上野みえこの庭

日本共産党熊本市議の上野みえこのブログです。

市議会最終日・熊本城復元整備の契約は大林組との随意契約でいいのか?

2018-12-27 13:23:56 | 熊本市議会
年末ぎりぎりまで開かれていた熊本市議会も27日に最終日を迎えました。
日本共産党市議団は、熊本城見学通路の事業費の倍加や、熊本城ホール整備費の7億円増額などの補正予算に反対するとともに、提案した意見書への討論を行いました。
私は、議案として出されていた、熊本城天守閣復元工事の契約について問題点指摘するために、質疑を行いました。
熊本城の天守閣や飯田丸五階櫓石垣復元・総事業費約71億円は、大林組との随意契約です。そのために、予定価格に対する執行率は99%というのがほとんどです。
適切な競争が確保される契約の手法を用いるべきであり、価格についてもなるべく抑えていくことが必要です。
事業者主導の高い契約になっている、その仕組みと問題点を指摘しました。

質問は、以下のとおりです。

【質問内容】
総務委員会で審査された議題494号・議第495号「工事請負契約締結について」に関しお尋ね致します。
両議案は、熊本地震により被災した熊本城の復旧の中で、天守閣の復旧整備に係る一連の工事の中の2件です。これまで工事の契約案件として議会に提案され、実施されてきた一連の事業の契約のあり方を検証する意味で、お尋ねいたします。
 第1に、熊本市が行う一般的な契約では、一般競争入札が原則です。契約の基本的な考え方をお聞かせください。
 第2に、熊本城に関する工事で、どの様な理由や条件の場合に、大林組との随意契約になっているのでしょうか、ご説明願います。
 第3に、飯田丸5階櫓ならびに熊本城本丸御殿を当初建設した時の工事発注先と入札及び契約方法はどのようになっていたでしょうか。
 第4に、全国の城郭における工事等の入札契約方法はどのようになっているでしょうか。
 以上、関係局長に伺います。

(答弁)

 答弁で説明されましたように、今回提案の工事は、甚大な被害を受けた構造物の復旧という仕様の確定が困難な工事であるために、「技術提案・交渉方式」による優先交渉権者の選定を行い、各種設計・工事を民間事業者に提案させ、その提案に基づく各種工事等を、優先交渉権者である大林組との随意契約ですすめられています。
 しかし、その1、その2、その3と、次々にこの方式による契約議案が提案されてくるたびに疑問となってきた点がありますので、さらに三点伺います。
第1に、答弁された「技術提案・交渉方式」により事業をすすめていく場合、この熊本城天守閣復旧整備事業に関する基本協定書では、優先交渉権者から発注者に対して提出された見積書の内容について、価格交渉を行うことが定められています。この価格交渉は、どのように行われ、どういう効果が得られているのでしょうか。
第2に、今回の提案である復旧工事「その9」、「その10」を含めて、現在、天守閣復旧工事は、何割くらいの進捗状況になっていますでしょうか。
第3に、天守閣復旧整備事業の事業提案書では、税込建設費の提案額が68億4,152万8,000円、税込設計業務費の提案額が3億3,291万1,000円、合計71億7,443万9,000円の提案額となっています。事業提案において、評価を行った委員からは、概算事業費の算出について「今後の調査次第の難しい部分を含んでいる」と懸念のコメントも述べられていました。今後、調査に基づき工事を行っていった場合、事業費は提案額の71億7443万円内で収まる見通しでしょうか。
 経済観光局長にお尋ねいたします。

(答弁)

今全国で、「公共工事の品質確保の促進に関する法律」に規定された「技術提案・交渉方式」による工事契約がさまざまに行われてきています。今回の熊本城の復旧工事のような、極めてレアなケースの工事でない場合もあります。優先交渉権者に技術提案を求めて仕様書を作成していくやり方は、裏を返せば、発注する行政の側が仕様書を作成できないということです。全国の大型公共事業、レベルやグレードの高い工事を手掛けるゼネコンのノウハウが質の高いものであることは言うまでもありません。しかし一方で、行政の側には、行革で、職員が減らされ、仕事は民間委託、専門的資格や技術を持つ職員が減らされ、配置換えされ、せっかく持っている技術が生かされない状況が多々生まれています。このような状況がさらに進んでいけば、ますます民間への事業丸投げの状態が増え、その行き着く先は、民間に委ねた事業の検証すらできないという状況にもつながります。
 私ども日本共産党市議団は、かなり以前から、このような専門技術者のいない、生かされない状況を告発し、改善を求めてきました。どのような公共事業であっても、行政がイニシアチブをもって発注し、きちんと検証することが必要です。そのためにも、行き過ぎた行革はやめて、適材適所、専門性の生かされる人事配置が必要であることを指摘しておきます。
 また、一連の熊本城復旧整備事業で分かってきたのは、「事業提案・交渉方式」が、優先交渉権者が作成した設計書に基づき、優先交渉権者が見積書を作成するという民間事業者が事業の設計から施工まで主体的に進めていくもので、随意契約で競争もなく契約していくので、当然、契約額の確定にも優先交渉権者である民間事業者が主導権を持つことになります。数ある熊本城の復旧工事でも、競争入札で契約しているものは、その3分の2が落札率95%以下であり、99%を超えるものはわずかです。ところが、「事業提案・交渉方式」で随契している大林組の案件は、予定価格に対する契約額が99%以上のものが約半分、すべてが96%以上です。最小の経費で最大の効果を上げるという公共事業の考え方にそぐわないものです。
 さらには、「事業提案・交渉方式」では、事業費の提案額はあっても、それは契約額ではないために、優先交渉権者選定の委員からも指摘されているように、概算事業費は、事業をすすめていく中で、調査の結果次第では提案額を上回っていく場合も考えられます。最終コストが不明であるという点が、このやり方の難点でもあります。よほど、発注者である熊本市が詳細なチェックをしなければ、民間事業者の言うなりに事業費が増えていくことが想定されます。少なくとも、お尋ねいたしました、民間事業者の提出してきた見積書に対し価格交渉をきちんとやっていくことは、最低限必要なことです。
 熊本城天守閣と飯田丸5階櫓石垣の復旧工事は、「事業提案・交渉方式」の優先交渉権者を決める過程の中で、説明会に参加した事業者が2社、参考資料を提供した事業者が8社ありながら、参加申し込みをしたのは2社であり、結果的に、技術提案書を提出したのは1社だけで、優先交渉権者選定において競争することにはなりませんでした。そのため、総点数1320点に対し、提案された提案書は854点、100点満点で言うならば65点にも満たない提案が選定されるという結果になりました。大林組が城郭の分野で様々なノウハウを持ち合わせていることは承知していますが、答弁にありましたように、過去には熊本城でも飯田丸五階櫓復元を淺沼組が手掛けており、全国に多数ある城郭にはいくつものゼネコンがかかわっています。それらが切磋琢磨して、より良い提案を提出してくるための条件づくりも必要ではないでしょうか。
 今後、今回の契約に続き、残った天守閣や飯田丸五階櫓石垣の復旧事業もすすみますし、その後も20年間という長い期間にわたって各種熊本城の復旧事業が行われていきます。契約や事業の執行にあたり、民間事業者のより良い競争環境が担保されるとともに、事業実施の主体として熊本市が専門的な知識と技術を持ち、事業を監修していくべきであることを指摘して、質疑を終わります。
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