四季おりおり

自然散策そして音楽のことなど・・・ 
2010年秋より里山・谷戸歩きで見た風景や蝶・花の紹介が増えてきました。

羽化したキタキチョウの後翅裏目視による雌雄識別

2014-10-29 15:57:00 | 相模原・県央
キタキチョウの観察(2)において、10月12日に秋型♂が蛹に初めて止まっていたと報告しました。改めて10月8日の右の蛹の写真と比較したところ、この秋型は蛹から羽化した個体だと考えるに至りました。10月12日の右の蛹(殻)の先端付近に羽化時に発生したと思われる突起が見られ、色調も蛹殻と思われたからです。


     10月8日と10月12日の写真比較

それでは、この羽化個体が♂なのか♀なのかについて、yodaさんが示した後翅前縁付近の8室形状比較による雌雄識別法を用いて検討しました。

※翅脈・室の説明はこちらを御覧ください。

すでに性標の有無で雌雄判定済みの羽化個体の写真と10月12日羽化の写真とを並べて示します。写真は翅脈が浮き出るようにモノクロ化し画像処理したものです。


キタキチョウ秋型♂(10月15日羽化)

♂では、前縁が ↔ 付近でふくらむ形状を示します。


キタキチョウ秋型♀(10月18日羽化)

♀では、♂に比べて翅脈8と前縁とが平行線に近い形状をしています。


キタキチョウ秋型(10月12日羽化)

10月12日羽化個体は、♂の特徴である前縁のふくらみが見られることから、♂と推定しました。

10月12日は4頭の♂がネムノキ幼木に止まり、そのうち夏型♂3頭が蛹に止まり、秋型(♂)1頭が蛹殻に止まっていたわけですが、夏型♂3頭が下方の蛹殻に止まる秋型成虫に押し寄せる行動が見られなかったことからも、12日羽化秋型は♂と見て間違いないと思います。

以上を踏まえて、キタキチョウの観察(2)の本文に蛹殻に止まる秋型は羽化直後の♂と思われることを追記しました。

※15日羽化以降の個体の雌雄判別は透過光にかざして性標の有無を確認する方法を用いていますが、12日には、透過光による方法を適用しなかったので8室形状比較を試みました。

キタキチョウ秋型♀の羽化と夏型♂の行動

2014-10-26 14:01:00 | 相模原・県央
キタキチョウの観察を続けました。

10月17日(晴れ 13時の気温 23℃)
9時及び10時頃に森に来てみると、林内のネムノキ付近にはキタキチョウ成虫が見られませんでした。10時過ぎに明るい林縁のコセンダングサ周辺には多数のキタキチョウが吸蜜・絡みあいなど活発に活動していました。すべて秋型です。13時半頃、森のネムノキ付近を再訪すると、蛹Fにキタキチョウ♂(#5、夏型)が止まっていました。接近した際に飛び立ちましたが、14時過ぎにそのネムノキ葉裏に静止したので帰宅しました。


蛹Fとキタキチョウ夏型♂(#5)

蛹Fの色と模様から、翌朝羽化と予想しました。写真は下の方に示します。

10月18日(晴れ 10時の気温 18℃)
9時半頃に来ると、蛹Fから羽化したキタキチョウが蛹殻に静止していました。朝早くに羽化したようです。


羽化後に蛹殻に静止するキタキチョウ秋型(9時9分)

LED懐中電灯を照らして見たところ、前翅中脈に♂にある性標の影が透けて見えないことから♀であることが分かりました。


羽化したキタキチョウ秋型:♀と判明

昨日ネムノキ葉裏で静止していた♂(#5)がネムノキから半径7,8m以内をゆるやかに飛んでは日の当たる葉の上に止まって体を温める動作を繰り返しました。


日光浴するキタキチョウ夏型♂(#5, 10時16分)

ネムノキになかなか日が当たらないためか、♂はネムノキに接近しないまま1時間が過ぎました。ネムノキは、写真中央にあります。


ネムノキ付近の環境:なかなか日が当たらない(10時20分)

この日は日本鱗翅学会秋の集いに行く予定だったので、10時20分にその場を離れました。もう少しいればネムノキに日が当たり、♂が羽化直後の♀に気付き交尾成立が見られたかもしれないと思うと残念です!
♂がネムノキ周辺を離れず一定の空間内を飛ぶのは、蛹殻に止まる♀あるいはネムノキどちらのにおいを察知してのことなのか、何に惹かれて留まるのか気になるところです。

この時期に交尾可能なのは夏型♂と言われますが、その数がめっきり少なくなり、朝の気温の低下という要因も重なってか、早朝から蛹にまとわりつく個体がいなくなりました。羽化直後の翅の伸びない段階での交尾観察は難しそうですが、せめて蛹にとまる羽化当日の♀(秋型)と夏型♂の交尾を確認したいです。

10月19日
キタキチョウ秋型♀の羽化した翌日、10時~11時(晴れ、20℃)に3回、ネムノキ付近に行きましたが、林内には羽化した♀も付近にいた夏型♂も含めてキタキチョウはまったく見られませんでした。
日の当たる林縁に行くと、この日も10時半頃からコセンダングサ周辺にキタキチョウが多数見られました。いずれも秋型でした。


♪蛹Fの色変化


羽化3日前(10月15日)

成虫の翅の色を反映して、蛹の下方が黄色です。ある時期まではその部分は緑色でした。


羽化2日前(10月16日)

同上

成虫の翅の模様が浮き出てきました。


羽化前日(10月17日)

成虫の羽の模様が見えて2日目。明朝羽化と予想しました。


♪追記:10月27日
帰りがけに森の中の細い歩道を歩いていたら、目の前をクロコノマチョウが飛び、着地しました。夏型の♂でしょうか。この森での初見となりました。


クロコノマチョウ


ミゾソバとキタテハ

2014-10-21 20:02:00 | 相模原・県央
10月16日

この日は、前回と違う場所でアサギマダラとの出会いを期待して出掛けました。網を持った男性が休耕田脇の歩道の20m位先を歩き、その網を2振りして何かを仕留めたようでした。すぐに追いつき話しかけるとアサギマダラ♀でした。蝶の重さを調べているそうで、家に持ち帰って重さを測りまたここに戻って放すとのこと。撮影出来ず悔しい思いをしました。ちなみに、アゲハチョウ0.3g、アサギマダラ0.2g、ヤマトシジミ0.01gだそうです。
そのあと、もう1頭、林内飛翔中の個体を見かけました。

気を取り直して休耕田を見下ろすと、ミゾソバで蜜を求めるキタテハが見えました。





キタテハ秋型♀

新鮮な秋型♀で、人を恐れず近付けたので、色々な角度からの撮影を試みました。秋型の翅裏は赤みを帯びた褐色ですが、複眼まで褐色に見えました。
※秋型では、翅裏の外縁が♀は濃褐色、♂は黄褐色になります (1)
図鑑(1)記載の「♂は外縁が淡黄色」は訂正すべきです。



立っていると、キタテハ嬢からこちらに近付いてカメラの真下で吸蜜を始めました。翅が画面からはみ出す寸前でした。


同一個体(ノートリミング)

今度はサイドから撮影。胴体・翅表の上の毛がフサフサです。



テングチョウは複数おり、ミゾソバ・セイタカアワダチソウを訪花していました。6月頃に羽化し夏眠して秋に再び出現と言われてきましたが、近年、2化説・3仮説も出ています。この個体はキレイで、羽化からそう遠くないような気がします。






老いたクモガタヒョウモン♂も現れました。5月後半頃羽化し夏眠を経て秋に再び出現しますが、こちらは、長い生活を経て翅が痛々しい程破損していました。今年のヒョウモン類はこれで見納めになりそうです。


クモガタヒョウモン♂

ツリフネソウが咲いていました。山地では8月に見ていますが、低地では今頃開花のようです。


ツリフネソウ

参照資料
(1)日本チョウ類保全協会編、フィールドガイド日本のチョウ、誠文堂新光社
(2012)

キタキチョウ♂が羽化

2014-10-19 16:31:00 | 相模原・県央
10月15日 小雨 12~18℃

13日は一日中雨、14日はアサギマダラ探索に行ったため、キタキチョウ観察は休みました。15日小雨の中、3日ぶりに観察を行ないました。9時20分頃に来てみると、蛹Bにキタキチョウ秋型1頭が捕まって静止しており、静止位置や姿勢から羽化直後と考えられました。


羽化直後のキタキチョウ秋型

キタキチョウ夏型♂がこの個体の羽化前に蛹B周辺に来ていたかどうか不明です。

キタキチョウ夏型♂が何日にもわたって頻繁に止まっていた蛹A,Cは蛹殻になっていました。蛹A,Cの羽化個体が見られなくて残念です。観察を休んだ13か14日に羽化したのでしょう。

10月16日 晴れ 

朝8時50分に来てみると、昨日のキタキチョウが少し位置を変えただけで蛹に捕
まっていました。15日の日中から16日朝にかけて16℃以下の低い気温が続いたため飛び立たなかったようです。枝に触れたところゆるやかに舞い、地面付近の草に下りました。そこで指に乗ってもらい、日向に移動して透過光線を透かして撮影しました。


羽化翌日のキタキチョウ秋型 ♂と判明

前翅裏の性標が透けて黒い線状に見えたことから、蛹Bの羽化個体は♂と判定できました(♀には性標がない)。なお、12日には蛹Bが♂だったのにもかかわらずキタキチョウ夏型の♂2頭がこの蛹Bに止まったことがありました。♂蝶は間違いなく♀蛹を察知しているのではないようです。

蛹を新たに1つ発見しました(蛹G)。現在の蛹の色は、蛹Fが黄色で羽化が近そうです。蛹Gは緑色です。



キタキチョウの観察(2)

2014-10-17 15:19:00 | 相模原・県央
引き続きキタキチョウの観察を行いました。
今回は10月7,8,9,10,12日分です。
前回はこちら→キタキチョウの観察

10月8日(15時30~16時、曇り、23℃)

3頭が蛹の周りに集まっていましたが、写真判定の結果、前日の4頭のうち3頭が去り、新顔2頭が参加していました。蛹A、次いで蛹Cに♂が止まる傾向は前日と同様です。蛹A,Cがある程度蛹化から日数の経った♀なのかもしれません。蛹A,Cの写真を載せるべきでしたが、ピントが甘く、蛹E,Fの写真を載せます。


左から:蛹F,E

10月9日(10時30分~12時、晴れたり曇ったり、22℃)

キタキチョウ♂の#1が蛹Aに翅を大きく広げて止まっていました。


左:♂ #1

他の♂の接近を妨げる時に翅をバタバタさせるのは前日に見ましたが、開きっ放しとは大分体力を消耗しているように思えました。しかし、この#1は他の♂よりも蛹に執拗に止まるようでもありました。
一時期蛹Aに3頭が止まルシーンが見られました。


左から:♂#2,#1,#3

10月10日(10時30分~11時30分、晴れたり曇ったり、25℃)
この時間帯は、3頭が蛹の近くにいましたが、お互いに牽制してネムノキを中心にフラフラと飛ぶばかりなので、動画撮影しました。気温が高いせいで争いが活発化したのかもしれません。1頭が蛹に止まるシーンが一度見られただけです。
16時に再度来てみると蛹に止まるものはおらず、ネムノキの葉上に♂1頭(#3)が静止していました。

10月12日(一日中曇り、最高気温20℃)
午前と午後1回ずつ観察しました。
10時頃、ネムノキ葉上に2頭、葉裏に1頭静止していましたが、すぐに右手から1頭が近づき4頭での絡み合いが始まりました。
15時半頃再訪すると、4頭が蛹に止まり静まりかえっていました。初めて秋型の♂1頭が登場しました。羽化して間もない♂と思われます。
(赤文字部分追記:10月29日)


♂#10 羽化直後の秋型

10月7日からの写真を比較したところ、(今までに10頭がこのネムノキの蛹付近に登場したことが分かりました。内訳は9頭が夏型、1頭が秋型でした)訂正:今までに9頭がこのネムノキ付近に登場し、いずれも夏型でした。
(訂正 10月29日)
同時に滞在する数は3,4頭の場合が多く、ある程度固定メンバーかと感じていましたが、来るたびに一部入れ替わっていたわけです。蛹6個のうち、今まで♂は蛹A、次いで蛹Cに止まることが多かったのですが、12日に蛹BとEにも初めて止まった結果、♂の止まった蛹が6個中4個となりました。果たして♀の蛹だけを選んで止まっているのか少々疑問です。
曇りだったためかキタキチョウとヤマトシジミ以外は見られませんでした。

(続く)