ロビンの観劇日記

芝居やオペラの感想を書いています。シェイクスピアが何より好きです💖

「シンベリン」

2024-09-05 22:45:26 | 芝居
8月30日すみだパークシアター倉で、シェイクスピア作「シンベリン」を見た(イエローヘルメッツ公演、脚本・演出:山崎清介)。



王シンベリンは、王妃の連れ子と結婚させようとしていた王女イモージェンが身分の低い紳士ポステュマスと結婚したため、激怒。
ローマに追放されたポステュマスは一人の男にだまされ、妻の不貞を信じ込み絶望・・・。
王の後妻である王妃は、息子のために王位継承権を狙って毒薬作りにいそしみ、ウエールズではかつて国王の元から二人の王子を
盗み出した臣下・ベレーリアスが彼らと共に暮らしていた・・。

訳は小田島雄志訳を元にしている。

この芝居は2012年4月に彩の国さいたま芸術劇場で見たことがある(蜷川幸雄演出、大竹しのぶ、阿部寛、鳳蘭、勝村政信ら出演)。
今回は劇場がずっと小さくて、役者の数も少ない。
この劇団を見るのは久し振りなので、知らない人が多く、誰が何の役をやるのかさっぱり見当もつかない。
というわけで、あまり期待せずに出かけた。

山崎さんは、冒頭にいきなり5幕4場を持ってきた。
ブリテン軍とローマ軍の戦いの折、ポステュマス(大西遵)は死を求め、敢えて負けていたローマ軍の側の人間だと偽り、捕らえられている。
後半、また同じシーンが繰り返される。つまり枠構造のような形。これには当惑してしまった。
このマイナーな芝居を初めて見るお客さんたちのことを考えているのだろうか。
わざわざ原作をいじって変える必要はまったくないし、かえって分かりにくくて不親切だ。

イモ―ジェン(すずき咲人心)の寝室が何もないのは仕方ないが、最低限、ベッドは欲しい。
今回、イモ―ジェンは机の上に突っ伏して寝ちゃったが、やっぱりベッドに寝ていて欲しい。
だってそんな格好だと、いつ目が覚めるかわからない上に、腕輪をそっと外したり、胸元のほくろを見たりするのは
至難の業でしょう。

邪悪な王妃役の星初音がうまい。鳳蘭よりよかったです!
ポスチュマス役の大西遵も好演&熱演。阿部寛よりもちろん滑舌がいいし(笑)。
ヤーキモー役兼ベレーリアス役の谷畑聡もうまい。窪塚洋介よりよかったです。
谷畑聡はヤーキモーとベレーリアスを兼ねるので、後半やたらと忙しい。
舞台から何度もそっと引っ込んでは衣装を変えて出て来る。
息子たちに「父上、今まで一体どこに?!」と聞かれて「物陰から一部始終を聞いておりました」と
答えるのがおかしい。
この戯曲はセリフのある役だけでも21人必要なのに、それをたった8人でやるため一人何役も兼ねるが、それがかえって面白い。
逆境を逆手にとって笑いをとる、なるほどこういう手があったか。

ラストで、ローマ軍の将軍リューシャス(伊沢磨紀)は「ジュピターの神殿で平和条約を批准し、宴会をもって調印することにしよう・・・」と言った後、
客席の方を向いて「だが、世界中に戦争は絶えない・・」と語る。
これは原作にはない。
今回の上演にあたってここに加筆したのは適切で、好感が持てた。

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