ビビッド能里子トーク・サロン

医学的にも珍しい満十年の認知症介護について。自己分析や気分転換、幸せを感じる心の癖の付け方、メチャ料理など楽しく書きます

虹とラビアン・ローズ  著著より

2018-09-10 09:20:57 | エッセー
「本当の幸せをつかむ心のレッスン」1998年8月大和書房より発行
           
 数年前の五月の末、私は講演のため旭川へ行きました。
その時空港に迎えに来てくれたのは、三十代の美しい女性で、この講演を
紹介してくれた、私の著書の読者だったTさんです。
 空港のそばの美瑛は、なだらかな丘の斜面が続き、緑が一面に広がり、目に
沁みるような美しさでした。ところどころにそびえ立つポプラの木、咲き乱れる
美しい花々。後で聞いたら、北海道では一年中で最も美しいと言われる時期だ
そうで、私は本当に良い時のこの地を訪れたのです。
 そして車窓からの、如何にも北海道らしい雄大な景色をすっかり楽しんで
とても幸せな気持ちになれました。一泊二日の講演も終わり折角遠方に来たのだから
と、もう一泊しTさんとはすっかり親しくなりました。
             
 その間彼女の身の上話を聞いて、本当にお気の毒になりました。
一年前の夫をがんで亡くし、その悲しみの記憶が癒えないうちに、今度は突然妹さんを
交通事故で亡くなったのだそうです。Tさんは小学生の子供が一人いるのですが、今まで
専業主婦をしていたため、生活設計を立てるのもなかなか大変でした。
 心の中の大きな傷を受けた上、これから一人で子供を育てていかなければならない。
私は少しでも元気になれればよいと、心理カウンセラーの知識を応用して、真心を
込めていろいろとアドバイスをしました。それがとても嬉しかったらしく、帰りの
空港での別れに涙ぐむTさんを見て、私は後ろ髪を引かれる思いで離陸したのです。
 そして空を見たら、大きな美しい虹が出ていて、私は思わず「わあ、きれい!」と
心の中で叫び、じっと見とれました。
                
 虹が見えなくなって、イヤホーンを耳に差し込むと、大好きな「ラビアン・ローズ
バラ色の人生」が流れていました。「虹とラビアン・ローズ」・・・
 それは子供を抱えていて、健気に生きているTさんの未来を暗示するような気がして
私はとても嬉しかったのです。そして心の中で「Tさんが、明るく元気になって幸せに
なりますように」と、祈りながら北海道にさようならしました。
 あれ以来Tさんとの交流はずっと続いていて、北海道がすっかり好きになり、富良野の
ラベンダー、美瑛のひまわりなど見に何度も訪れています。
 今年はぜひ美瑛のじゃがいもの花を見に行きたいと思っていますが、彼女はすっかり
元気になって、現在はお花の先生として活躍しています。
 それにしても、人の縁とは何と不思議なものでしょう。私の著書を通して、遠い
地方の読者の方と知りあえた幸せを、私はとても感謝しています。



 
コメント
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