辺野古への土砂投入が強行されてから1ヵ月余り。辺野古ありきで聞く耳を持たないアベ政府。それに対して再度の意思集約を図ろうとする県民投票も5市が拒否するなど、褐色に染められる海は広がるばかりだ。「このまま工事を推進」「建設反対を続行」の2者択一しかない状況のなかで、立ち止まって読む価値のある本である。本の大半を割く<根拠なき「辺野古移設」>、元防衛庁官房長・内閣官房副長官補(安全保障・危機管理担当)や地元記者・ジャーナリスト、研究者など5氏は専門分野に裏打ちされた論陣を張る。その内容<日本政府は沖縄に何をしてきたか、何をしていないかー歴史から問う>は、自らの知識の薄弱さだけでなく、本土マスコミの伝え方を含め本土住民の一人として罪の意識さえ感じる。続く<沖縄・米軍海兵隊の実態を検証する><変わる自衛隊・米軍の役割>は、中国・北朝鮮に対する現実的抑止力や米軍再編による軍事態勢の変容、非軍事活動への拡大など、初めて知ることが多い。さらに米国の声として政権高官経験者、元駐日大使、研究者の辺野古の賛否両論などを紹介、その上で具体的な政策提言を示す。沖縄に新基地を必要としない苦心の提案<海兵隊新ローテーション方式>は、現状を考え画期的な一案と思える。だが「辺野古が最善の選択」とする今の政府は門前払いするのだろう。しかし日米両政府の判断基準①運用上の有効性②政治的・財政的な実現可能性③戦略的な妥当性については破綻している、との指摘にはきちんと応えるべきだ。この提言は地元『沖縄タイムス』『琉球新報』と『東京新聞』の社説、特集記事で評価されたというが、他紙はどうなのか。特に<辺野古を埋める「行動なき良心」>と読者に問題提起したA紙、情緒的な連載記事だけでなく深層を掘り起こしてほしい。
(最近勉強している俳句で『寒の朝 辺野古の海を 染める国』)
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます