9月30日、熊本市議会も最終版、予算決算委員会のしめくくり質疑が行われました。
今回の議会に条例案として提案されている文化ホール・スポーツ施設・各種厚生施設、動植物園の入場を値上げする1億4000万円の市民負担増は中止すべきです。
行財政改革の一環として受益者負担論によって、各種料金を引き上げる今回の値上げ提案は、関係者の声も聞かず、市民への情報提供や説明責任も果たさないまま、負担増を強行するものです。
10月からの消費税率引き上げによって5兆円の国民負担増が行われようとしているときに、今回の値上げはそれに追い打ちをかけるものです。
文化ホールやスポーツ施設、動植物園、いずれも文化やスポーツ・学術の振興に逆行するものです。
利用者負担を減らして、利用促進にこそ務めるべきです。
今回の値上げの問題点を指摘し、負担増の中止を求めました。
質問は以下の通りです。
【質問内容】
条例案が提案されている各種使用料・手数料の値上げについて質問します。
第1に、富合・天明・火の君・植木の各文化ホールや、総合体育館・アクアドーム・その他の体育館体育施設等の今回の値上げが、今後の利用見通しにどう影響するのか、どんな検証・検討をなされていますか。各文化ホールについては、現行の利用状況・稼働率と、今後の利用者数・稼働率の目標と見通し、検証・検討内容をお願いします。スポーツ施設等は、現在の利用状況と今後の利用目標・見通し、検証・検討状況をご説明ください。
第2に、各種使用料・手数料を一斉に引き上げる目的は何でしょうか。
第3に、これら施設は、すこやか交流広場、三山荘などの施設を含め、日頃市民が文化やスポーツ、健康を享受する身近な施設として、そのほとんどが、市民の心と体の健康のためにと非営利で、気軽に利用されてきました。今回の値上げは、施設の利用促進に逆行するのではないでしょうか。
第4に、今回の値上げは、生活の厳しい世帯への負担が重いので、低所得者の利用を遠ざけてしまうのではないでしょうか。
市長に伺います。
(答弁)
利用状況は縷々説明がありましたが、今後の利用目標や利用見通しについては何の説明もありませんでした。市民の払った税金で建てた公共施設は、多くの市民に利用されてこそ設置の意義があり、使われた税金が生きてきます。利用促進の目標もなく、維持管理にお金がかかるから、その分は利用者の負担だという、今の答弁からは、多くの人に使ってもらおう、利用を促進していこうという姿勢は見られません。
そもそも、自治体が設置する公の施設は、正当な理由なく利用を拒むことや利用にあたり差別的な扱いをすることを禁止しています。すなわち、住民福祉の増進という目的のもとに、誰もが公平に利用できるということが大前提です。ホール利用料が高くなれば、その分を催しの主催者または参加者が負担することになります。経済的に余裕のある方々にとってはなんでもない負担でも、その数百円が生活に余裕がない人にとっては負担です。スポーツ施設等も毎週利用していた人が利用回数を減らしたりするのではないでしょうか。他都市や民間とのバランスを考えてと言われましたが、民間は赤字になることはしません。だから、一定の利用料負担が発生します。民間並みの利用者負担が難しく文化やスポーツから遠ざかるような方々を含めてすべての市民が、お金の心配なく文化・スポーツに親しむ機会をつくる、民間にできないことをするのが公の仕事ではないでしょうか。そこにこそ、住民福祉の増進を目的に、税金でつくった公の施設の存在価値があります。公平・公平と言いながら、生活の厳しい人たちの利用を退けるような利用者負担の考え方は間違っています。
公立文化施設である文化ホールは、文化芸術振興基本法や、国の「文化芸術の振興に関する基本方針」、2012年制定の「劇場、音楽堂等の活性化に関する法律」等に則り、地方自治体も、「文化芸術を創造し、享受することが人々の生まれながらの権利であることに鑑み、国民がその居住する地域にかかわらず等しく、文化芸術を鑑賞し、これに参加し、又はこれを創造することができるような環境の整備が図られなければならない」という理念のもと、「文化施設等の社会教育施設は、文化芸術団体、住民等が円滑に利用しやすい運営を促進する」と定められています。この立場に立つならば、関係者の声も聞かずに、行革だからと一方的に値上げはできないはずです。
スポーツ施設にしても、来年の東京オリンピック開催に向け、国を挙げてスポーツ振興に取り組んでいるとき、施設使用料の負担を減らし、利用促進にこそ取り組むべきではないかと考えます。
続いて、動植物園の入園料について伺います。
一般的に動植物園は、自然系博物館として博物館法に設置根拠を持つ学術文化施設です。本市の動植物園は、博物館法第29条の博物館の相当施設として指定されています。博物館法第23条では「公立博物館は、入館料その他博物館資料の利用に対する対価を徴収してはならない。」と定めており、原則利用料金を徴収することはできません。博物館の相当施設として、博物館法の趣旨を尊重するならば、今回の値上げは、この基本原則に反するものです。値上げは回避すべきではないでしょうか。
また、大人の入園料だけを値上げする理由は何でしょうか。
(答弁)
本市の動植物園は博物館でないから博物館法23条の規定は適用されないと言われます。しかし、博物館に相当する施設として、法第29条に位置付けられ、必要な場合は「教育委員会が設置及び運営に関して、専門的、技術的の指導又は助言を与えることができる。」と定められているということは、博物館法の趣旨を勘案して運営する施設であるべきです。でなければ、法に規定する必要はありません。文部科学省は、告示第164号で「公立博物館の設置及び運営に関する基準」を定めており、そこには自然系博物館としての動物園・植物園・水族館についての基準が示されています。今後、展示方法の見直しや新たな遊具設置などの魅力向上と集客に努めると言われましたが、単なる集客施設とならないためにも、教育的な位置づけこそ高めて行くべきです。他都市でも、所管の部局等はさまざまですが、設置条例に(例えば、横浜市動物園条例)、教育的配慮のもとに、動物を収集し、飼育し、及び展示すること、 動物に関する知識、動物愛護思想及び環境教育の普及活動を行うこと、動物に関する調査研究を行うこと、野生動物の保護及び繁殖を行うこと、野生動物の救護活動を行うことなどの博物館法に準拠した学術的役割が明記されているところもあります。見て・来て・楽しむことも大切ですが、公が設置する動植物園は、民間ではできない、非営利の学術・教育の施設としての役割を果たしていくことが必要だと思います。
そして、子どもたちの学習の場というだけではなく、すべての市民が動植物園の学術的価値を享受するための場であり、大人料金も値上げすべきではありません。
最後に、今回値上げとなる各種使用料や手数料は、住民票・課税証明等手数料について生活保護世帯や災害時の被災者等が免除となっている部分を除けば、利用者の経済状況にかかわらず、同一の負担をしなければなりません。先ほども言いましたように、低所得者、暮らしが厳しい人ほど重い負担となる改定はやめるべきだと思いますが、いかがでしょうか。
(答弁)
今回の値上げは、行財政改革で受益者負担の適正化を図るとされていますが、本市の行財政改革計画の目標達成における方針の一つには「市民ニーズに対応した質の高いサービスの提供」が掲げてあります。本来の行財政改革というのは、住民の立場でサービスの向上をはかるべきものです。目的にそった利用促進にも反するような受益者負担論による負担増は間違いです。
いよいよ明日から消費税率が10%に引き上げられようとしています。それを強行している国ですら、軽減税率やポイント還元などの負担軽減策を打ち出しているときに、各種利用料・手数料の一斉値上げ、1億4000万円の負担増は、5兆円もの庶民増税に追い打ちをかける市民いじめです。
撤回を強く求めて質疑を終わります。