ロビンの観劇日記

芝居やオペラの感想を書いています。シェイクスピアが何より好きです💖

オペラ「ヴォツェック」

2009-12-04 18:26:16 | オペラ
1月18日新国立劇場オペラパレスで、アルバン・ベルク作曲のオペラ「ヴォツェック」を観た(H.ヘンヒェン指揮、A.クリーゲンブルク演出)。

今まで避けてきたベルクのオペラ。しかし20世紀オペラの金字塔としてもはや古典とさえ言われる作品を、いつまでも避けている訳にはいかない。あらすじは、ただもう悲惨、陰惨なだけだが。

幕が開くと、白っぽい汚れた壁に囲まれた四角い部屋。
大尉は肉じゅばんで醜くデフォルメされた姿。

兵士ヴォツェックは貧しく、上司にも虐げられ仲間にも無視され、妻マリーの浮気をきっかけに精神を病んでゆく。

第1場の後、その部屋が少しずつ後方に退いて行ったと思ったら、何とステージ全面に水が張ってある!そこを人々はバシャバシャ音を立てて歩く。
医者も何やら気味の悪い格好。
台本では、医者はヴォツェックが往来で「咳」をしたと言って怒る。何と理不尽な、と思ったが、ここでは咳が「立ち小便」に代わっていた。咳と立ち小便では全然違う。やはりあまりに横暴なので分かり易く変えたのだろうか。

男の子が台本より大きいのに合わせたらしく、マリーは夫に「知り合って6年になる」と言う(台本では3年)。

子供は父が壁際の椅子に座っていると、そばの壁に黒いペンキでpapaと書く。なぜか後ろから、つまり右から左へと書いてゆく。その後もGeld(金)、そしてHure(売女)と後ろから書く。

マリーは鼓手長に迫られ、身を任せてしまう。夫に疑われ、責められると、ふてぶてしく開き直って見せるが、その後第3幕第1場では、夜自分の部屋に一人座リ、聖書の中の姦淫した女の箇所を読んで祈り、神に救いを願う。胸を打つ場面だ。

錯乱したヴォツェックはついに妻を殺し、自らも沼で溺死する。

曲は無調の所と調のある所が混ざっていて叙情的なところもあり、変化に富んでいる。そして迫力がある。

今回の演出は非常に大胆で変わっていた。と言っても私は初めてなので他と比較はできないが、何しろ主人公の息子が本来は2歳くらいで少ししか登場しないはずが、小学生くらいになっていて、その子が常に舞台上にいてちょろちょろ動き回る。この子の目から見た世界という視点が画期的だ。しかしその世界というのはどこまでも冷酷で悲惨で醜悪な世界だ。
この子を演じたのはてっきりドイツ人だと思ったら、何と日本人だという。その舞台度胸は並外れている。

何より、台本をここまで変えてもいいのか、と驚かされた。初めて観る者にとっては玄人向きで、少し刺激的過ぎた。次回はもっとオーソドックスなのを観たい。


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