怪奇大作戦13話・氷の死刑台に登場する冷凍人間は会社に疲れ
た中年サラリーマンの岡崎が、冷凍冬眠を研究している科学者から
‘一日だけの蒸発’の誘いに乗って実験台にされてしまった結果の
姿である。
この‘蒸発’というキーワードは60年代から70年代にかけて人が
突然行方不明になってしまうケースが度々あって、マスコミがそれ
を‘蒸発’と表現していた。
ちなみに‘蒸発’という言葉が語られる作品が円谷作品ではウルト
ラQとセブンに1つづつ登場する。
最初がウルトラQ最終話の‘あけてくれ’で柳谷寛演じる平凡な
中年サラリーマン・沢村が酔っ払って偶然謎の列車に乗り込んでし
まうのだが、それは沢村が常々望んでいた会社や家族のしがらみの
ない所に行くための電車だった。
会社で上司との関係が上手く行かず、奥さんや娘からも逃げ出し
たいと思っていた沢村だが電車で自らの過去を突き抜ける時に後悔
に苛まれて帰還するものの厳しい現実が待っており・・・という内容。
そんな中で沢村が電車の中で遭遇した男こそ蒸発した作家・友野
健二で自らの希望した世界に迷い込んで住人となって、そこから時
折作品を送ったり連絡を取ったりしていたわけだ。
一方ウルトラセブンではペロリンガ星人が、天体観測が大好きな
青年・フクシン三郎に‘星の世界に行きたいという君の願いを適え
てあげるよ、私はこれまで随分多くの地球人を連れて行ったよ。
ある日突然いなくなった人を’と言って誘うシーンがあるが、これ
も蒸発した人の事を言っている。
ひと口に‘蒸発’といっても自分の理想郷に行った友野健二やペ
ロリンガ星人に誘われて星の世界に行った者達は行った先で幸せに
暮らしているようだが、氷の死刑台の岡崎だけは冷凍冬眠の実験に
されて冷凍人間になるという悲惨な結末だったわけでQやセブンと
違って現実的な怪奇大作戦ならではだと思うのだ。