9月22日、熊本市議会最終日。
報告されていた、2016年度決算の問題点を指摘し、討論を行いました。
【討論内容】
議題213号「2016年度熊本市各会計決算について」賛成できない理由を述べ、反対討論を行います。
昨年度は、年度当初の4月16日未明に発生した未曽有の熊本地震によって、尊い命が奪われ、市全域で生活そのものが立ち行かなくなるような甚大な被害を受けました。直ちに、救援・復旧作業が行われ、その後も年度を通して、地震からの復旧・復興に向き合うことが一番の課題となり、市民や行政・議会が一丸となって取り組んできました。また、アベノミクスの破たんで景気は低迷、安倍政権のもとあらゆる分野での社会保障制度改悪がすすめられる中で、被災によって大きなダメージを受けている市民のいのち・くらし・生業をどのように守っていくのか、問われた1年でもありました。
当初で、一般会計に3000億円の予算編成となっていましたが、熊本地震関連の追加補正が数度にわたって行われ、予算規模は過去に例のない4300億円へと膨れ上がりました。
第1に、第一義的課題であった熊本地震への対応では、730億5000万円の復旧・復興経費が使われました。国や県への要望も繰り返され、支援も拡充、東日本大震災並み、あるいはそれ以上の支援も行われました。その一つとして、熊本地震の大きな特徴であった一部損壊世帯への支援は、非課税世帯・ひとり親世帯に3万円、100万円以上の復旧工事費がかかった場合に10万円の義捐金が出されるようになりました。しかし、8万世帯を超える一部損壊世帯の31%しかその対象とはならず、55000世帯以上が被災者にもなれなかったという事態を引き起こしました。すべての被災世帯への何らかの支援が行われるべきではないかと思います。
また、対象地域の方々には、大変大きな復旧の事業費負担が発生した、液状化や擁壁の崩壊など地盤被害についても、対象地域住民の強い要望が国・県を動かし、基金を財源とした宅地復旧支援事業による助成が行われるようになりました。しかし、自己資金の負担ができないために、復旧に取り掛かることができない方も残されています。本格的な復旧はこれからとなりますが、自己負担をなくし、液状化対策によって完成した施設の維持管理費についても市が負担するようお願い致します。
義捐金や生活再建支援金が、住まいや生活等の復旧に十分な金額でなかったために、災害援護資金貸付などの貸付制度が復旧に重要な役割を持つことになりました。国の定めとはいえ、公共事業の市債でも1%を切っている利息が、大災害にあった被災者に3%もの高利を負担させる制度は大きな欠陥であると言わざるを得ません。災害援護資金貸付は、直近の8月末時点で556件・9億3500万円が貸し出されていますが、無利子とすることや返済の猶予期間の延長、延滞金の廃止や保証人をなくすことなど、引き続き国へと求めていただきたいと思います。
農業分野では、経営体育成支援事業に9億円が使われましたが、2017年1月から3月の3カ月間に契約・工事を行った人は助成の対象外となりました。すべての被災者への支援が行われるよう取り計らわれるべきではなかったかと思います。
また、1月末で生活必需品支給の申請が終了し、罹災証明の新規申請受付、災害援護資金貸付の受付、公費解体の申請、みなし仮設の入居申請、個人市民税・固定資産税・軽自動車税の減免、農業集落排水処理施設使用料の減免申請、奨学金の返還猶予、市立学校授業料・幼稚園の保育料減免、開発許可申請等にかかる手数料免除など、さまざまな支援メニューが年度末の3月で締め切られることが決められました。特別な事情があればその後も臨機応変に対応するとの説明が行われていましたが、実際には、罹災証明発行の遅れやその他のさまざまな事情で支援メニューの申請が遅れた方々から、支援が受けられなかったという相談が相次ぎ、結果的には、支援から締め出されてしまう事態も発生しました。私どもが、再三にわたって指摘してきましたように、仮設住宅やみなし仮設など、自宅以外での仮住まいに1万世帯以上が生活されているという状況の中で、早々に支援を打ち切ってしまった市の対応は、被災者切捨て以外の何物でもなかったのではないでしょうか。その姿勢は、厳しく問われなければなりません。
引き続き取り組んでいかれる被災者支援・復興事業につきましては、被災者の立場に立ち、誠心誠意対応していただきますようお願いいたします。
第2に、莫大な事業費を必要とする震災復興に取り組む中で、総事業費ならびに再開発事業への補助金を含めれば450億円近くもかかる市政史上最大のハコモノ・熊本城ホール整備は、震災復興事業に位置付けられて、その事業費は聖域とされました。昨年度は、桜町再開発事業への補助金が12億円、熊本城ホール整備費用が29億円支出されました。しかも、民間再開発事業者への運転資金としての貸付は予算額通り30億円が無利子で貸し付けられました。民間再開発事業者へ30億円も無利子で貸し付けられるのであれば、災害援護資金貸付の利子に市が補てんして、災害に苦しんでいる被災者にこそ無利子での貸付を行うべきではなかったでしょうか。また、今後再開発事業が本格的にすすんでいけば、毎年熊本市が再開発と熊本城ホールに支出する予算はますます増えて、市の財政を一段と厳しいものにしていくことは間違いありません。しかも、締めくくり質疑でも指摘した花畑広場の整備や辛島の地下部分の整備なども財政に大きく影響してきます。花畑広場に隣接した民有地の買収は、まだ交渉中とのことですが、こちらも今のまま推移していけば、再開発事業が完成し、周辺の地価が桁違いに高騰したときに、今は考えられないようなとんでもない高い金額で市が買収することになるのではないでしょうか。
そう考えると、大地震発生にもかかわらず、昨年度震災復興と位置付け、聖域としてのレールを敷いた桜町再開発・熊本城ホール整備は、大きな財政負担とともに、今後の市民サービスに大きな影響を及ぼすことが懸念されます。震度7クラスの大型地震によって未曽有の被害が生まれ、多くの人が未だ住まいの再建見通しすら立っていない中で、市政史上最大のハコモノ建設について、何ら見直すことなく事業をすすめている市の姿勢は、厳しく問われるものと考えます。
第3に、国のすすめる社会保障の大改悪のもと、本来ならば国の悪政の防波堤となって、市民のいのち・健康・くらしを守るべきが地方自治体です。ところが、医療・福祉・教育など、市民の切実な要求の分野では、事業の内容・事業費がどんどん削減されています。
昨年度は、子ども医療費の対象年齢引き上げに、市の負担は少なく、子育て世帯に新たな負担を求め、対象年齢だけを中学校3年生まで引き上げる方針が出されました。実施は、来年1月からとなりますが、子育てや福祉に対する市のお粗末な姿勢が、ここに顕著に示されているのではないでしょうか。
母子福祉資金貸付の実績を見ると、貸出実績は少なく、貸すことよりも、貸したお金を取り返すことに必死になっている市の姿勢が見えました。地震の発災もあった年度ですから償還金の支払い猶予をもっと取り組んだり、違約金をなくすなど、一番厳しい生活実態にある母子家庭の実態に即した事業の実施が必要ではなかったでしょうか。敬老祝い品制度は、対象者がますます狭められ、80歳と100歳だけになりました。実績では、対象者が4割も減りました。長年社会に貢献されてきた方々に、あまりにも冷たいと思います。支給回数が削減されている国民健康保険の健康事業「あんま・はり・きゅう」への助成は、予算の5割近い2367万円が不用額となっていました。現場からは、回数を増やしてほしいという声もあり、元の年60回に戻しても、現行予算で対応できるのではないかと思います。改善を要望いたします。現場の強い要望で2015年度から実現した障がい者の燃料費助成制度は、実施している政令市のほとんどが知的障がい者に限らず、身体や精神の手帳所持者にも支給されています。早急なる改善をお願いいたします。さくらカード事業は、ICカード化によって障がい者のパス券がなくなり、利用実績が大きく落ち込みました。さくらカード事業は、利用されてこそ、その目的である障がい者・高齢者等の社会参加の促進を図ることができます。ICカード化によって、利用しにくくなったという声が多数寄せられています。障がい者のパス券復活を強く要望しておきます。
教育分野でも、学校図書館・市立図書館の蔵書予算が削られたり、図書館司書や学校図書司書補助員の方々はお粗末な処遇の中で働かれています。
ご紹介したのは一部ですが、医療・福祉・教育での貧しい事業の実態は早急に改善されなければならないと思います。
第4に、市のすすめる行財政改革の中で、民間委託や指定管理者制度導入が広がっています。公の業務を民間にゆだねる中で、現場には非正規雇用がどんどん増えるとともに、位置づけは正規職員であっても非正規並みの処遇で働く職員も増えています。今議会で、複数の議員から指摘がありました。同じ仕事をしているのに、あまりにも違うその待遇は、モチベーションも上がらず、経験も積み重ならず、長期的な視野でみれば、行政の業務に一番必要な人材育成に大きなマイナスとなるのではないでしょうか。正規雇用の職員を確保し、同じように働いたら同じ賃金・報酬を補償すべきと考えます。特に、生活保護業務の現場に、非正規ケースワーカーの配置が常態化しています。現在の社会情勢を反映して、高いスキルの求められるケースワーク業務のはずが、充足率も達成しないばかりか、非正規で穴埋めするような現状は即刻改善されるべきであると考えます。
他の政令市では当たり前になっている非正規職員の交通費実費支給についても、直ちに改善していただくよう要望しておきます。
縷々述べましたが、指摘致しました点を十分踏まえ、今後の市政運営を行っていただくようお願いいたしまして、反対討論といたします。