久しぶり「アンドレ、ギャニオンシリーズ」のCDを聞いたが、それはあまりに
叙情的で、大好きだけれど気持ちが高揚していないと、何だかメランコリックになる。
この曲を初めて聞いたのは、目白に「フォーシーズンホテル」のラウンジだった。
経堂駅の近くの英会話教室で知り合った人が「今フォーシーズンホテルで弾いて
いるが、今回で最後になる」と聞いて、とても雰囲気のある美人のTさんの演奏が
どうしても聞きたくなり、花束を持って友人と一緒に聴きに行った。
音楽には大変感受性が強い私だが、その時聞いた曲はまるで私の心の中にやさしく
フワーっと広がってくるように感じて、「こんな感覚初めて、これってなにかしら?」
と思った。弾いているTさんの傍に行って、「今の曲は何という題ですか?」と聞いたら
「愛に包まれて」と教えてくれた。何とロマンチックで素敵な曲だろう、私の心の中に
はフワーッと浸み込んでいくような、広がるような、今まで経験したことがない感覚。
それはきっと、「私の心の琴線をやさしく刺激したのだろ」と思ったが、昼下がりの
1月のとても寒かった日に、ラウンジの一部飛び出したような暖かい陽だまり。
まるで個室のような雰囲気で聞いた曲は、一生忘れられなくなった。
その後Tさんがプレゼントしてくれたのが「アンドレ・ギャニオンシリーズ」のCD
だった。後で知ったが演奏したピアノは「クララ・シューマン」が弾いていたそうだ。
そして、Tさんと親しくなり、偶然にも誕生日が同じだと気づいたのは、それから
2年程してからだった。私達は20歳違いだが、何でも話せる心友になった。
久しぶりに聴いて思わずメールしたら、すぐに返信があり、お互いに「素敵な思い出
は心の宝石」と、また感覚的に共通点が見つかった。
私は音楽の思い出は数限りないが、こんな素敵なイメージの共通な思い出があり
世代が違う情感豊かな心友がいてくれる、私はとても幸せだと思った。