ピエール デ ロンサール(1524-1585)
16世紀後半の代表的な詩人。7人の同志でプレイヤード詩派を結成、個展作品の詩法,語法を大胆に取り入れて数多くの傑作を書き、宮廷でも重んじられて時代の詩風をリードした。今も愛誦されるいくつもの恋愛紙のほか思想詩や論述詩、叙事詩にも優れた仕事を残している。古典主義時代になると否定的評価を受けたが19世紀以来あらためて高く評価されるようになった。
カッサンドールへのオード
恋人よ、行ってみよう、あのバラが、
今朝陽をうけて
紅の衣を解いたあの花が
その紅の衣のひだも
君に似た色艶も、この夕べ
少しでも失くしてはいないか、どうか。
ああ!ごらんこんなにも短いうちに
恋人よ、バラはその美しい花を
ああ!地に散らしてしまっている!
おお なんと無情な「自然」。
こうも美しい花の命でさえも
朝から夕方までだなどとは!
それだから 恋人よ もし私を
信じてくれるのならば こよなくみずみずしく
咲きほこるその年齢のあいだに
摘め 摘むがよい 君の若さを
この花と同じように やがて老が
君の美しさを 枯れさせてしまうのだから。
(入沢康夫 訳)