7月27日パルコ劇場で、ヴァージニア・ウルフ作「オーランド」を見た(翻案:岩切正一郎、演出:栗山民也)。
16世紀の英国貴族の男性オーランドは、ある日突然、女性に変わる。
そればかりか、さらにその後何百年も生き続ける、という途方もない物語。
チラシにある通り、彼は「時代も国境もジェンダーも飛び越えて、数奇な運命に立ち向かい、真実の私を探究する」。
宮沢りえ主演。ヴァイオリンの生演奏つき。
ネタバレあります。注意!
男として黒い衣装で登場するオーランド(宮沢りえ)。
ある日、父の屋敷をエリザベス女王(河内大和)が訪問する。
オーランドは指を洗う水の入った鉢を捧げ持つ重要な役目。
女王は彼の美しさに目をとめ、彼のほっそりした足や「すみれ色の目」が美しい、と言って、彼を財務大臣に任命する。
彼はその後も女王に追い回されるが、何とか愛撫を避けるうちに女王は死ぬ。
オーランドは樫の木が好きで、詩を書き、詩人ニック(山崎一)に見せるが、あまり評価されない。
ルーマニアの皇女・ハリエット(ウエンツ瑛士)が突然、彼の部屋を訪問する。
宿にオーランドの肖像画が掛けてあり、それが亡き妹にそっくりなので、たまらずやって来たと言う。
彼女は彼に、愛しています、と迫るが、オーランドはまたも必死になって避ける。
その後、オーランドは英国を離れ、トルコのコンスタンチノープルに行く。
彼の家は代々貴族だが、ひいおばあさんは羊飼いだったという。
彼は、その血が自分の中にも流れているのを感じる。
ここには樫の木はないが、草原がある。
4人の男たち(羊飼い?)がオーランドの噂をする。
あの男は俺たちと違うものを見ている。
乳しぼりや羊の世話に身が入らず、座り込んで何か書いている。
文字というものを。
若い奴が「あいつを殺してやる」と言っている・・。
その後、彼は英国に戻る。
その途中、眠っていて目覚めると、女になっていた。
「わけがわからない」
「またすぐ男に戻るのかなあ」
彼、いや彼女は自分の屋敷に戻る。
記者(山﨑一)がやって来て召使いたちに取材する。
召使い「旦那様は旦那様として出かけられ、奥方様としてお帰りになられました」
記者「あっちで性転換したのでは?もともと男であることに違和感があって・・?」
召使い「いえ、そんな風には見えませんでした。男性だった時はとても勇敢な方でした」
記者「でもどうして名前がオーランドのままなんでしょう?ロザリンドとか(に変えればいいのに)?シェイクスピアの『お気に召すまま』みたいな?」
召使い「女性には相続権がないんです。女になった途端に生活するのも困難になってしまいますから。名前くらいはそのままにしておかないと」
記者「ハリエット皇女が睡眠薬を飲ませて無理やり性転換させた、という噂もありますが?」
召使い「いや、それもないでしょう」
男装のハリエット(ウエンツ瑛士)来訪。
オーランドは驚いて「あなた誰?!」
ハリエット「実はルーマニア大公ハリーです。女装していました。男なんです」
彼は、オーランドが同性愛者を嫌がるかと恐れて、敢えて女のふりをして近づいた、と言う。
だが、オーランドが女性になったので、本来の姿に戻ってやって来たのだった。
つまり、彼にとってオーランドが男か女かということは、どうでもいいことらしい。
こうしてハリーはまたしてもオーランドに迫るが、オーランドは「ゲームしましょう」と彼を誘う。
ハエが3つの角砂糖のどれにとまるか賭けるという奇妙なゲーム。
召使いがポケットからハエを出して放つ。
ヴァイオリンが羽音を奏でる。
オーランドと召使いは、ズルをしてハリーを負かす。
2度目にズルするところを目撃して、ハリーは泣き出す。
そんな彼の背中にオーランドがヒキガエルを入れると、さすがにハリーは逃げて行く。
オーランドは独白する。「私は処女だ。でも童貞じゃない。何人もの女性と・・」
「女と男って、どう違うんだろう。どっちが・・・」
オーランドは女郎屋へ行く。
「実は女なの」・・
<休憩>
死んだ男(ウエンツ瑛士)がゆっくり歩いて来る。
腰に白布を巻いただけでほぼ全裸・・。
時代は先へ先へと進む。
イギリス人はマフィンを食べるようになり、食後にはポートワインでなくコーヒーを飲むようになった。
オーランドは一人の船乗り(谷田歩)と出会い、恋に落ちるが、彼は太平洋に向けて出航する。
オーランドは詩人ニック(山﨑一)と再会。
いつも持ち歩いている小さなノートを見られ、これは売れるかも、と言われる。
「美魔女だし」
「男から女になったという・・話題性もあるし」
こうして出版された彼の詩の本が文学賞を取り、彼は「ちょっとした有名人」になる。
ラスト、瓦礫のようなもの(紙)が上から大量に落ちて来て舞台を埋める。
男4人は倒れる。
オーランドも倒れるが、起き上がり、瓦礫の中から何か拾い上げる。
ぬいぐるみかと思ったら、何と人間の赤ん坊(の人形)!
素っ裸。
オーランドはそれを抱きしめて、奥に歩み去る。
~~~~~~~ ~~~~~~~
途中、主役の長いモノローグがはさまれる。
原作を読んでおけばよかったと後悔した。
特に今回のような翻案ものは、どこをどう変えたのか知りたいので。
ラストもだいぶ変えたらしい。
原作では船乗りの夫が無事に帰還するシーンで終わるらしいが、それでは今風でないと思ったのだろう。
「人は女に生まれない。女になるのだ」というオーランドの独白が響き渡る。
これってボーヴォワールの「第二の性」でしょ?!
ボーヴォワールがウルフの小説から取った言葉だったのか??
それとも翻案の岩切正一郎氏が遊び心で挿入したのか??
たぶん後者だね、きっと。
ヴァージニア・ウルフの原作の、時代を超えた新しさに驚いた。
宮沢りえが圧巻。
男装の時のスリムで凛々しい美しさ!(女装になった時ももちろんだが)
前半はずっと、少し低めの声で、後半、女性になってからは(心は男のままなので)意識的に女らしい高い声にする。
いずれも美声なので、聴いていて非常に心地良い。
セリフ回しも演技も素晴らしい。
この人と同時代に生きていることが嬉しい。
衣裳(前田文子)もいい。
共演の山崎一らのキャスティングもよかった。
16世紀の英国貴族の男性オーランドは、ある日突然、女性に変わる。
そればかりか、さらにその後何百年も生き続ける、という途方もない物語。
チラシにある通り、彼は「時代も国境もジェンダーも飛び越えて、数奇な運命に立ち向かい、真実の私を探究する」。
宮沢りえ主演。ヴァイオリンの生演奏つき。
ネタバレあります。注意!
男として黒い衣装で登場するオーランド(宮沢りえ)。
ある日、父の屋敷をエリザベス女王(河内大和)が訪問する。
オーランドは指を洗う水の入った鉢を捧げ持つ重要な役目。
女王は彼の美しさに目をとめ、彼のほっそりした足や「すみれ色の目」が美しい、と言って、彼を財務大臣に任命する。
彼はその後も女王に追い回されるが、何とか愛撫を避けるうちに女王は死ぬ。
オーランドは樫の木が好きで、詩を書き、詩人ニック(山崎一)に見せるが、あまり評価されない。
ルーマニアの皇女・ハリエット(ウエンツ瑛士)が突然、彼の部屋を訪問する。
宿にオーランドの肖像画が掛けてあり、それが亡き妹にそっくりなので、たまらずやって来たと言う。
彼女は彼に、愛しています、と迫るが、オーランドはまたも必死になって避ける。
その後、オーランドは英国を離れ、トルコのコンスタンチノープルに行く。
彼の家は代々貴族だが、ひいおばあさんは羊飼いだったという。
彼は、その血が自分の中にも流れているのを感じる。
ここには樫の木はないが、草原がある。
4人の男たち(羊飼い?)がオーランドの噂をする。
あの男は俺たちと違うものを見ている。
乳しぼりや羊の世話に身が入らず、座り込んで何か書いている。
文字というものを。
若い奴が「あいつを殺してやる」と言っている・・。
その後、彼は英国に戻る。
その途中、眠っていて目覚めると、女になっていた。
「わけがわからない」
「またすぐ男に戻るのかなあ」
彼、いや彼女は自分の屋敷に戻る。
記者(山﨑一)がやって来て召使いたちに取材する。
召使い「旦那様は旦那様として出かけられ、奥方様としてお帰りになられました」
記者「あっちで性転換したのでは?もともと男であることに違和感があって・・?」
召使い「いえ、そんな風には見えませんでした。男性だった時はとても勇敢な方でした」
記者「でもどうして名前がオーランドのままなんでしょう?ロザリンドとか(に変えればいいのに)?シェイクスピアの『お気に召すまま』みたいな?」
召使い「女性には相続権がないんです。女になった途端に生活するのも困難になってしまいますから。名前くらいはそのままにしておかないと」
記者「ハリエット皇女が睡眠薬を飲ませて無理やり性転換させた、という噂もありますが?」
召使い「いや、それもないでしょう」
男装のハリエット(ウエンツ瑛士)来訪。
オーランドは驚いて「あなた誰?!」
ハリエット「実はルーマニア大公ハリーです。女装していました。男なんです」
彼は、オーランドが同性愛者を嫌がるかと恐れて、敢えて女のふりをして近づいた、と言う。
だが、オーランドが女性になったので、本来の姿に戻ってやって来たのだった。
つまり、彼にとってオーランドが男か女かということは、どうでもいいことらしい。
こうしてハリーはまたしてもオーランドに迫るが、オーランドは「ゲームしましょう」と彼を誘う。
ハエが3つの角砂糖のどれにとまるか賭けるという奇妙なゲーム。
召使いがポケットからハエを出して放つ。
ヴァイオリンが羽音を奏でる。
オーランドと召使いは、ズルをしてハリーを負かす。
2度目にズルするところを目撃して、ハリーは泣き出す。
そんな彼の背中にオーランドがヒキガエルを入れると、さすがにハリーは逃げて行く。
オーランドは独白する。「私は処女だ。でも童貞じゃない。何人もの女性と・・」
「女と男って、どう違うんだろう。どっちが・・・」
オーランドは女郎屋へ行く。
「実は女なの」・・
<休憩>
死んだ男(ウエンツ瑛士)がゆっくり歩いて来る。
腰に白布を巻いただけでほぼ全裸・・。
時代は先へ先へと進む。
イギリス人はマフィンを食べるようになり、食後にはポートワインでなくコーヒーを飲むようになった。
オーランドは一人の船乗り(谷田歩)と出会い、恋に落ちるが、彼は太平洋に向けて出航する。
オーランドは詩人ニック(山﨑一)と再会。
いつも持ち歩いている小さなノートを見られ、これは売れるかも、と言われる。
「美魔女だし」
「男から女になったという・・話題性もあるし」
こうして出版された彼の詩の本が文学賞を取り、彼は「ちょっとした有名人」になる。
ラスト、瓦礫のようなもの(紙)が上から大量に落ちて来て舞台を埋める。
男4人は倒れる。
オーランドも倒れるが、起き上がり、瓦礫の中から何か拾い上げる。
ぬいぐるみかと思ったら、何と人間の赤ん坊(の人形)!
素っ裸。
オーランドはそれを抱きしめて、奥に歩み去る。
~~~~~~~ ~~~~~~~
途中、主役の長いモノローグがはさまれる。
原作を読んでおけばよかったと後悔した。
特に今回のような翻案ものは、どこをどう変えたのか知りたいので。
ラストもだいぶ変えたらしい。
原作では船乗りの夫が無事に帰還するシーンで終わるらしいが、それでは今風でないと思ったのだろう。
「人は女に生まれない。女になるのだ」というオーランドの独白が響き渡る。
これってボーヴォワールの「第二の性」でしょ?!
ボーヴォワールがウルフの小説から取った言葉だったのか??
それとも翻案の岩切正一郎氏が遊び心で挿入したのか??
たぶん後者だね、きっと。
ヴァージニア・ウルフの原作の、時代を超えた新しさに驚いた。
宮沢りえが圧巻。
男装の時のスリムで凛々しい美しさ!(女装になった時ももちろんだが)
前半はずっと、少し低めの声で、後半、女性になってからは(心は男のままなので)意識的に女らしい高い声にする。
いずれも美声なので、聴いていて非常に心地良い。
セリフ回しも演技も素晴らしい。
この人と同時代に生きていることが嬉しい。
衣裳(前田文子)もいい。
共演の山崎一らのキャスティングもよかった。
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