
先日からの続きです。
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【オペラ「ドン・ジョバンニ」】
「アマデウス」では、オペラの舞台も幾つか紹介されていた。
オペラは、ヨーロッパの伝統が生んだ芸術の中でも、最も華やかな
ものの一つであり、その中には、大変奥深いメッセージを伝えている
ものがある。
カバラや錬金術、また象徴学などの秘密の教えである。
大衆が鑑賞しても、それと気づかないように、それら秘密の叡智が、
オペラの細部に散りばめられた。
モーツアルトのオペラ「ドン・ジョバンニ」も、よく知られた「魔笛」同様、
そんな作品の一つである。
このオペラの主人公、ドン・ジョバンニは、冷酷な性の誘惑者である。
始めに彼は、ドンナ・アンナを犯そうと、彼女の部屋に忍び込む。
そこにアンナの父の騎士長がやって来て、娘を救おうとするが、
反対にドン・ジョバンニに殺されてしまう。
こうして父を殺されたアンナは、ドン・ジョバンニへの復讐を誓うのだ。
このように、物語は、性と死の絡んだ事件から始まる。
それは、多くの神話や伝説とも共通している。
なぜならこの二つの問題は、我々の意識の最も奥深い所に、根ざした
ものだからである。
私はこのオペラを、一人の人物に起こった内的な物語として捉えている。
だからここでは、私自身の内的な体験と、「ドン・ジョバンニ」のストーリーを
重ね合わせて、見ていきたいと思う。
最初に、ドンナ・アンナについて語ろう。
ドンナ・アンナはある日、それまで体験した事のない、何か暗い衝動が
内面から湧き上がり、それが心に襲い掛かるのを感じる。
この正体不明の黒い衝動こそが、ドン・ジョバンニという人物で象徴されて
いるものだ。
ドン・ジョバンニは顔を隠し、長いマントに身を包んで登場する。
ドン・ジョバンニの魔手を逃れたアンナは、この犯人の正体を暴こうと、
彼の後を追いかける。
これは、自分の内面を脅かす、悪魔的衝動が一体何なのかを知ろうと
して、必死でもがいている状態だ。
そこにやって来るのは、アンナの父の騎士長である。
父は魂を象徴する。
それは、悪魔的衝動の反対の極であり、光を求め続ける、我々の
本質である。
だから騎士長は、剣と灯りを持っている。
剣は意思の力を、灯りは叡智の光を象徴する。
こうしてアンナは、その内面に、気高い光と力が存在している事に
気づくのである。
さて私(筆者)も、思春期において、抑え難い性の衝動が湧き上がるのを
体験した。
そしてそれは、強い期待と不安を孕んでいた。
特に恋愛事件や性的犯罪について雑誌で読んだりすると、大変興奮した
ものだ。
それらの事件は、とても他人事のようには思えず、私もいつか似たような
問題に関わってしまうのではないか、と思い悩み、私の心を強く脅かした。
その上、そんな考えを誰かに知られる事を思うと、不安はますます高まるの
だった。
あの頃、性は未だ、私の理解を超えていた。
この衝動は何なのか、生命を誕生せしめる性とは、一体何なのだろう。
そして、私はなぜ生まれて来たのだろうか。
私は性の中に、人智を超えた何かがある事を感じ始めた。
それは神秘的であり、汚してはならない神聖なものを含んでいるのでは
ないかという思いが頭をよぎる事もあったが、やはり性は、私の理解の
及ばないものであった。
二年程前、性と心理について学ぶ機会を得て、私は性とは何かをようやく理解し
始めた。
そして本来、性とは百パーセント神聖なものである事を知った。
ところが、その神聖なものを冒涜する事を想像すると、私の内面は未だに、
言いようのない願望と、強い罪悪感で入り乱れるのである。
本当は、そんな想像をしなければいいのだが、私の内面に渦巻く暗い衝動の
強さには、自分でも驚くばかりだ。
しかし、人は誰もが、心の奥底では純粋な愛を求めている、と私は思う。
私が愛について意識するきっかけとなったのは、性の衝動と、それに対する
嫌悪感である。
そのように、何らかのきっかけで罪悪感や自己嫌悪に陥る時、かえって人は、
その対極にある、神聖な光を認識しうるのではないだろうか。
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この続きは、また他日に掲載させて頂きたく思います。
以下、ノーシスの「黄色の書」より、クンダリニーを覚醒させるマントラの歌です。
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【クンダリニー覚醒の為のマントラの歌】
神聖なマントラは、クンダリニーを覚醒させる力を持っている。
天使アロッチ(天使たちの指揮者)は、クンダリニー覚醒の為の、この世で最強の
マントラの歌を教えてくれた。
天使がこの妙なる感動的な歌を歌った時、我々はエクスタシーで満たされた。
それから天使は、彼のあとに続いて歌うように促したので、我々はマントラの歌を
歌った。
それは、次の通りである。
「カンディル バンディル ルルルルル………」
このマントラの歌は、次のように歌う。
「カーーーーーン(KAAAAAANNNNNN) ディーールーー(DIIIIIIILLLLLLL)
バーーーーン(BAAAAANNNNNN) ディーールーー(DIIIIIIILLLLLLL)
ルルルルル………(RRRRRRRRRRR)」
(KANは高い声で、DILは低い声で、BANは甲高く、DIRはまた低い声で、
そしてRは巻き舌で発音する。)
文字「R」は、子供達がモーターの音を真似て発する、騒がしい声のように行う。
兄弟たちよ、これがクンダリニーの歌の歌い方である。
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