森の中のティータイム

離婚を経験し子供達も独立 
暮らしの小さな発見をノートに。

「玉砕の島を生きて」の衝撃

2023-10-05 | 番組
2021年にNHKで放送された「玉砕の島を生きて~テニアン島 日本人移民の記録~」の続編
「玉砕の島を生きて(2)~サイパン島 語られなかった真実~」を観たのは今年8月の終
わりだった。太平洋戦争末期この地にアメリカ軍が上陸し、戦火に追われて止む無く肉親を
手にかけなければならなかった人々の話を、30年近く取材した記録である。

これまでも散々、戦争の残した悲惨な傷跡の記録の数々を観てきたが、これは更に重い記録
だった。以下、知りたくない人には「読まない」選択をされてもかまわないけれど、逆にそ
のような人々にこそ知って欲しいという思いもある・・。これが戦争の現実なのだと。

サイパンに投入された日本軍は、アメリカ軍の3分の1で、戦局は絶対的不利に陥った。そして、
「玉砕」という言葉では語りつくせない原島民の人々への日本兵の蛮行も語られた。
極限状態の中、兵士たちも憎しみに支配されていき、死んでいる相手に槍を指しハラワタを
出してそれを木にぶら下げるなどと言う証言も明かされた。

当時サイパンには多くの日本人移民が住み、街は繁栄していたが、戦火が押し寄せたことに
より、島の暮らしは一変した。水際に逃げ延びたある家族は、家を絶やさないためにと、長
男だけを逃がしたあと、母と姉二人、そして6人の妹弟は全員海に身を投げたという。

家族6人で洞窟に避難していた女性は、穴の中に砲弾が直撃し炸裂した時のことを語る。
爆風の後、土煙が消えた時、ふと見ると大きな石に頭をぶつけた父親が即死の状態だった。
「母ちゃん、父ちゃん死んでるよ」と母の方を見ると、隣で乳を飲んでいた赤子が泣いてい
たが、乳飲み子を抱えた母には頭がなかったと語り、60年以上過ぎてもその光景が見えると
語り、涙する。

追い詰められた人々に、あるデマが飛び交った。「男はアメリカに連れていかれ仕事をさせ
るが、女はひき殺している」そんな頃、マッピ岬周辺の洞窟で潜んでいた数家族は、戦車
が近づく音を聞き、青酸カリを飲んで命を絶った。若い母親は乳首に青酸カリを塗り、子供
にふくませたという。兄と共に青酸カリを飲んだというその女性は、自分だけ生き残ったが
妹は首を切って死んでいたと話す。「そんなことする必要がなかったのに」という女性は、
更に語る。

「生きて虜囚の辱めを受けず」と、捕虜とならず、死ぬまで戦うことを求められた兵士たち。
既に日本軍の指揮系統は崩壊し、一般の日本人に指図するようになった。人々が逃げる際に
子どもを木に縛り付けて行けと命じ、泣き声で米軍から気付かれるからと、母親を追った後
子どもを撃ち殺した。しかし米軍の収容所に行くと、その母親は殺されることもなく無事だ
った。女性は「あんなことする必要もなかったのに」と語り、夜も眠れないという。

ある男性は語る。その洞窟には6~7人の兵士と若い母親が10人ばかり隠れていたが、下士官
が「赤ん坊を泣かせるな」と命じて「泣かせるなら部下に殺させる」と言い、それに抗議し
て洞窟を出て行った一人の母親以外、全員が自分で赤ん坊の首を絞めたり兵隊に手伝っても
らい殺した。民間人の投降も許さない日本兵。

米軍第4海兵師団レポートによれば「日本兵が民間人を殺している」と記録に残っている。
投降することも許されず、追い詰められた民間人。

また、ある女性は語る。4~5歳の男の子をつれたおじさんが「いい子になるからやらないで」
と泣くその子の首を絞めていた。しかし、その男の子はしばらくすると息を吹き返し、おじ
さんはその子を連れてその場を離れ、暫くすると一人で戻ってきたという。

岸壁で幼子を抱き、身を投げようとした女性は、足首をおばあさんに捕まれ思い留まったと話す。
また戦前、福島県から渡ったサトウキビ農家の娘だった女性は、重い記憶を泣きながら語る。
米軍に追われ、300人以上の住人が逃げ込んだ洞窟で、当時6歳だった女性も家族7人で避難して
いた。ここでも身内同士で命を絶つ凄惨な光景が繰り広げられた。岩に子供の頭をぶつけて
叩きつけて殺し、みんなそのあたりに捨てたという・・・。

「首は飛んでる 手はぶら下がってる 足はぶら下がってる 内臓は見える」
「忘れない私は」と現地を訪ねて涙ながらに語る。一家はこの場を離れたが、飢えて衰弱しき
った生後6か月の妹は残していかざるを得なかったという。

彼女は妹の慰霊をし、島の先住民に日本兵が行った蛮行を詫びた。

これらの話を聴いた後しばらくの間、重苦しい気持ちのやり場もなくなり、ブログにもそれを
記さなければと思いつつも心がそれを拒むというジレンマに陥いった。そして、録画した映像
はそのままになってしまった。

そんな記事を書いて誰が読むのだろうと思うが、デッキの録画容量は残り少なく、これを削除
してしまうと、実体験ではないために私の記憶の中からも消え去るのは確実だろう。
だから、力を振り絞って今記すことにした(大袈裟wでも、本当に手首がツライ;)

実際、こういう記事は人気もなく、落差が大きい(笑)↓ かと思えば、過去のあるシリーズ
番組の記事では、再放送されるたびに瞬間的にアクセスが100位以内になったりもするから驚く;

 

だけど、こういう記事を残さなければという思いは燻り続ける。これらの証言をした多くの方
々が、当時まだ子供だったり、若い母親だったけれど、既に亡くなられたり、認知症になられ
たりしている。どうか、忘れずに語り継がれますようにと願いつつ、乱文になり申し訳なく;


それから、もう一つ衝撃だったのは今年12月に判決がでるという「冤罪の深層」で知った事件。
警察内部からの告発により判明した、公安組織の「ある部署」を維持するために作り上げられ
たという「でっち上げ」。これにより無実でありながら検挙された中小企業のトップ3名のうち
の一名は、拘留中に病気のために亡くなったという。

これを、日曜の夜9時というゴールデンタイムに放送したNHK総合の心意気を買いたい。
これを判決3か月前に多くの国民に知らしめて、警察内部の腐敗を暴いてみせた勇気にも
ややNHKを見直したかも。

コメント (2)    この記事についてブログを書く
« 少し元気になれたかな | トップ | 「カールさんとティーナさん... »
最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (みなあん)
2023-10-05 23:18:39
毎年夏の恒例のように、NHKを中心に戦争関連の番組が多く放送されますね。
私もなるべく録画して観ていますが、段々と麻痺してくる感覚の中、この番組は心を建て直されたものの一つです。
ほんの少しの出来事や出会いの違いで生き延びた方々は、凄惨な記憶とやり場のない怒りを抱えて生きていく過酷な戦後となり、本当に言葉もありません。
日本に古くからある恥の文化や死生観が、戦時には市民を巻き込んで狂気へと進んでしまいましたよね。
「冤罪の深層」は、少し前にニュースの特集で観た事件だったので、どう扱うのか興味深く観ました。
仰っるようにNHK、このタイミングで頑張ったのではないでしょうか。
それにしても冤罪の再審請求などで知る警察や検察の体質には絶望しますし、公安も今だにこんな人権侵害をあんな理由で行っているとは…。
多くの職員のかたは高い倫理観で公正に勤めていると信じたいですし、今回の件も内部告発や正直な証言があったことだけは救いですね。
返信する
やはりみなあんさんも (wildrose)
2023-10-06 20:34:28
両番組をご覧になっていたのですね!
何となく、そんな気がしていました^^;

戦争の記録は決して好んで観たいと思うようなものではないけれど、
これらの口にしたくもない経験を、敢えて証言してくださった方々に
「敬意」をこめて向き合っていかねばと思うのですよね。

私もそうですが、みなあんさんも決して「硬派」なんかじゃなくて
どちらかと言えば洋楽などが好きな、戦後生まれの平和な時代しか知らない世代です。

だからこそ、一旦戦争に突入してしまったら、このような狂気が起きうると、心に留めたいし
なんとしてでも、そういう事態にしてはならないと
思うのですよね・・。

「冤罪・・」の方は、仰るように全ての関係者がこのような捏造に加担したいと思っていたわけではなかったことが「救い」でしたね。
この件に関しては国寄りにならず、ちゃんと放送したNHKも然り。
受信料、払う価値ありの番組でした☆
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

番組」カテゴリの最新記事