ロビンの観劇日記

芝居やオペラの感想を書いています。シェイクスピアが何より好きです💖

「広い世界のほとりに」

2024-10-11 22:47:44 | 芝居
10月2日あうるすぽっとで、サイモン・スティーヴンス作「広い世界のほとりに」を見た(劇団昴公演、演出:真鍋卓嗣)。



英国マンチェスター郊外のストックポートで暮らすホームズ家の物語。
家の修理工ピーターと妻アリス、彼らの二人の息子、そしてピーターの父と母。
ピーターの長男アレックスに恋人ができ、そのことに15歳の弟の胸はざわめく。
また、ピーター夫婦とその父母たちは小さな不満を感じながら生活している。
そんな時、ある事故をきっかけに家族それぞれの思いがすれ違っていく。
結びつきを失った三世代の家族の再生を描く(チラシより)。

その初日を見た。
18歳の長男アレックス(笹井達規)が、彼女サラ(賀原美空)を連れて実家に帰る。
両親に会う前に、15歳の弟クリストファー(福田匡伸)が会いたいと言うので、3人で会う。
クリストファーはサラに一目ぼれしてしまう。
アレックスがタバコを買いに行っている間二人きりになると、「キスして」と言い出す。驚くサラ。
みなよくタバコを吸う。
父母はサラに良い印象を持つ。
クリストファーは祖父母宅に行き、祖父チャーリー(金尾哲夫)のカードマジックを見て感心する。
彼はサラにプレゼントを買うため、祖父から5ポンドもらう。
何に使うのか聞かれて答えると、祖父は「アレックスがプレゼントするのが普通じゃないか?」
「そうなんだよね」自分でも分かっているらしい。
父親ピーター(江崎泰介)にも直接言う。「サラのことが好きだ」
父「お前、一度しか会ってないだろう」「うん、おかしいよね。狂ってるよね」
うーん、この子は・・どうしたものか。
サラとアレックスが実家に泊まると、彼は夜、sexの音がするかどうか壁にコップを当てて耳をそばだてる。

二人は町を出てロンドンに2~3年住む計画でいるが、もう月曜の切符を買ってあるというのに、アレックスはまだ親に言っていない。
それを知ってサラは怒り出す。
アレックスがようやく母親アリス(落合るみ)に伝えると、思った通り母は怒り出す。
特に、自分に話す前に、すでに切符を買ってあると聞いて。

祖父は常に酔っている。
ある日、妻エレン(姉崎公美)に食ってかかり、もみ合いになり、彼女が床に倒れたところにクリストファーが来る。
クリストファー「おばあちゃんを殴ったの?!」
二人は否定して取り繕うが、クリストファーはショックを受け、「おじいちゃんなんて腰抜けだ!クソだ!」と吐き捨てて去る。
彼は兄と父にもこのことを話したらしい。

アレックスは何とか母をなだめ、二人は両親に見送られて出発する。
アレックスは母に「今夜電話するよ」。

ピーターは家の内装や修理の仕事をしている。
スーザン(舞山裕子)という女性の家で改装工事を請け負う。
彼女は妊娠中で、場面が進むにつれて、少しずつお腹が出てくる。
ピーターは彼女に「次男が事故死した」と話す。
「人に話すのは初めて」と言うが、我々観客もびっくり。
あの子が、あっけなく死んでしまったのか・・・。

<休憩>

サラはアレックスとけんかして出て行く。
アレックスは実家に戻り、母アリスは喜ぶ。
彼女は「もうどこにもいかないで。ずっと私の目の届くところにいて」と言い出す。
(この人狂ってる!)
アレックス「それは無理だよ」

エレンが息子の家に来て嫁のアリスに会う。
夫が癌だと言われた、と言うのでアリスは同情する。
「あなたは大丈夫なの?」「ええ、私、また働くことにしたんです」「それがいいわ」
と、そこまではよかったが。
話は微妙にそれて行き、「ピーターにもっと優しくしてほしいの」「ピーターは私の息子よ」
「これまであなたのピーターに対する態度を見てきたけど・・」と、姑は言いたい放題。
ついにアリス「出て行って!」

入院中の祖父をピーターが見舞う。
彼の浮気について尋ねる。エレンを殴ったことも。

スーザンは仕事中のピーターにマンゴージュースを渡そうとするが、その前に、なぜか自分で一口飲んでから渡す。

サラはアレックスのところに戻る。
「謝ってほしくて来た」
二人はまた缶ビールを飲む。
アレックスの友人ポール(赤江隼平)は彼らの家に放火し、捕まって刑務所にいるという。
二人は仕事も見つからず(うまく行かず?)、アレックスの実家に戻って来る。

働き始めたアリスが、ある日、会社を出ると、若い男が待っていた。
彼はクリストファーを車ではねたジョン(須々田浩伎)だった。
彼はしきりに謝るが、アリスは聞く耳を持たない。
しまいに彼は、自分の電話番号を書いた紙を無理矢理彼女の手の中に押し込んで去る。

次の場面で二人はコーヒーか何かを飲んでいる。
ジョンは自分の専門の数学の美しさについて語り、アリスは楽しそうに聴いている。
二人は再会を約束する。
二度目には、ジョンの部屋で二人は赤ワインを飲んでいる。
アリスは手料理をご馳走になったらしい。
アリスは夫と出会った時のこと、まだ17歳の高校生で、成績でA を取って大学に行くつもりだったけど、
数回デートしたら妊娠。
いったんは中絶することにしたが、ピーターがプロポーズし、結婚して大学は諦めた。
アリスは次男クリストファーが「そんなに好きじゃなかった」。
「あんなことになって、自分のせいかと思った・・・」
ジョンはアリスにタバコを勧め、アリスは「夫に知れたら・・」と言いつつ吸う。
ジョンが彼女に迫ると、彼女は歯ブラシを借りて歯磨きする。
その姿を見た彼は早合点し、勇んでネクタイをはずしてシャツを緩めるが、アリスは彼を振り切って帰宅。

ピーターは仕事が終わり、スーザンから小切手をもらう。
彼女は丁寧に感謝の言葉を述べ、彼の腕を触る。
(この人も変だ。夫との仲は大丈夫なのだろうか)

祖父はアレックスに、子供の頃、父だか祖父だかによく殴られた話をする。
暴力は連鎖する、と言いたいのだろう。
アレックスもそれを聞いて、少し祖父のことがわかってくる。

ピーターは妻アリスが浮気していると疑っている。
酒を浴びるほど飲む。
帰宅したアリスに「わかってるんだぞ・・」
アリスは相手が事故の加害者であることは告げず、会社の人で・・と言う。
でも寸前で「踏みとどまったの」
そして「あなたに私の頭を乗っけてもいい?」
ピーターは床に横たわり、アリスは彼に寄り添う。

食事会。アリスがチキンを焼き、祖父母、父母、アレックスとサラの3世代が和やかに食卓を囲むところで幕。

~~~~~~~ ~~~~~~~ ~~~~~~~

セリフの訳語がちょっと難しい。
サッカーのチームや人気選手の名前が頻出。
2時間50分という長尺。短いシーンがくるくると続くが、全体にダラダラした印象。
登場人物はほとんどが奇妙でアブノーマルで感情移入できない。
長男を偏愛・溺愛して縛り付けるアリス。
優柔不断で、見ていてイライラさせられるアレックス。
職人にジュースを差し出すが、先にそのコップに口をつけて飲む女。
やたらとビールを飲みへべれけになる酔っ払いたち。
何かというとタバコ、タバコというヘビースモーカーたち(15歳の子も!)。
ヤクも吸うし、汚い言葉を平気で口にする人々。
ワイフビーター(妻を殴る男)。
息子の嫁に余計な口出しをして嫌われる女。
まともなのはジョンくらいか。

役者では祖父チャーリー役の金尾哲夫が好演。
アリス役の落合るみは声がいい。

この作品は、2006年にローレンス・オリヴィエ賞最優秀新作プレイ賞を受賞したという。
こういうことが時々あるから、最近では賞というものが信じられなくなった。

当日パンフを見て知ったが、作者は「ハーパー・リーガン」を書いた人だった。
そうと知ってたら来なかったかも。
だってあれは、あまり好みではなかったから。










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