古い文書を整理していたら、2002年に「カーディフで見たカモメ」について書いたものが見つかった。そのまま載せておこうと思う(2021.8.4)
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2002年、カーディフで泊まったホテルから見える建物の屋上にカモメがいた。地面には、鳩が群がっている。何を食べようと狙っているのだろう。観察力が鋭い妻の記憶によると、カモメもパンを食べていたという。僕がなにより興味を懐いたのは、街中にカモメがいたことだった。日本では、街中を我が物顔で飛び回るのはカラス、と決まっている。カラスは、カアカアと騒ぎながら、高いところに止まり、地上の様子を伺ってはゴミなどを漁っている。カーディフでは、カラスの代わりにカモメがいた。高い所にいて地上を見ている。日本ではカラスが制空権を握っているところを、カーディフではカモメに置き換わっている感じだ。
カモメは、海にいるものだとずっと思っていた。ところが、昨年、つくし野の方にサイクリングし、帰りに境川沿いに走っていると、真っ白なカモメが一羽、川の流れに沿って上流へと静かに飛んでいった。この情景も鮮やかに覚えている。そのとき、カモメは内陸にも入ってくることを知った。
今年の4月下旬に富山県の氷見に行った。海に面したホテルの展望浴場から、富山湾が一望できた。そこに、一羽、また一羽とカモメが上昇気流に乗ってスイスイと目の前を通り過ぎていった。これが、一番カモメらしい光景だと思いながら、ゆったりとした気分で湯に浸かった。
カーディフのカモメ。この今までの僕の常識を打ち破る光景を見て、Yahoo UK & Ireland でイギリスのカモメについて調べた。友暁は「ケント州の海岸で日向ぼっこしているとカモメがいっぱい飛んでいた。カモメはSea Gullと呼んでいるよ」と言っていた。やはりイギリスでも普通は海にいるもので、万国共通のようだ。ところが、インターネットには「最近街にカモメが出没していて大変迷惑だ。カモメに餌をやらないように注意してください」という警告が見付かった。
では、イギリスにいるカモメにはどんな種類がいるのだろう。そのうち、何カモメが街にやってくるのだろう。
カモメには、世界中に普通に見られる「カモメ」(Common Gull, Mew Gull)という種類があり、これはイギリスにもいる。そのほか「セグロカモメ」の仲間がイギリスに1年中いるようだ。全地球的規模で、鳥の分布を図示しているサイトも見付けた。イギリスには、
http://www.eurobirding.co.ukというところに、世界中の鳥のことが調べられるサイトがある。それでイギリスに8月にいる可能性のあるカモメを洗い出したところ、Common Gull (カモメ)、Herring Gull(ウスセグロカモメ)、Lesser Black-backed Gull(ニシセグロカモメ)の3種が抽出された。
日本のカモメについては「カモメは、海の鳥だと思っていたら町田の市街地の境川にも現れるのを見て、興味をもって注意深く見ないと、自然を知りえないものだとつくづく思います」などというコメントに出会った。僕がつきみ野の辺りで見掛けたのもきっと「カモメ科カモメ」だろう。「カモメ」は、餌付けされ、不忍池にも多数きている。
さらに注目すべき記事に出会った。「Herring Gull(ウスセグロカモメ)は、産卵の時期ではないとき主に海岸にいるが、近年市街地や農耕地でも増えている。残物や漁港周辺に群がる(
http://www.eurobirding.co.uk)。」
「最新・カモメ情報」によると、日本でも、「セグロカモメ」や「オオセグロカモメ」のような大型カモメが普通の大きさの「カモメ」と一緒に不忍池に来ている。曰く「ここ数年のカモメ類の増加は著しい。不忍池に久し振りに来られた人は驚くかもしれない。カモはカモメの勢力伸張に完全に押され、減少気味。大型カモメは、以前は池の中央に浮いているだけだったが、最近はパンに餌付いている。」イギリスのカモメはパンを食べていたとなると、どうやらカーディフのカモメは「セグロカモメ」に近い種類らしい。
「カモメ識別ハンドブック」という本を買ってきた。その末尾に「日本で見られるセグロカモメの仲間について」という解説があり、最近の学説によると14の亜種に分類されている、とある。大きな括りとしてセグロカモメの仲間があり、地域によって羽、くちばし、足の色が微妙に異なっている。でも仲間だから、生活習慣などは共通していると見てもよいのではないか。都市に住み着き、パンを食べるセグロカモメ。この仲間でイギリスに住んでいるのがHerring Gull(
Larus argentatus, ウスセグロカモメ)である。カーディフで見たカモメはこのHerring Gullではないだろうか。
Herring Gull
http://www.birdcheck.co.uk/frame.htm
そこで、この推定が正しいことを、証拠を持って確かめたい。現地に滞在中の真穂子に、Colchesterにいるカモメの写真をぜひ撮ってほしいのである。それも、同じような状況でということで、建物の中の小さな公園などで鳩が多く集まるところに飛来してパンなどの餌を食べる大きなカモメを見付けてほしい。なお、僕たちがカーディフで見たのは、8月で今は11月だが、Herring Gullは、イギリスには1年中いる種類なので、今でも同じように鳩と同じところにいて餌を食べているのではないかと思う。
今日、妻と二人で歩いて相模原公園に行き、その帰りに近くの貯水池(横浜水道局相模原沈殿池)に行った。すると、カモがたくさんいるのを観察している女性が二人。
「あそこのカモはなんと言う種類ですか?」と尋ねると、
「マガモですよ」という。でも興味は、対岸のアオサギに注がれているようだ。
「アオサギが向こうに2羽いますよ。双眼鏡で見て御覧なさい」
そういって僕たちに双眼鏡を覗かせてくれた。見ると水色と灰色の中間のような色をした鷺が、1羽は右を向き、もう1羽は左を向いてスクッと立っていた。
「見えました。なかなかいいですね。どうもありがとうございました」
カモも色々な種類が来ていて楽しい。これから色々な野鳥の種類を見分けるなどしていきたいとは思うが、今はやはりカーディフで見たカモメのことが気になる。
妻と一緒に行動していても興味の対象が違っているのもまた面白いものだと言い合っている。
(2002年11月4日)