春にむかっていく頃

2010-03-05 | Weblog



最近手に入れたフランス詩集の中から数多くの感銘できる詩を見つけた、
恥ずかしいことに学生時代は教科書に抜粋された物以外まったくといっていいほど文学作品を読んではいなかった。
この詩集はフランスで中世期から20世紀にかけて高く評価されてきた詩人達の代表作が載っている。

ここから気に入った詩を載せてみようと思う。


シャルル ドルレアン(1394-1465)

王族の一員(シャルル6世の弟の子)として生まれたが、権力争いのなかで父を暗殺され、
自らも百年戦争で捕虜となり、25年間をイギリスですごす。
この長い虜因生活の憂いさを詩作に打ち込んで紛らし、数々の傑作が生まれた。

帰国後はブロワの居城で多くの文人を庇護し、歌の会もたびたび催した、
フランソワ ヴィヨンもその集いに加わったことがあると言われる。



Rondeau  ロンドー

季節(とき)がマントを脱ぎ捨てた  

風と寒さと雨とのマント、   

そして縫い取りを身につけた

澄んで輝く日ざしの縫い取り。



獣も鳥も声を揃えて

それぞれの言葉で歌い叫ぶ。

季節(とき)がマントをぬぎすてた!と。

川も、泉も、せせらぎも


綺麗な揃いのお仕着せか、

水滴の銀の細工を身にまとい

誰もが衣を改める。

季節(とき)がマントを脱ぎ捨てた。

安藤元雄 訳


3行目は原語では 「Et s’est vestu de brouderie」 というように表現されているが
フランス語辞典で調べても意味が解からず和訳も抽象的な表現でよくわからない。

「季節がマントを脱ぎ捨てた」とはいえ今年は格別厚手のマントを羽織っていたロンドンはいまだに寒いけれど
クロッカスがけなげに顔を出し
アジサイの若葉も吹き出し始めた、
ゆっくりではあるものの確実に春に向かっているのだろう。