3月議会最終日、提案されていた「熊本市基本構想・基本計画の見直し」について問題点を指摘し、討論を行いました。
基本構想・基本計画は、市政運営の方向を定める基本となるもので、市民の感覚に沿ったものであること、市民の声を充分に反映したものであることが極めて重要です。しかし、計画見直しにあたって、市民の声はパブリックコメントや地域説明会、「市長と語ろう」等で聞かれていますが、パブリックコメントに寄せられた意見はわずか3件、その一つには、「そもそも多くの市民は総合計画というものを知らない。後半の4年間では、もっと総合計画の広報に力を入れ、市民の認知度を上げてほしい」という意見がありました。これが、市民の率直な声です。
今回の見直しでは、SDGsが重視されています。しかし、実際の市政運営において、具体的な施策の内容に反映されているか、疑問もあります。
防災・減災においても、「公助」の重要と言いながら、全体として「自助」や「共助」が強調されているように思います。
経済の面でも、中小・小規模企業の経営基盤の強化や円滑な事業承継への支援」等々と言いつつ、新年度の予算ではインバウンドに光を当てた施策が多く、もっと地域に軸足を置き、地域循環型の経済へと転換していくべきではないかと思います。
農業の面では、「『家族農業の10年』で示されている理念を施策に反映させている」と言いながら、「家族農業の10年」の文言が計画には明記されていません。
今の大型開発・ハコモノ優先、公共サービスの民間化をすすめる市政運営をさらに推し進める基本構想・基本計画となっています。
「見直し」というならば、住民の目線で、住民の願いに沿った市政運営をすすめていく方向でも見直しこそ必要です。
<討論の内容>
議第123号「熊本市基本構想及び熊本市基本計画の変更について」の問題点を指摘し、反対討論を行います。
今回の「基本構想・基本計画」の見直しは、提案理由説明にありましたように、本市の最優先課題である「熊本地震からの復旧復興」を柱に据えるとともに、人口減少・超高齢化社会の本格的な到来に加え、SDGsの理念や国土強靭化などの新たな視点を踏まえ、すべての分野の施策が見直されています。
基本構想では、今後のまちづくりの課題として、⓵熊本地震からの復旧復興、⓶人口減少・超高齢化への対応、⓷日常生活に必要なサービスの確保、⓸地域コミュニティの維持・向上、⓹持続可能なまちづくり、⓺技術革新への対応とスマートシティの実現、の6つの柱を掲げ、熊本地震からの復旧復興を中心に、柱に沿った分野別の基本方針が立てられています。基本計画は、それを具体的にすすめていく取り組みの内容です。
第1に、都市整備の方針では、熊本市が2018年4月に公表した「立地適正化計画」に基づく市街地の形成方針として、市街地と地域拠点を中心に均整の取れた市街地の形成を図るとされていますが、立地適正化計画は、都市機能誘導区域での開発促進を大きな目的とするとともに、市街地と居住誘導地域となる地域拠点に商業施設・医療機関・銀行等の誘導施設を設置していくために、誘導区域外となる市街化調整区域の人口はますます減少します。「均整の取れた」とは言い難い状況が予想されるとともに、中心市街地での集中した開発の推進は、桜町再開発・熊本城ホールや市庁舎建替えの強行、市の景観基準を緩和し、市街地での超高層ビル建設を加速するような大型ハコモノのまちづくりをすすめていくことになります。ひいては、市財政への過大な影響を考えれば、人口減少で税収も減っていく時代に逆行するようなまちづくりです。そして、都市景観の向上と言いながら、熊本のシンボルである熊本城の眺望も阻害されていきます。
第2に、政府が毎年閣議決定する骨太方針に沿って、補助金などに誘導されながら、公共サービスの民間化がすすめられています。本市の基本計画においても、あらゆる分野において住民サービスを官から民へと委ねる施策が連なっています。民間委託、指定管理、PFIなど、手法はさまざまですが、本来利益を生まないはずの公共サービスが企業の儲けの対象となり、サービス低下や、そこで働く労働者の処遇の低下を招いていることは、由々しき問題であると指摘しなければなりません。国においては、2009年5月に「公共サービス基本法」が制定されました。その基本理念には、安全かつ良質な公共サービスが確実・効率的かつ適正に実施されること、国民の需要に的確に対応するものであること、国民の自主的かつ合理的な選択の機会が確保されること、国民の意見が公共サービスの実施等に反映されることなどが掲げられています。公共サービスの提供は、利潤追求の企業活動とは相容れない、公だからこそできるものであることを示しているのではないでしょうか。
第3に、基本構想の「技術革新への対応とスマートシティの実現」を具体化するものとして、あらゆる分野で情報化・IT化がすすめられ、毎年莫大な予算が投じられています。これは、安倍政権下で打ち出された「自治体戦略2040構想」の「4つの柱」の第1に掲げられている2040年を目標年にAIやロボティクスを活用した「スマート自治体」をつくるという構想に呼応したものです。しかし、「自治体戦略2040構想」は、住民自治を基本にした団体自治、地方自治全体を否定し、新たな情報技術による利便性向上ということで、公共サービスの産業化策として、情報関連企業に公共の業務とその財源、公共施設を開放する、いわば個人情報・公共財産等を企業の経済的成長に活用させるものです。しかも、住民一人一人の暮らしが向上するというのではなく、その恩恵を受けるのは特定の大企業です。
第4に、今回の見直しは、熊本地震からの復旧復興を大きな柱にしています。しかし、市政運営の現状を見るならば、震災復興ですすめていることは、震災に名を借りてMICE施設・熊本城ホール整備を最優先ですすめる大型ハコモノ行政で、大企業の利益を優先し、被災者を切捨てるものとなっています。桜町再開発会社には、再開発資金を無利子で69億円も貸し付け、一方では、一番苦しんでいる被災者への貸付には3%の高利で貸し付けを行っていることも、それを象徴しています。まだまだ困難を抱えた人が多数いる中で、被災者への直接に支援は早々に切り上げ、ハード整備に偏重した復興でいいのか、市の基本姿勢が問われるところです。基本計画では、地域におけるまちづくりの防災・減災の面でも、自助・共助が強調されています。しかし、「自助・共助・公助」の関係について、全国的にも防災の第1人者と言われている兵庫県立大学大学院教授の室崎益(よし)輝(てる)氏は、著書の中で「自助と公助は責任で、共助は規範。自助と公助はどちらも大切で、その責任は半々」であると述べられていました。災害時に住民の生命財産を守るべき自治体が何をなすべきか、公助の役割、自治体の責任こそしっかりと明記しておくべきです。
第5に、2019年7月に、「熊本地震の経験と教訓をいかした地域(防災)力の工場事業」を自治体SDGsモデル事業として実施する「SDGs未来都市」に選定されました。「SDGs未来都市」に選定されたことは素晴らしいことだと思いますが、重要なことは、「誰も取り残されない」持続可能な社会への変革を目指し、2030年達成を目標に、17の国際目標と169のタ―ゲットに、全面的に取り組んでいくことです。特に、国連がめざす世界共通のゴール、「8つの優先課題」をしっかりと位置づけ、17のゴールのトップ5、「貧困の撲滅」「飢餓撲滅・食料安全保障」「すべての人の健康と福祉」「万人への質の高い教育」「ジェンダー平等の実現」を市政の優先課題として取り組んでいくことが重要です。市民のいのち・くらし・平和が大切にされる市政の実現こそ求められていると思います。
第6に、SDGsにかかわりもう一つ重要なのは農業です。基本計画・第7章「豊かな自然環境を生かした活力ある農水産業の振興」のタイトルの下にはSDGsのロゴマークが印刷されているにもかかわらず、基本構想・基本計画には、国連がすすめるSDGsを基本に置いた家族農業の取り組みについての文言が全く見られません。SDGsを推進する立場に立つならば、農業分野においても、ICTやAI技術の活用という前に、国連が掲げる「家族農業の10年」に沿った家族農業支援の本格的な取り組みが必要です。国が推進してきた競争力重視の農業を転換し、農産物の輸入自由化をストップするとともに、価格補償や所得補償を充実させ、担い手の確保・育成に総力をあげ、大小さまざまな家族農業が維持できる農政こそすすめていかなければなりません。
基本構想・基本計画は、市政の基本となるものであり、内容は多岐にわたっていますが、主な点についての意見を述べて反対討論といたします。
基本構想・基本計画は、市政運営の方向を定める基本となるもので、市民の感覚に沿ったものであること、市民の声を充分に反映したものであることが極めて重要です。しかし、計画見直しにあたって、市民の声はパブリックコメントや地域説明会、「市長と語ろう」等で聞かれていますが、パブリックコメントに寄せられた意見はわずか3件、その一つには、「そもそも多くの市民は総合計画というものを知らない。後半の4年間では、もっと総合計画の広報に力を入れ、市民の認知度を上げてほしい」という意見がありました。これが、市民の率直な声です。
今回の見直しでは、SDGsが重視されています。しかし、実際の市政運営において、具体的な施策の内容に反映されているか、疑問もあります。
防災・減災においても、「公助」の重要と言いながら、全体として「自助」や「共助」が強調されているように思います。
経済の面でも、中小・小規模企業の経営基盤の強化や円滑な事業承継への支援」等々と言いつつ、新年度の予算ではインバウンドに光を当てた施策が多く、もっと地域に軸足を置き、地域循環型の経済へと転換していくべきではないかと思います。
農業の面では、「『家族農業の10年』で示されている理念を施策に反映させている」と言いながら、「家族農業の10年」の文言が計画には明記されていません。
今の大型開発・ハコモノ優先、公共サービスの民間化をすすめる市政運営をさらに推し進める基本構想・基本計画となっています。
「見直し」というならば、住民の目線で、住民の願いに沿った市政運営をすすめていく方向でも見直しこそ必要です。
<討論の内容>
議第123号「熊本市基本構想及び熊本市基本計画の変更について」の問題点を指摘し、反対討論を行います。
今回の「基本構想・基本計画」の見直しは、提案理由説明にありましたように、本市の最優先課題である「熊本地震からの復旧復興」を柱に据えるとともに、人口減少・超高齢化社会の本格的な到来に加え、SDGsの理念や国土強靭化などの新たな視点を踏まえ、すべての分野の施策が見直されています。
基本構想では、今後のまちづくりの課題として、⓵熊本地震からの復旧復興、⓶人口減少・超高齢化への対応、⓷日常生活に必要なサービスの確保、⓸地域コミュニティの維持・向上、⓹持続可能なまちづくり、⓺技術革新への対応とスマートシティの実現、の6つの柱を掲げ、熊本地震からの復旧復興を中心に、柱に沿った分野別の基本方針が立てられています。基本計画は、それを具体的にすすめていく取り組みの内容です。
第1に、都市整備の方針では、熊本市が2018年4月に公表した「立地適正化計画」に基づく市街地の形成方針として、市街地と地域拠点を中心に均整の取れた市街地の形成を図るとされていますが、立地適正化計画は、都市機能誘導区域での開発促進を大きな目的とするとともに、市街地と居住誘導地域となる地域拠点に商業施設・医療機関・銀行等の誘導施設を設置していくために、誘導区域外となる市街化調整区域の人口はますます減少します。「均整の取れた」とは言い難い状況が予想されるとともに、中心市街地での集中した開発の推進は、桜町再開発・熊本城ホールや市庁舎建替えの強行、市の景観基準を緩和し、市街地での超高層ビル建設を加速するような大型ハコモノのまちづくりをすすめていくことになります。ひいては、市財政への過大な影響を考えれば、人口減少で税収も減っていく時代に逆行するようなまちづくりです。そして、都市景観の向上と言いながら、熊本のシンボルである熊本城の眺望も阻害されていきます。
第2に、政府が毎年閣議決定する骨太方針に沿って、補助金などに誘導されながら、公共サービスの民間化がすすめられています。本市の基本計画においても、あらゆる分野において住民サービスを官から民へと委ねる施策が連なっています。民間委託、指定管理、PFIなど、手法はさまざまですが、本来利益を生まないはずの公共サービスが企業の儲けの対象となり、サービス低下や、そこで働く労働者の処遇の低下を招いていることは、由々しき問題であると指摘しなければなりません。国においては、2009年5月に「公共サービス基本法」が制定されました。その基本理念には、安全かつ良質な公共サービスが確実・効率的かつ適正に実施されること、国民の需要に的確に対応するものであること、国民の自主的かつ合理的な選択の機会が確保されること、国民の意見が公共サービスの実施等に反映されることなどが掲げられています。公共サービスの提供は、利潤追求の企業活動とは相容れない、公だからこそできるものであることを示しているのではないでしょうか。
第3に、基本構想の「技術革新への対応とスマートシティの実現」を具体化するものとして、あらゆる分野で情報化・IT化がすすめられ、毎年莫大な予算が投じられています。これは、安倍政権下で打ち出された「自治体戦略2040構想」の「4つの柱」の第1に掲げられている2040年を目標年にAIやロボティクスを活用した「スマート自治体」をつくるという構想に呼応したものです。しかし、「自治体戦略2040構想」は、住民自治を基本にした団体自治、地方自治全体を否定し、新たな情報技術による利便性向上ということで、公共サービスの産業化策として、情報関連企業に公共の業務とその財源、公共施設を開放する、いわば個人情報・公共財産等を企業の経済的成長に活用させるものです。しかも、住民一人一人の暮らしが向上するというのではなく、その恩恵を受けるのは特定の大企業です。
第4に、今回の見直しは、熊本地震からの復旧復興を大きな柱にしています。しかし、市政運営の現状を見るならば、震災復興ですすめていることは、震災に名を借りてMICE施設・熊本城ホール整備を最優先ですすめる大型ハコモノ行政で、大企業の利益を優先し、被災者を切捨てるものとなっています。桜町再開発会社には、再開発資金を無利子で69億円も貸し付け、一方では、一番苦しんでいる被災者への貸付には3%の高利で貸し付けを行っていることも、それを象徴しています。まだまだ困難を抱えた人が多数いる中で、被災者への直接に支援は早々に切り上げ、ハード整備に偏重した復興でいいのか、市の基本姿勢が問われるところです。基本計画では、地域におけるまちづくりの防災・減災の面でも、自助・共助が強調されています。しかし、「自助・共助・公助」の関係について、全国的にも防災の第1人者と言われている兵庫県立大学大学院教授の室崎益(よし)輝(てる)氏は、著書の中で「自助と公助は責任で、共助は規範。自助と公助はどちらも大切で、その責任は半々」であると述べられていました。災害時に住民の生命財産を守るべき自治体が何をなすべきか、公助の役割、自治体の責任こそしっかりと明記しておくべきです。
第5に、2019年7月に、「熊本地震の経験と教訓をいかした地域(防災)力の工場事業」を自治体SDGsモデル事業として実施する「SDGs未来都市」に選定されました。「SDGs未来都市」に選定されたことは素晴らしいことだと思いますが、重要なことは、「誰も取り残されない」持続可能な社会への変革を目指し、2030年達成を目標に、17の国際目標と169のタ―ゲットに、全面的に取り組んでいくことです。特に、国連がめざす世界共通のゴール、「8つの優先課題」をしっかりと位置づけ、17のゴールのトップ5、「貧困の撲滅」「飢餓撲滅・食料安全保障」「すべての人の健康と福祉」「万人への質の高い教育」「ジェンダー平等の実現」を市政の優先課題として取り組んでいくことが重要です。市民のいのち・くらし・平和が大切にされる市政の実現こそ求められていると思います。
第6に、SDGsにかかわりもう一つ重要なのは農業です。基本計画・第7章「豊かな自然環境を生かした活力ある農水産業の振興」のタイトルの下にはSDGsのロゴマークが印刷されているにもかかわらず、基本構想・基本計画には、国連がすすめるSDGsを基本に置いた家族農業の取り組みについての文言が全く見られません。SDGsを推進する立場に立つならば、農業分野においても、ICTやAI技術の活用という前に、国連が掲げる「家族農業の10年」に沿った家族農業支援の本格的な取り組みが必要です。国が推進してきた競争力重視の農業を転換し、農産物の輸入自由化をストップするとともに、価格補償や所得補償を充実させ、担い手の確保・育成に総力をあげ、大小さまざまな家族農業が維持できる農政こそすすめていかなければなりません。
基本構想・基本計画は、市政の基本となるものであり、内容は多岐にわたっていますが、主な点についての意見を述べて反対討論といたします。