、伊豆半島の西側、冨士市辺りではものすごい勢いで鳴きます。温暖化に伴なって分布域が東進し、東京でも局所的に鳴いているという話も聞きます。
小田原でも毎年鳴いており、今年は7月24日に初鳴き。クマゼミもソメイヨシノ、ヒマラヤスギのどちらにもいます。8月上旬以降の晴れた日は特ににぎやか。しかし、大阪や静岡県冨士市の過密な賑わいぶりに比べればまばらな状態です。
小田原で昨年観察した結果では、クマゼミは朝早く鳴き、10時半頃にはアブラゼミと交代します。過密な大阪では、夕方も鳴くピークが現れると報道されていましたが、小田原では朝だけです。小田原の神社では、ケヤキ、クスノキで鳴いていました。クスノキは樟脳の原料となる木。クマゼミは樟脳を解毒する力をもっているのでしょうか。樹木の種類を問わないようです。
8月19日、相模原公園の2箇所でクマゼミを聞きました。相模原でクマゼミを聞いたのは初めて。相模原では他の場所で聞いたことがないので、植物の移植に伴なって公園にやってきたのではないかと思います。
8月21日午前7時~11時、大磯のエリザベスサンダースホームや愛宕神社ではクマゼミが優勢で、ミンミンゼミも一緒に鳴いていました。

<ミンミンゼミ>
ミンミンゼミは、背の高い木が生えている林や山間部に多くいます。冨士市ではクマゼミがいますが、ミンミンゼミはいません。関西地方では平地はクマゼミ、丘陵地帯ではミンミンゼミという風に棲み分けが行われているそうですが、同じ傾向です。
富士川を遡り山梨県に入ると、ミンミンゼミの世界になります。山梨県身延町の外れにある田んぼに接した自然林の山では、朝目覚めるとミンミンゼミの大合唱が繰り広げられます。
小田原ではクマゼミが優勢でミンミンゼミは押され気味で、昨年は8月下旬に少し出現した程度です。
都心にもミンミンゼミがいます。神谷町の八幡神社や自然遊歩道の高木では、朝早くから昼ごろまでミンミンゼミが鳴いています。夕方になるとアブラゼミがモノトーンで鳴き続けます。
相模原公園では、ミンミンゼミもクマゼミもいましたが、どちらも生息密度が低いので、まだ棲み分けるほどの状況ではないようです。
8月21日の朝、大磯のエリザベスサンダースホームの森では、クマゼミが優勢でしたが、ミンミンゼミも鳴いていました。ここは小田原の観察地よりも密度が高い状態ですが、棲み分けには至っていないようです。

<ヒグラシ>
8月12日、17時と18時に相模原の木もれびの森を通過したところ、杉の生えている薄暗い林ではヒグラシが合唱していました。そのほかアブラゼミも聞えました。
ヒグラシは、相模原市内でも、ある程度の面積があり、杉も生えるような薄暗い密な林だけに多く生活しています。後世までも、そのような林を市の永久保存林として受け継いでいってほしいと思います。