東京多摩借地借家人組合

アパート・賃貸マンション、店舗、事務所等の賃貸のトラブルのご相談を受付けます。

全借連新聞を読む Xのスペースで新聞記事を読み、解説を行う

2024年12月24日 | 法律知識
 昨年12月14日のⅩのスペースでは、全借連新聞12月15日号の京借連と生健会(生活と健康を守る会)共催で開催した学習会について、新聞の記事が読み上げられ、学習会のテーマである「明渡し・賃料増額・原状回復問題」について、議論しました。
藤田 京都ではどうしてこのテーマで学習会が行われたのか。高齢者住宅の現状とはどういう現状なのでしょうか。
細谷 私が京借連の皆さんからのお話を聞くと、京都では過去の戦争において空襲で家が焼かれなかったため、築70年を超える借家に住んでいる方もいるようです。家主が地上げ屋等に家を売却し、新しい家主からの明渡しの相談が非常に多いと聞いています。借家人も高齢で明渡しを求められても転居先がなく、明渡しを拒否すると高額な家賃値上げを請求され、調停や裁判になる事例が多いようです。
 次に「賃貸住宅の賃貸借契約に係る相談対応研修会」の記事が紹介されました。
藤田 フォロワーさん達からの相談でも原状回復問題の相談は多いです。記事の中で原状回復のガイドライン再改定版の解説で
どのような点が重要なのでしょうか。
細谷 原状回復トラブルには二つの次元があり、明確に分けて理解することが必要です。第1は民法上の原状回復義務であり、令和2年の民法改正で賃借人の原状回復義務は「通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年変化を除く」と明文化されました。ガイドラインでは「賃借人の故意過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・棄損を復旧すること」と定義されました。賃借人が普通に使っていて、建物や設備が痛んだものは原状回復する必要はなく、どのような場合が通常使用を超えるのかガイドラインで整理されています。
第2は特約で民法上のルールと異なる合意に基づいて賃貸人から請求され、トラブルになるケースがあります。特約の合意が成立しているかどうかは、最高裁の平成17年12月16日の判決が重要で、ガイドラインではこの判決を受け、特約が成立する場合に3つの要件が設けられました。①特約の必要性があり、かつ暴利的でないなどの客観的、合理的理由の存在。②通常の原状回復義務を超えた修繕等の義務を負うことの認識。③賃借人の特約による義務負担の意思表示をしていること。通常不動産業者は、特約について賃借人が不利な特約であることを賃借人に明確に認識するような説明を行うことは稀で、特約を契約書に書くだけでは無効になるケースが多いです。
藤田 私のオフィスの賃貸借契約書では通常損耗でも賃借人負担と明記されていますが、何らの説明もなく明確な合意がなければ、特約は無効になると考えていいのでしょうか。
細谷 その通りです。また、ガイドラインでは賃借人の過失による損害賠償の責任の範囲ですが、毀損部分の原則最小単位であり、かつ減価償却を考慮した現在価値について責任を負うとされています。壁のクロスの小さなシミがある場合は、1㎡単位の修繕費を負担すればよいとの判例もあります。さらに、経過年数の考え方で、クロスは6年、カーペットは6年など設備や壁、床等の耐用年数が定められ、入居していた年数により、賃借人の負担割合も変わります。修理費用の全額を賃借人が負担する必要はありません。
 国交省の賃貸借契約に係る相談対応研修会は毎年(株)社会空間研究所の主催で開催され、無料でどなたでもオンラインで参加申込できます。申込すると同研究所から沢山の資料が送られてきます。また、資料を見たい方は同研究所のホームページからダウンロードすることもできます。全借連新聞をお読みの方で、賃貸借契約について関心のある方はぜひ研修会にご参加ください。


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残置物処理モデル契約条項解説セミナー

2024年12月24日 | 残置物処理モデル契約条項
 国交省の補助を受けて社会空間研究所主催による第2回残置物の処理等に関するモデル契約条項の解説セミナーが12月12日にオンラインで開催された。
 国交省住宅局の参事官(マンション・賃貸住宅担当)の課長補佐の船田一元氏が、残置物の処理等に関する国土交通省の取組みを報告した。民間賃貸住宅における65歳以上の入居者の割合が30年間に約2倍に増加し、一人世帯の割合も2018年で約6割と増えている。自宅で亡くなるケースも増加傾向にあり、賃借人の死亡後、居室内に残された家財(残置物)の処理や賃貸借契約の解除などについて賃貸人の不安を払拭するために、これらの問題を円滑に処理するための事務委任契約のひな型として残置物の処理等に関するモデル契約条項を作成し、モデル契約条項の活用ガイドブックを作成し、今後単身高齢者等の賃貸住宅への円滑な入居を支援していきたいと述べた。
 次に、モデル契約条項の解説を佐藤貴美弁護士が行った。契約の終了・残置物の処理に係る法的な問題や各モデル契約条項の内容等について詳しく解説した。契約書の条項で賃料の滞納を原因として部屋の入口を施錠し、賃借人の動産類を勝手に処分する行為は違法な自力救済行為に当たると指摘した。
 次に、公営財団法人神奈川住まいまちづくり協会事業部担当部長の入原修一氏がモデル契約条項の活用事例を報告した。


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ついに岩盤が動く!物価に異変【経済コラム】

2024年12月24日 | 家賃・地代の値上げ

物価に異変です。長い間、指数があまり変化せず、『岩盤』とも呼ばれていた品目をご存じですか。物価上昇が続く中、ついにその
『岩盤』が動き出しました。
いったい何が起きているのか。景気を左右しそうな異変の背景を追いました。
(経済部 佐々木悠介)

1通の手紙がわが家に

先月、私が住んでいるマンションに不動産会社から1通の手紙が届きました。
中身は契約更新のお知らせについて。
都内の賃貸マンションに住む私は2年ごとに更新する契約でしたが、内容を確認すると、家賃がこれまでより5000円増えていたので
す。
年間で6万円負担が増える計算です。
今の家には4年暮らしていますが、家賃の改定は初めてのことでした。最近子どもも生まれ、何かと出費が多くなるなかでの家賃の上
昇。かといって家を買おうにも高くて手が届かない。
その日の夜は泣く泣くサブスクの見直しなど家計の固定費削減に向けた家族会議が開かれることになりました。

岩盤品目が30年ぶり上昇に

調べてみると家賃の値上げはどうやらわが家だけではないことがわかってきました。消費者物価指数にも家賃の値上げがあらわれはじ
めています。
11月の消費者物価指数(CPI)をみてみましょう。
東京都区部の一般的な賃貸住宅の家賃を示す「民営家賃」は前年同月比で0.9%のプラスになりました。
消費者物価指数における「家賃」はほとんど指数が変化しない象徴とされてきました。
ここ20年は前年同月を下回る「マイナス」の水準が続いていましたが、それが去年の10月から徐々に上昇、ことし11月の上げ幅は
0.9%まで拡大し、1994年以来30年ぶりの高い水準にまであがったのです。
また不動産調査会社の調べでも東京23区の分譲マンションの募集賃料は2年前から上昇傾向がより顕著になったといいます。
これは新型コロナウイルスが一時期よりも落ち着き、人の流れが都心部に戻ってきたことが大きな要因だとしています。
築年数別にみると1平方メートルあたりの価格は築21年~30年のマンションは15%も上昇しています。

要因1 そもそもマンションが「高い」

なぜ家賃が値上がりしているのか。
まず要因として指摘されているのが、そもそもマンションを中心に販売価格が高くなっていることです。
特に都心部のマンションの価格は右肩上がり。
不動産経済研究所によりますと、ことし10月に首都圏(東京、神奈川、埼玉、千葉)の新築マンションの平均価格は去年の同じ月より
40%あまり上昇し9239万円でした。
東京23区に限ると平均1億2940万円。
富裕層など一部の世帯しか都心部にはマンションを購入することができなくなったとも言われています。このためマンションの購入を
ためらう人が増え、代わりに中古住宅や賃貸マンションに流入してきているとみられています。
こうしたなかで賃貸の需要も高まり、価格を押し上げている要因になっていると指摘されています。
東京カンテイ 高橋雅之 上席主任研究員
「都心部のマンション価格の高騰に伴って、賃貸への需要は引き続き根強い。来年の春に引っ越しなど人流が活発になるので、そのと
きに都心部の賃貸価格がどうなるか注視したい」

要因2 金利ある世界が影響?

しかしマンションの価格上昇はいまに始まったことではありません。
そうしたなかでもう1つの要因として指摘されているのが、日銀による利上げの影響です。
日銀はことし3月におよそ17年ぶりに利上げに踏み切りました。7月には政策金利を0.25%に引き上げる追加の利上げを決めました。
こうした日銀の動きを受けて、金融機関では住宅ローンの金利を引き上げる動きが広がっています。
住宅ローンのおよそ7割を占めている変動型の住宅ローン金利は、3月に日銀が利上げに踏み切った時は据え置く銀行が多く見られまし
た。
ただ7月の追加利上げを受けて、各行とも見直しを進めました。
新規の借り入れを対象にした変動型で最も優遇する場合の金利でみると、
▽三菱UFJ銀行とみずほ銀行は据え置いていますが、
▽三井住友銀行は9月の0.475%から、11月は0.625%に、
▽りそな銀行は9月の0.34%から、11月は0.39%に、
▽三井住友信託銀行も9月の0.33%から、11月は0.48%に、
それぞれ引き上げました。
こうした金利の引き上げが、投資用マンションを購入したオーナーにも影響したとみられています。
投資用マンションを所有するオーナーからすれば、ローンの金利が上昇すれば、一定期間の激変緩和措置があるとはいえ、ゆくゆく返
済が増えることになります。
このためオーナーたちは負担が増えることを見込んで家賃に転嫁しているのではないかと専門家は分析しています。
みずほリサーチ&テクノロジーズ 河田皓史 主席エコノミスト
「賃貸のニーズが高い状況だと、ローンをかかえるオーナ側からすれば、少し強気の価格設定でも、家賃収入を得られる。このため今
後も賃貸価格の上昇圧力を高める一つの要因になるのではないか。今後も金融機関の金利見直しが家賃に与える影響は少なからず出て
くると思われる」

岩盤を超えるか

家賃や住宅ローン返済など住まいに関連する支出は避けては通れません。
ほかの支出=例えば遊興費やレジャー、ちょっとしたご褒美、習い事などを少しずつ削らなければ家計の収支は悪化してしまいます。
今回は東京の家賃を例に挙げましたが、ほかの地域にもこうした傾向が広がれば、次第に節約を余儀なくされる家計が増え、消費の伸
びが鈍化することも予想されます。
コロナ禍からの経済急回復によってエネルギー、穀物、輸送費などさまざまなモノやサービスの価格が上昇。
ウクライナ情勢や円安も加わって輸入コストは上昇し、企業による価格転嫁もあいまって物価は上昇しました。
これが企業の背中を押し、賃上げに勢いがつきました。
ただ、実質賃金はどうでしょうか。
一時プラスになりましたが、再びマイナスに転じ、上昇基調はまだ見えません。
まさに物価上昇を上回る賃上げが実現するのかどうかがカギとなる中で、物価の『岩盤』=家賃が動き出したのです。
物価上昇>賃上げとなってしまうのか、それとも物価上昇<賃上げか。
家賃の動向は、経済が好循環に入るかどうかも左右しそうです。

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