市議会最終日、提案されていた介護保険料の値上げ議案に反対討論を行いました。
今回の保険料は前回改定時の基準額を月額1060円、年間で12,720円も引き上げるものとなっています。
介護保険料は、所得段階別になっているとはいえ、基準段階の第5段階というのは、本人非課税です。そういう人に年間81120円もの保険料を賦課するような今回の保険料改定は到底認められません。減っていく年金から、否応なく差し引かれれば、生活費を削って保険料を払うということにもなりますし、普通徴収の高齢者には滞納がさらに増えて、ペナルティにより、必要な介護サービスが受けられなくなります。
介護保険法第1条に謳われた、高齢者が「その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう、必要な保健医療サービス及び福祉サービスに係る給付を行う」という目的にそった制度の運用のためにも、負担の限界を超える保険料については、むしろ軽減すべきです。現行、保険方式の下で、必要な介護サービスを提供しながら、制度を続けていくためには、国庫負担増額を国に強く要望し、早急に実現することこそ必要です。また、市としても、保険料の負担増を抑えるために、何らかの措置を行うべきです。
討論内容は、以下のとおりです。
【討論全文】
議第64号「熊本市介護保険条例の一部を改正する条例」について、賛成できない理由を述べ、反対討論を行います。
議案の提出理由にも述べてありますように、今回の条例改正は、2017年に成立した「地域包括ケアシステムの強化のための介護保険法等の一部を改正する法律」、2016年の「介護保険法施行令の一部を改正する政令」の施行(しこう)に伴うものであり、また、「熊本市高齢者保健福祉計画・介護保険事業計画」の見直しに合わせ、保険料率の改定等を行うものです。
2017年5月に成立した「地域包括ケアシステムの強化のための介護保険法等の一部を改正する法律」は、介護保険法を含む31本の法改正を一つに束ねた一括法として提案され、具体的な内容を多くの政省令にゆだねるものでしたが、その国会審議は、十分な審議も尽くさず、詳細が明らかにされないまま、政府与党の一方的な審議打ち切りによって採決が強行されたものでした。その内容は、「社会保障・税一体改革」の徹底を図るために打ち出された「経済・財政一体改革」に基づいて見直しを行うもので、「利用者負担の見直し」「介護医療院の創設」などとともに、「自立支援・重症化防止に向けた保険者機能の強化」「共生型サービスの創設」など、これまでになかった内容が含まれています。また、強い反対世論の中で、今回見送らざるを得なかった本格的な軽度者の切り捨て政策についても、次期以降の課題として検討期限とともに明記されるなど、大変問題の多いものです。
おおもとにある「経済・財政一体改革」は、2025年を目途に、「社会保障・税一体改革」が掲げた医療・介護提供体制の再編・縮小、負担の強化と、公的給付の削減を強力に推進することを目的とするもので、社会保障を経済成長に資するビジネス仕様につくり変えていくこと、赤字の主因とする社会保障費を徹底的に削減しようというものです。介護分野におけるこの改革は、「介護保険制度の持続可能性の確保」と、「地域包括ケアシステムの深化・推進」の2つを柱にしています。この2つの柱の背景には、「給付と負担の見直し」「医療・介護の一体的改革」「福祉の見直し」の3つの政策があります。
「給付と負担の見直し」では、これまでも、介護報酬引き下げ、予防給付やホテルコストの導入、利用料引き上げ、基盤整備の総量規制、給付適正化による事後規制の強化などの見直しが重ねられてきましたが、今後さらに、新たな給付と負担の見直しが実施されます。「自立支援・重症化防止に向けた保険者機能の強化」は、給付抑制を徹底させるものと言えます。
「医療・介護の一体的改革」は、病床の再編ということで病床数の削減を行い、その受け皿として「地域包括ケア」を構築し、「入院から在宅へ」「医療から介護へ」、さらには「介護からボランティアへ」の流れを推し進め、「安上がり」で効率的な医療・介護提供体制づくりを推進しようというものです。今後は、療養病床削減のための受け皿として「介護医療院」を創設し、「自立支援・重症化防止」ということで、公的サービスからの卒業を促す「自立支援介護」が導入されます。
「福祉の見直し」では、高齢者と障碍者・児のサービスを複合化させた「共生型サービス」を創設し、現在、高齢者のみを対象としている「地域包括ケア」を障がい者・子どもを含めた全世代対応の地域包括ケアへの転換も目指していきます。この土台には、「我が事、丸ごと地域共生社会」構想があり、福祉分野における公的給付を住民主体の「互助」へと置き換えていこうというものです。
改革の柱の第1、「介護保険制度の持続可能性の確保」でいう「持続可能性」は、利用者の生活や事業所の経営ということでなく、保険財政の持続可能性です。そのため、「現役並み所得者の利用料3割化」「介護保険料の算定を総報酬制へと切り替えていく」「高額介護サービス費の負担上限額の引上げ」「生活援助の切り下げ」や「給付の適正化」などもすすめられ、社会保障費の削減、国庫負担の圧縮が行われます。
国は、社会保障費が膨らんで制度が維持できないと言いますが、日本のGDPに占める社会保障給付費の割合は決して高くありません。国立社会保障・人口問題研究所が出している2015年版の「社会保障費用統計」では、フランス32%、スウェーデン28%、ドイツ26%に対し、日本は22%しかなく、しかも、2012年以降下がっています。増え続ける介護需要に応えながら、「持続可能性」を確保していくためには、社会保障費の増額が不可欠です。
2番目の柱「地域包括ケアシステムの深化・推進」でも、もともと「地域包括ケア」は「要介護状態となっても、住み慣れた地域で暮らし続けることができるよう、住い・医療・介護・予防・生活支援が一体的に提供される体制」だと説明されているにもかかわらず、今、国が推し進めているのは、医療費・介護給付削減の手段としての地域包括ケアで、「自助」「互助」中心にしようとするものです。
このたび示された本市の「第7次高齢者保健福祉計画・介護保険事業計画」には、これまで述べた国の考え方が随所に反映されています。「計画の基本的な考え方」では、「計画の目標」を元気な高齢者の割合を増やさないとしていますが、これは、要介護認定者率を引き上げないということで、これを数値目標とすることで、自治体間のばらつきを「見える化」し、認定率引き下げへと是正させていきたいという国の考えに沿うものです。「地域包括ケアシステムを深化・推進する重点方針」では、地域での支えあいや、「我が事、丸ごと地域共生社会」の実現を掲げていますが、これも公的給付を抑制するものです。「施策の展開」では、「介護保険制度の円滑な運営とサービスの質の向上」において、「介護給付費の適正化」が掲げられていますが、これは、健全な保険財政運営のために、利用者が必要とするサービスをチェックし、適正化の名のもとに削減しようとするものです。このように、新たな第7次のはつらつプランは、国のすすめる公的介護・福祉の後退というレールに乗ったものとなっています。
この計画の中で保険料が設定されていますが、今回の保険料は前回改定時の基準額を月額1060円、年間で12,720円も引き上げるものとなっています。さらには、第6次計画において、第7次計画の保険料を月額6740円、第9次計画の保険料を7980円と推計していましたが、今回第7次計画において、推計を上回る保険料額となったことや、第9次の推計が前回を大きく上回り月額9102円とされていることは、保険給付費の半分を第1号ならびに第2号被保険者の保険料によってまかなうという制度の矛盾が、想定以上に激化していることを示しています。介護保険料は、所得段階別になっているとはいえ、基準段階の第5段階というのは、本人非課税です。そういう人に年間81120円もの保険料を賦課するような今回の保険料改定は到底認められません。減っていく年金から、否応なく差し引かれれば、生活費を削って保険料を払うということにもなりますし、普通徴収の高齢者には滞納がさらに増えて、ペナルティにより、必要な介護サービスが受けられなくなります。
介護保険法第1条に謳われた、高齢者が「その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう、必要な保健医療サービス及び福祉サービスに係る給付を行う」という目的にそった制度の運用のためにも、負担の限界を超える保険料については、むしろ軽減すべきです。現行、保険方式の下で、必要な介護サービスを提供しながら、制度を続けていくためには、国庫負担増額を国に強く要望し、早急に実現することこそ必要です。
また、国の制度見直しを漫然と待つのでなく、負担の限界を超えた保険料の引き下げについて、高齢者の立場に立ち、市として何らかの措置を講じていただくことを要望し、反対討論といたします。
今回の保険料は前回改定時の基準額を月額1060円、年間で12,720円も引き上げるものとなっています。
介護保険料は、所得段階別になっているとはいえ、基準段階の第5段階というのは、本人非課税です。そういう人に年間81120円もの保険料を賦課するような今回の保険料改定は到底認められません。減っていく年金から、否応なく差し引かれれば、生活費を削って保険料を払うということにもなりますし、普通徴収の高齢者には滞納がさらに増えて、ペナルティにより、必要な介護サービスが受けられなくなります。
介護保険法第1条に謳われた、高齢者が「その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう、必要な保健医療サービス及び福祉サービスに係る給付を行う」という目的にそった制度の運用のためにも、負担の限界を超える保険料については、むしろ軽減すべきです。現行、保険方式の下で、必要な介護サービスを提供しながら、制度を続けていくためには、国庫負担増額を国に強く要望し、早急に実現することこそ必要です。また、市としても、保険料の負担増を抑えるために、何らかの措置を行うべきです。
討論内容は、以下のとおりです。
【討論全文】
議第64号「熊本市介護保険条例の一部を改正する条例」について、賛成できない理由を述べ、反対討論を行います。
議案の提出理由にも述べてありますように、今回の条例改正は、2017年に成立した「地域包括ケアシステムの強化のための介護保険法等の一部を改正する法律」、2016年の「介護保険法施行令の一部を改正する政令」の施行(しこう)に伴うものであり、また、「熊本市高齢者保健福祉計画・介護保険事業計画」の見直しに合わせ、保険料率の改定等を行うものです。
2017年5月に成立した「地域包括ケアシステムの強化のための介護保険法等の一部を改正する法律」は、介護保険法を含む31本の法改正を一つに束ねた一括法として提案され、具体的な内容を多くの政省令にゆだねるものでしたが、その国会審議は、十分な審議も尽くさず、詳細が明らかにされないまま、政府与党の一方的な審議打ち切りによって採決が強行されたものでした。その内容は、「社会保障・税一体改革」の徹底を図るために打ち出された「経済・財政一体改革」に基づいて見直しを行うもので、「利用者負担の見直し」「介護医療院の創設」などとともに、「自立支援・重症化防止に向けた保険者機能の強化」「共生型サービスの創設」など、これまでになかった内容が含まれています。また、強い反対世論の中で、今回見送らざるを得なかった本格的な軽度者の切り捨て政策についても、次期以降の課題として検討期限とともに明記されるなど、大変問題の多いものです。
おおもとにある「経済・財政一体改革」は、2025年を目途に、「社会保障・税一体改革」が掲げた医療・介護提供体制の再編・縮小、負担の強化と、公的給付の削減を強力に推進することを目的とするもので、社会保障を経済成長に資するビジネス仕様につくり変えていくこと、赤字の主因とする社会保障費を徹底的に削減しようというものです。介護分野におけるこの改革は、「介護保険制度の持続可能性の確保」と、「地域包括ケアシステムの深化・推進」の2つを柱にしています。この2つの柱の背景には、「給付と負担の見直し」「医療・介護の一体的改革」「福祉の見直し」の3つの政策があります。
「給付と負担の見直し」では、これまでも、介護報酬引き下げ、予防給付やホテルコストの導入、利用料引き上げ、基盤整備の総量規制、給付適正化による事後規制の強化などの見直しが重ねられてきましたが、今後さらに、新たな給付と負担の見直しが実施されます。「自立支援・重症化防止に向けた保険者機能の強化」は、給付抑制を徹底させるものと言えます。
「医療・介護の一体的改革」は、病床の再編ということで病床数の削減を行い、その受け皿として「地域包括ケア」を構築し、「入院から在宅へ」「医療から介護へ」、さらには「介護からボランティアへ」の流れを推し進め、「安上がり」で効率的な医療・介護提供体制づくりを推進しようというものです。今後は、療養病床削減のための受け皿として「介護医療院」を創設し、「自立支援・重症化防止」ということで、公的サービスからの卒業を促す「自立支援介護」が導入されます。
「福祉の見直し」では、高齢者と障碍者・児のサービスを複合化させた「共生型サービス」を創設し、現在、高齢者のみを対象としている「地域包括ケア」を障がい者・子どもを含めた全世代対応の地域包括ケアへの転換も目指していきます。この土台には、「我が事、丸ごと地域共生社会」構想があり、福祉分野における公的給付を住民主体の「互助」へと置き換えていこうというものです。
改革の柱の第1、「介護保険制度の持続可能性の確保」でいう「持続可能性」は、利用者の生活や事業所の経営ということでなく、保険財政の持続可能性です。そのため、「現役並み所得者の利用料3割化」「介護保険料の算定を総報酬制へと切り替えていく」「高額介護サービス費の負担上限額の引上げ」「生活援助の切り下げ」や「給付の適正化」などもすすめられ、社会保障費の削減、国庫負担の圧縮が行われます。
国は、社会保障費が膨らんで制度が維持できないと言いますが、日本のGDPに占める社会保障給付費の割合は決して高くありません。国立社会保障・人口問題研究所が出している2015年版の「社会保障費用統計」では、フランス32%、スウェーデン28%、ドイツ26%に対し、日本は22%しかなく、しかも、2012年以降下がっています。増え続ける介護需要に応えながら、「持続可能性」を確保していくためには、社会保障費の増額が不可欠です。
2番目の柱「地域包括ケアシステムの深化・推進」でも、もともと「地域包括ケア」は「要介護状態となっても、住み慣れた地域で暮らし続けることができるよう、住い・医療・介護・予防・生活支援が一体的に提供される体制」だと説明されているにもかかわらず、今、国が推し進めているのは、医療費・介護給付削減の手段としての地域包括ケアで、「自助」「互助」中心にしようとするものです。
このたび示された本市の「第7次高齢者保健福祉計画・介護保険事業計画」には、これまで述べた国の考え方が随所に反映されています。「計画の基本的な考え方」では、「計画の目標」を元気な高齢者の割合を増やさないとしていますが、これは、要介護認定者率を引き上げないということで、これを数値目標とすることで、自治体間のばらつきを「見える化」し、認定率引き下げへと是正させていきたいという国の考えに沿うものです。「地域包括ケアシステムを深化・推進する重点方針」では、地域での支えあいや、「我が事、丸ごと地域共生社会」の実現を掲げていますが、これも公的給付を抑制するものです。「施策の展開」では、「介護保険制度の円滑な運営とサービスの質の向上」において、「介護給付費の適正化」が掲げられていますが、これは、健全な保険財政運営のために、利用者が必要とするサービスをチェックし、適正化の名のもとに削減しようとするものです。このように、新たな第7次のはつらつプランは、国のすすめる公的介護・福祉の後退というレールに乗ったものとなっています。
この計画の中で保険料が設定されていますが、今回の保険料は前回改定時の基準額を月額1060円、年間で12,720円も引き上げるものとなっています。さらには、第6次計画において、第7次計画の保険料を月額6740円、第9次計画の保険料を7980円と推計していましたが、今回第7次計画において、推計を上回る保険料額となったことや、第9次の推計が前回を大きく上回り月額9102円とされていることは、保険給付費の半分を第1号ならびに第2号被保険者の保険料によってまかなうという制度の矛盾が、想定以上に激化していることを示しています。介護保険料は、所得段階別になっているとはいえ、基準段階の第5段階というのは、本人非課税です。そういう人に年間81120円もの保険料を賦課するような今回の保険料改定は到底認められません。減っていく年金から、否応なく差し引かれれば、生活費を削って保険料を払うということにもなりますし、普通徴収の高齢者には滞納がさらに増えて、ペナルティにより、必要な介護サービスが受けられなくなります。
介護保険法第1条に謳われた、高齢者が「その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう、必要な保健医療サービス及び福祉サービスに係る給付を行う」という目的にそった制度の運用のためにも、負担の限界を超える保険料については、むしろ軽減すべきです。現行、保険方式の下で、必要な介護サービスを提供しながら、制度を続けていくためには、国庫負担増額を国に強く要望し、早急に実現することこそ必要です。
また、国の制度見直しを漫然と待つのでなく、負担の限界を超えた保険料の引き下げについて、高齢者の立場に立ち、市として何らかの措置を講じていただくことを要望し、反対討論といたします。