高齢を理由に、賃貸物件の入居を断られるケースが相次いでいます。
65歳以上専門の不動産会社「R65不動産」の調査では、部屋を探す高齢者の4人に1人が入居拒否を経験したと回答しています。
高齢者への住宅“貸し渋り”問題の実態を追いました。
「みんな死ねっていうのと一緒や」 15年暮らした家から突然の立ち退き 転居先は見つからず…
愛犬と暮らす川本百合子さん(77)
奈良県天理市に住む、川本百合子さん(77)。
足腰が悪く生活保護を受けています。
愛犬・リリーちゃんと過ごす時間を何よりの楽しみにしていて、取材中もリリーちゃんの話題になると笑顔がこぼれます。
若いころは飲食店で働き結婚もしましたが、20年以上前に離婚し、現在は1人暮らしです。今のアパートに住んで約15年。ケアマネ
ジャーに生活を手伝ってもらいつつ細々と過ごしてきました。
しかし今年に入り突然、建物の老朽化を理由に大家から立ち退きを求められました。アパートの老朽化が理由で、準備期間や引っ越
しの補助などがなされている場合、立ち退きを断ることはできないといいます。
「行くとこなかったら死ななあかんやん」
まず頼ったのは行政・天理市でした。市営住宅への引っ越しを希望しましたが、老朽化のため入居できないと回答があり、自分で住
居を探すよう言われました。
次に相談したのは不動産会社でしたが、思わぬ壁が立ちはだかります。
川本さんの希望通りの物件はあいているにも関わらず、年齢を理由に借りることができなかったのです。
「不動産会社はみんなそない言わはんねん。年で…そんなんいうたら『みんな死ね』っていうのと一緒や。行くとこなかったら死なな
あかんやん」
大家ら66%が拒否感 紹介できる物件は約2~4割
高齢者への“貸し渋り”は全国的な問題となっています。国土交通省の2021年度の調査では、高齢者の入居に拒否感があるとした大
家らは66%に上りました。
なぜ、多くの大家らに拒否感があるのか、奈良県天理市の不動産会社「メモリーホーム」の内田一行さんに聞きました。
「私どもも、オーナーさんや貸主さんも是非借りていただきたいという思いはありますが、高齢の方で特に1人暮らしになると承諾し
てもらえないことが多くあります。」
その理由として内田さんがあげるのはー
「一番多いのは孤独死の危険性です。入居者が亡くなった後の荷物の引き渡しや解約の手続きをどうするのか、家族や周りの人からサ
ポートが受けにくいという部分が大きいです。他にも家賃をちゃんと払ってもらえるのかや、火事のリスクもあります。」
このようなリスクを懸念して、こちらの不動産会社では高齢者で1人暮らしの場合、紹介できる物件は2割から4割ほどに減ってしま
うといいます。
「けんもほろろに断られ」収入は年金のみ 借りるまでに1年半の苦労
大阪府守口市に住む中川忠良さん(81)も、貸し渋りに悩まされた1人です。80歳を超えていますが足腰はしっかりしていて買い物
に近くのスーパーに行くなど、外出をすることを日課にしています。
今住んでいるのは去年11月に引っ越してきた新居で、間取りは1DK。ここに住む前は30年ほど、姉の貞子さん(当時92歳)と2人で暮
らしていました。
しかし貞子さんが亡くなり、収入は月11万円ほどの年金のみに。家賃の安い物件を探しましたが、この部屋を借りるまで実に1年半
もかかりました。
「不動産会社は探しますという返事はしてくれても、けんもほろろに断られる。80歳という年齢…これがどうしてもネックになったん
ですね」
高齢者らに寄り添う「居住支援法人」の取り組み
困り果てた中川さんの助けになったのが、居住支援法人でした。居住支援法人は、2017年に国が制度化して始まり、高齢者や障害者
など住宅確保に配慮が必要な人に対して情報提供や相談、身元保証の代行サービスの提案、入居後の見守りといった支援をします。
社会福祉法人や不動産会社が指定されるケースが多く、今では全国で928法人(9月末時点)まで広がっています。
大阪市内の居住支援法人「リベルタ」の荻野恭子さんは中川さんの相談を受けて、高齢者の受け入れに積極的な不動産会社を紹介し
ました。
この不動産会社では、事前に大家に高齢者の入居の可否を確認することで、高齢者が相談に来た時により多くの物件を提案できる
ようにしていて、中川さんは10部屋ほどの紹介を受け、今の部屋に住むことができました。
荻野さんは、まだまだ高齢者に積極的に間口を広げてくれる不動産会社は少ないと話します。
「本当に親身になって対応いただける会社は1割あるかどうかです。不動産会社との連携は大事ですし。オーナーに理解していただく
ためにも我々、居住支援法人のフォローアップということをしっかりと広げていきたい」
しかし一方で、居住支援には高齢者ならではの大変さがついて回ります。後編では、一筋縄ではいかない「居住支援」の難しさに迫
ります。
【ABC特集】家賃上昇 保証人もいない・・・ 住む家が借りられない高齢者を支援する「居住支援法人」とは? 深刻化する“貸し
渋り”の実態<後編>
https://news.yahoo.co.jp/articles/3803081074d27951b6d9448aa7f31efbc4e24751
高齢を理由に、賃貸物件の入居を断られるケースが相次いでいます。奈良県天理市に住む川本百合子さん(77)は、建物の老朽化を
理由に突然、大家から約15年住んだ家からの立ち退きを求められました。
川本さんが頼ったのは、住宅確保に配慮が必要な人に対して情報提供などを行う「居住支援法人」でした。
条件に合う住宅がなかなか見つからず…支援の難しさ
奈良県天理市にある居住支援法人「やすらぎ会」で働く北中桃代さん。転居を希望する高齢者の相談に乗っていて、貸し渋りに悩む
川本さんの依頼も受けています。
取材した日、北中さんは同時に高齢者4人を含む6人の相談に応じていました。北中さんは高齢者の住宅探しの難しさは、希望条件の
多さにあると言います。
「1階であったりエレベーターが必要になったり。年金や生活保護で生活する人には家賃がすごく重要な条件になってきます」
近年の物価上昇で家賃も上がり、納得してもらえる部屋はますます少なくなっています。
他にも病院やスーパーが近いことや、親族と疎遠で保証人になれる人がいないなど、条件は多岐にわたります。
相談者の希望に応えるため、北中さんは不動産会社を何社も“はしご”しています。
「直接行くことで、顔を見て話させてもらったほうがいろんな情報をいただけますし、前に入居していた方の情報を共有できたりもし
ます」
実際に顔を突き合わせて話をすることで信頼を築くことができ、デリケートな内容も聞きやすくなるといいます。この日は3社を回
りました。
ただ、実際には相談者のすべての希望を満たす物件はなかなか見つからず、その時は相談者に丁寧に説明をして折り合いをつけても
らうことが多いと言います。
相談者との衝突も・・・ 住まい探しから8カ月 ようやく物件見つかる
8カ月の間、部屋を探し続けている川本さんのもとに、北中さんが物件の情報を持って訪れました。
川本さんの希望は、今の物件と同じくらいの広さと家賃、そして愛犬リリーちゃんと一緒に住めること。
「ここは本当はペット可で出てない物件なんですけども・・・」
北中さんがこの日紹介した物件は、今より狭い部屋でしたが、交渉の中でペットを飼っても良いことになり、川本さんは「これ見た
いな」と返事をしました。
内覧の日。間取りは1Kですが、収納スペースが充実した部屋。トイレとバスが別々なところもポイントです。
「ベッド置けそうやし。思ってたよりええやん」
「クローゼットもあって、何も捨てなくてもいけるわ」
部屋を見た川本さんは気に入った様子で契約することを決めました。
「あー良かった!」と笑顔を見せた北中さん。
聞けば、希望通りの物件を紹介できないなかで、川本さんと衝突することもあったのだとか。
北中さんは、川本さんが入居した後も、健康状態を聞いたり手続きの相談に乗るなど見守り活動を続けています。
足りない居住支援法人 “入居者の安定した生活” “オーナーの不安解消”「私たちの活動知ってほしい」
高齢者への貸し渋り問題に真正面から向き合う居住支援法人。数が足りていないこと、支援の中身が貸主側にあまり知られていない
ことが課題だと、北中さんは話します。
「奈良県内を見渡しても、他の自治体では同じように居住支援をしているところはあまりなく、福祉職の方がシャドーワークとして対
応にあたっている現状があります」
「私たちがこの取り組みをすることで、入居後に安定した生活を送ってもらい、退去の時もスムーズになる。そのことでオーナーさん
が懸念されているリスクや不安を解消していけると。そういうところを広く知っていただきたいなと思います
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます