終戦直前の8月9日、日本との中立条約を破棄して満州に進攻するソ連。圧倒的な戦力、それを一時的にでも食い止め、同胞を少しでも助けたい。そのためにはアムール川に架かるハバロフスク橋と川底のトンネルを爆破、補給路を断つしかないとする戦争秘話めいた小説である。鉄橋の橋脚を航空魚雷で爆破するという海軍の攻撃機3機とトンネルを爆破するため気球で潜入する陸軍の特命部隊の壮絶な戦いは読み手を惹きつける。フィクションと分かっていても、日本に残してきた家族との別れ・撃墜される友軍機・トンネル崩壊も脱出不可能になるなど、戦争は悲惨すぎる。だが、開拓村からの避難民に迫りくる稜線上のソ連の戦車群は<彫像と化したかのごとく>になる。その日の降り注ぐ八月の太陽の記憶…。読み終えて、20年ほど前に訪れたハバロフスクを少しだけ思い出した。
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