現在ボクシングの世界戦ウィークの真っ只中だがGWのこどもの日にあたる
5月5日に行われた世界戦は、今から30年前に静岡で行われたサントス・ラシ
アルに穂積秀一が挑戦したWBAフライ級タイトルマッチのみである。
穂積秀一は帝拳ジムのホープでJフライ級でデビューしたが長身ゆえフライ級
に階級を上げるだろうと早くから予想されており具志堅用高に挑戦したティト・
アベラに判定勝ちした後に友利正に判定勝ちして日本Jフライ級タイトルを獲得
すると、フライ級に上げて東洋太平洋タイトルと日本タイトル挑戦は失敗した
ものの2度目の挑戦で日本タイトルを奪取して世界3位までランクを上げて満を
持して世界挑戦となった。
サントス・ラシアルが持っていたWBAフライ級タイトルはジムの大先輩である
大場政夫が所持していた由緒あるタイトルで期待は大きかったし、ラシアルは
一旦タイトルを取りながら初防衛に失敗して返り咲いた後の2度目の防衛戦
だったので‘一発さえ食わなければ捌ききれるのでは’という予想で穂積自身も
入場後に鯉のぼりをプレゼントするなど自信満々だった。
実際1Rは穂積が長いリーチを生かしてラシアルの接近を阻みオフィシャルの
3人とも10-9で穂積有利の採点で好スタートを切った。
ところが強気でなる穂積が2Rに不用意に出たところに強烈な左フックを食って
ダウン。
これで何とか立ったものの明らかにダメージが残っており、すかさず猛烈な
連打で立て続けにダウンし試合は終わった。
2RKOの場合1Rが優勢だった方が倒されるというケースがあり、藤 猛vs
ニコリノ・ローチェ、アルフレッド・エスカレラvs柴田国明、小林光ニvsフランク・
セデーニョ、ガブリエル・ベルナルvs小林光ニあたりが いい例だ。
なまじっか1Rに しっかり距離を取れて自分のパンチがヒットし続けたという
のが仇になった感じで何とも悔やまれる展開だったが、ラシアルは穂積相手に
守ったタイトルを その後9回防衛して返上するとJバンタムでも渡辺二郎から
タイトルを奪ったヒルベルト・ローマンに勝ち2階級制覇を達成した名王者だった
のだ。
一方の穂積は再起戦で石井幸喜とのサバイバル戦でKO勝ちして生き残り、
その後も連勝してラシアルが返上した後の王者で2階級制覇をしたイラリオ・
サパタに挑戦したもののサパタの巧みな試合運びに空転させられて大差の
判定負けで奪取ならずと明暗を分けている。
それを考えるとラシアル戦の2Rに食った左フックが穂積にとってキャリアの
分岐点になってしまったのだろう。
帝拳ジムにとって大場政夫以来の世界王者は穂積がサパタに敗れてから
3ヵ月後に浜田剛史がレネ・アルレドントを1RでKOするまで待たなければ
いけないのだが、穂積と浜田は同じ興行のリングに上がっていて穂積が
メインで浜田はSファイナルだった事を考えると運命の皮肉を感じる。