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ここには文学のすべてが・・・

2017年09月09日 | 読書

「ここには文学のすべてがある」川端康成がそう讃えたという『竹取物語』。それを読み解く古典文学講座「竹取物語をよむ―かぐや姫伝説をめぐって」が始まった。これまで同様に豊富な資料と多少の道草がまた勉強にもなる川上講師の講義で、あっという間の2時間。今頃の幼稚園で読み聞かせされているのか分からないが親しまれてきた昔話をどう深読みするのだろうか。果たして初回は、古代中世の“竹の文化”から始まった。『竹の民族誌-日本文化の深層を探る』(沖浦和光氏著) による竹と人々の関わり、自然景観・実用性・神秘性は現代人にも頷けるものがある。九州南部の先住民の手で大和地方に竹が造成された経緯、<竹取の翁>が最下層の移動する職能民であったことなど興味深い解説もあった。そうした当時の周辺環境とともに<『竹取物語』の文学史的位置>(物語の全体像)としての五つの要点の説明。特に<アジア的空間の中で展開される>物語は今後、“姫の難題”の中で、より詳しく明かされるようだ。さらに初期の作者が不明のまま、誰が現行の物語に完成させてきたのか。多くの人により修正されてきたことを川上講師は<「無名と共有」による世界>と表現した。理解していく脳の許容量が限界にきたところで、最後にCDから流れる原文朗読の心地よさ。残り6回の講座は聞き逃せない。

 

(新潮日本古典集成『竹取物語』)