ロビンの観劇日記

芝居やオペラの感想を書いています。シェイクスピアが何より好きです💖

井上ひさし作「日の浦姫物語」

2012-12-21 23:14:56 | 芝居
11月13日シアターコクーンで、井上ひさし作「日の浦姫物語」をみた(演出:蜷川幸雄)。

薄汚い説教聖(木場勝己)と赤子をおぶった三味線女(立石涼子)が語るは「日の浦姫物語」なる説教。
平安時代、母の死と引き換えに生まれた美しい双子、稲若(藤原竜也)と日の浦姫(大竹しのぶ)は、世にも仲睦まじく育った。
15歳となった夏、父が亡くなったその日、2人はあえなく禁忌を犯した。それが不幸の始まり。たった一度の交わりで子を
身籠る日の浦。後見人の叔父(たかお鷹)は恐ろしい事実を知り、日の浦を引き取り、稲若を都に遣る。それは恋しい2人の
今生の別れとなった。
美しい男児が生まれたが、叔父は手元に置くのをよしとせず、赤子を小舟に乗せて海に流した。日の浦の手紙の入った皮袋
と鏡を持たせ、運命を神と仏に預けて・・。

大竹しのぶが藤原竜也の妹役!だがこの人に不可能はない。15歳の姫を何の問題もなく愛らしく演じ切る。
ただ、子を生んだ後あたりから、声がやはりよくない。残念ながら最近何度か指摘しているが、割れて汚い。

2幕冒頭は説教聖の妻によるフォーク調の歌で経過報告。

オイディプス王の話は、息子がそれと知らずに母と結婚するだけだが、これはその何倍も複雑でおぞましい。オイディプスの
両親は普通の男女だが、ここでは両親が兄妹なのだ。オイディプスの母は再婚後妊娠しないが、ここでは同じ女が2度も妊娠
する。最初は兄の子を、次に息子の子を。
つまりオイディプスでは彼と母との「行為」が問題であるのに対して、ここでは彼の「存在」自体が罪の結果なのだ。しかも
孫の代には更に罪と血とが濃くなる・・。

説教節を語る夫婦の語りが枠構造となっているが、これは余計。評者が演出するなら全部削除するかな。

音楽・・例によってシンクレティズム(グレゴリオ聖歌に雅楽とか)。

「女の一生」の中の杉村春子のセリフが語られ、字幕が出ると笑いが。ここは確信犯的ウケ狙いか。

悲劇のクライマックスで泣きそうになっている時に客席のあちこちから笑いが起こることがあった(2人が自分の目をつぶす
シーンなど)。耐え難い気分だった。原因は何なのか。客がいけないのか、演出の手際が悪いのか、それとも作品そのものに
問題があるのだろうか。
評者としては当夜の客がたまたまよくなかったのだと思いたい。
だが、一体作者は泣かせたいのか笑わせたいのか分からないという箇所もあった。危ういバランスを保っている作品なのか。

兄役と息子役を立派に演じた藤原竜也が素晴らしい。叔父役のたかお鷹と言い、今回のキャストは考え得る最高の組み合わせ
だと思う。

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