ロビンの観劇日記

芝居やオペラの感想を書いています。シェイクスピアが何より好きです💖

「デカローグ Ⅲ あるクリスマス・イブに関する物語」

2024-04-25 22:14:08 | 芝居
前回の続き、新国立劇場小劇場で見た、クシシュトフ・キエシロフスキ作「デカローグ」十篇の第3篇について。



 クリスマスイブ。妻子とともにイブを過ごすべく、タクシー運転手のヤヌシュが帰宅する。
 子供たちのためにサンタクロース役を演じたりと仲睦まじい家族の時間を過ごすが、その夜遅くヤヌシュの自宅に
 元恋人の女性エヴァが現れ、ヤヌシュに失踪した夫を一緒に探してほしいと訴える・・・。

サンタの恰好をした男が酔っぱらって登場。
「おれのうちはどこだ?」
もう一人、同じ恰好の男がすれ違う。
彼は家のブザーを鳴らし、子供たちが出ると「ホー、ホー、サンタクロースだよ」
彼(千葉哲也)はこの家の主、ヤヌシュだった。
居間にクリスマスツリー。
妻(浅野令子)が赤ん坊を抱いている。
子供二人と赤ん坊と妻に、それぞれプレゼントを渡し、子供たちに「パパのはないの?」と聞かれると、
「パパはいらない。パパのプレゼントは君たちだから」と二人を抱き上げる。
プレゼントをツリーの根元に置いて、子供たちは寝室へ。
夫は妻に、「二人で祝い直そう」と新しいワインのボトルを開けて、グラスに注ぐ。
飲もうとするとブザー。
ヤヌシュがインターホンに出ると、女(小島聖)「くるま」「車のとこにいるわ」
ヤヌシュは妻に、「何だかわけのわからないことを言ってる。ちょっと見て来る。さっきも変な奴に会ったよ」
とジャンパーを着て外へ。
女「〇〇がいなくなったの。探さなくちゃ」
男「・・俺には関係ない」
女「そう・・、お邪魔さま」と言って立ち去りかけるが、男は何を思ったか、「エヴァ」と呼び止める。
「一緒に探すよ」
「奥さんに何て言うの?」
「車が盗まれたって言うよ」
「そんなの信じるかしら」
男、家に戻って妻に「車が盗まれた、警察に盗難届けを出してくれ。探して来る」
「警察に任せておけば?」
「俺の商売道具だ、あれで食ってるんだ」
彼はタクシー運転手だった。
こうして男は元恋人と共に、失踪した彼女の夫を捜して夜の街を彷徨する。
クリスマスイブだというのに・・。
まず救急病院へ。
ある男が交通事故で両足を切断し、顔も血だらけで死んでいた。
だがそれは夫ではなかった。
エヴァはヤヌシュのことを憎んでいると言う。
死ねばいいと思う、とも・・。
それから酔っ払いを収容する所に行き、ひと騒動あり、その後エヴァの部屋へ。
彼女は外に彼を待たせ、部屋に入ると、男と住んでいたかのように、大急ぎで偽装する。
教会の鐘が鳴ると、エヴァは小鉢を出してきて二人で何かパンのようなものをそこに浸して口にする。
ポーランドのイブの夜の風習らしい。
3年前の話。二人が別れることになったきっかけについて。
再び車に乗るが、ヤヌシュの妻が盗難届けを出していたのでパトカーが追って来る。
ヤヌシュは猛スピードで逃げるが捕まってしまう。
車検を見せ、自分の車を自力で見つけて帰るところだ、と説明すると、警官たちは「イブだから」と許してくれる。
外が明るくなってきた。
二人は夜通しさまよっていたのだ。
エヴァは「今夜、いっぱい嘘をついた」と言って、一枚の写真を見せる。
これが〇〇。隣にいるのが彼の奥さん。そして二人の子供。3歳と、一人はまだ10ヶ月。
私はずっと一人なの。孤独だわ。こんな日にひとりでいるなんて耐えられない。
彼女は賭けをしたという。
朝の7時までヤヌシュと一緒にいられるかどうか。
もしいられなかったら、睡眠薬を飲んで死ぬつもりだったようだ。
その後またスピードを出して事故を起こし、車が壊れ、ヤヌシュの額から血が出る。
「あなたのイブも車もダメにしちゃったわね」
「いや、けっこう楽しかったよ」
やっとエヴァは帰っていった。
ヤヌシュが家に帰ると、妻はテーブルに突っ伏して寝ていた。
彼は妻の手をとり「車、見つかったよ」
「知ってるわ。警察から連絡があったの」
「・・」
「・・・エヴァ?」
「・・・エヴァ」
「そう・・・また夜に出かけたりするの?」
「いや、もう二度と出かけないよ」
見つめ合う二人。幕

第3戒は、カトリックでは「主の日を心にとどめ、これを聖とせよ」らしい。
プロテスタントと違うので、戸惑った。
孤独をひとり嚙みしめる女が、イブの夜に家族と過ごしている元カレを突然訪ねて来る。
男は良き家庭人のようだが、そんな女につき合って一晩中、女の「夫」をあちこち探し回る。
そんなの嘘だとわかっていたのだろうか。
二人の間に、かつてどんなことがあったのだろうか。
なぜ男は、この人騒がせで、はた迷惑な元カノを助けて、どこまでもつき合ってやるのだろう。
これは、ただのお人好しの男の話ではないだろう。
欠けの多い、弱さを抱えた人間たちの営みと、それぞれの思いが交錯する。
一方、男の妻には何もかもお見通しだった。
彼女は夫のことを深く理解しているようだ。
彼女の豊かな包容力、広い心と信頼が、強く印象に残る。








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